(※写真はイメージです/PIXTA)

ウクライナ侵攻やイスラエル・ハマスの軍事衝突など世界情勢が悪化するなか、株式会社武者リサーチ代表の武者陵司氏は「経済においても株式においても、日本はいま“もっとも明るい国”であるといえる」「2024年に向けても日本株優位は続く」といいます。その根拠や背景について、詳しくみていきましょう。

政治も、経済も“いま、もっとも明るい”日本

日本は政治においても、経済と株式においても主要国のなかでもっとも明るい国といえるのではないか。岸田政権の支持率が大きく低下しているとはいえ、弱体な野党に助けられて政権基盤は盤石である。

 

経済においても、IMFが10月の世界経済見通し(2023年)で日本を2.0%と4月時点の1.3%から上方修正した。中国、ユーロ圏の下方修正のなかで日本経済の好調さは際立っている。

 

それは年初来10ヵ月間の株式のパフォーマンスにも表れている。日経平均株価の+23%は、米国S&P500+14%、ドイツDAX+8%、英FT100.0%、中国上海総合-2%、韓国総合+6%、台湾加権+17%と主要国株価のなかで突出している。

 

出所:ブルームバーグ、武者リサーチ
[図表1]主要国株価指数の推移(2023年初以降と2009年3月以降) 出所:ブルームバーグ、武者リサーチ

一方、混迷を極める世界情勢

一方、目を世界に転ずれば株式投資環境は良好とは言い難い。まず地政学情勢が混迷の度を極めている。

 

米中対立と中国による台湾侵略可能性の高まり、ロシアによるウクライナ侵略、ハマスによるイスラエル攻撃とイスラエルの反撃等、戦後の民主主義、国際法に基づく国際秩序は大きく揺らいでいる。

 

米国のプレゼンスの低下が大きい。オバマ政権が米国は世界の警察官の任には堪えられないといい、トランプ政権はMAGAを唱えて同盟軽視を強めた。中国が異例のスピードで軍事増強を進めるなかで、米国防衛予算は、米ソ冷戦末期のレーガン時代の対GDP比7.7%から2022年には3.6%と半減した。

 

背景にある「先進国の社会分断」と歴史問題

各国国内の政治情勢も、分断とポピュリズムの高まりが顕著である。欧州では反移民を掲げる右派ポピュリスト政党が台頭している。米国でも中間層の没落と左右の対立、共和・民主両党内での求心力の低下と議会の機能不全化、など2024年大統領選挙を前に、政治の不透明性が高まっている。

 

この欧米先進国の国内分断の背景には、各国が奴隷制や植民地支配により世界を制覇してきたことの負の遺産という、いわば歴史問題としての側面がある。

 

日本では中国、韓国など周辺国とのあいだで過去の戦争や植民地支配にどう向き合うかを問われる歴史問題が摩擦の種となってきた。それはより大きなスケールで欧米諸国にのしかかり、政治安定や経済成長の制約要因になりつつある。その深刻さは日本以上のものかもしれない。

 

経済面では世界の工場である中国でバブル崩壊が不可避となり、急減速の心配が出てきた。金融緩和が効かない典型的流動性の罠に陥りつつある。ユ―ロ圏経済もロシア依存度を強めすぎたエネルギー供給の脆弱性や対中貿易赤字の急拡大など困難が強まっている。

 

当面想定外の強さを謳歌する米国経済も、FRBによる大幅な利上げの影響が顕在化し減速は避けられないであろう。

 

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※本記事は、武者リサーチが2023年11月6日に公開したレポートを転載したものです。
※本書で言及されている意見、推定、見通しは、本書の日付時点における武者リサーチの判断に基づいたものです。本書中の情報は、武者リサーチにおいて信頼できると考える情報源に基づいて作成していますが、武者リサーチは本書中の情報・意見等の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。かかる情報・意見等に依拠したことにより生じる一切の損害について、武者リサーチは一切責任を負いません。本書中の分析・意見等は、その前提が変更された場合には、変更が必要となる性質を含んでいます。本書中の分析・意見等は、金融商品、クレジット、通貨レート、金利レート、その他市場・経済の動向について、表明・保証するものではありません。また、過去の業績が必ずしも将来の結果を示唆するものではありません。本書中の情報・意見等が、今後修正・変更されたとしても、武者リサーチは当該情報・意見等を改定する義務や、これを通知する義務を負うものではありません。貴社が本書中に記載された投資、財務、法律、税務、会計上の問題・リスク等を検討するに当っては、貴社において取引の内容を確実に理解するための措置を講じ、別途貴社自身の専門家・アドバイザー等にご相談されることを強くお勧めいたします。本書は、武者リサーチからの金融商品・証券等の引受又は購入の申込又は勧誘を構成するものではなく、公式又は非公式な取引条件の確認を行うものではありません。

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