(写真はイメージです/PIXTA)

観光庁が10月31日に発表した宿泊旅行統計調査によると、2023年9月の延べ宿泊者数は5,028万人泊となり、2ヵ月ぶりにコロナ禍前の水準を上回りました。そこで本稿では、ニッセイ基礎研究所の安田拓斗氏が、延べ宿泊者数・国内旅行者数・外国人宿泊者数の今後予想される推移について解説します。

1.延べ宿泊者数は2ヵ月ぶりにコロナ禍前の水準を回復

観光庁が10月31日に発表した宿泊旅行統計調査によると、2023年9月の延べ宿泊者数は5,028万人泊(8月:6,102万人泊)となった。

 

前年同月比は27.8%(8月:同30.2%)、新型コロナウイルスの影響が出る前の2019年同月比でみると、3.1%(8月:同▲3.5%)と、2ヵ月ぶりにコロナ禍前の水準を上回った。

 

2023年9月の日本人延べ宿泊者数は4,074万人泊(8月:5,093万人泊)となり、2019年同月比は0.6%(8月:同▲5.2%)と2ヵ月ぶりにコロナ禍前の水準を上回った。

 

2023年9月の外国人延べ宿泊者数は953万人泊(8月:1,010万人泊)となり、2019年同月比は15.4%(8月:同6.4%)と3ヵ月連続でコロナ禍前の水準を上回った。

 

水際対策はすでに撤廃されており、外国人宿泊者数は今後もコロナ禍前の水準を上回ることが予想される。

 

2023年9月の客室稼働率は全体で57.5%(8月:同62.6%)、2019年同月差▲5.9%(8月:同▲6.8%)と、マイナス幅が縮小した。延べ宿泊者数はコロナ禍前を回復したが、客室稼働率は依然としてコロナ禍前の水準を下回っている。

 

宿泊施設タイプ別客室稼働率をみると、旅館は37.6%、2019年同月差▲1.8%(8月:同▲6.2%)、リゾートホテルは54.7%、2019年同月差▲5.1%(8月:同▲10.7%)、ビジネスホテルは72.4%、2019年同月差▲3.9%(8月:同▲6.2%)、シティホテルは71.2%、2019年同月差▲8.1%(8月:同▲11.7%)、簡易宿所は25.1%、2019年同月差▲11.6%(8月:同▲11.8%)であった。

 

2019年同月差では、全てのタイプの宿泊施設で前月からマイナス幅が縮小した。

 

2.物価上昇が国内旅行の向かい風に

日本人延べ宿泊者数は全国旅行支援(宿泊料金の割引、クーポンの配布)が開始された2022年10月以降、堅調に推移している。

 

 

現時点(10月31日)で、10自治体が11月以降も、全国旅行支援を実施する。そのうちの多くでは、貸切バスを利用した団体旅行のみが対象となっており、個人旅行は除外されている。さらにホテル代高騰など物価高が向かい風となり、日本人延べ宿泊者数が減少する可能性がある。

 

しかし、北海道、京都府などでは全国旅行支援を再開することを発表している。加えて基調として日本人の旅行需要は回復しているため、日本人延べ宿泊者数がコロナ禍前と比較して大きく落ち込む可能性は低いだろう。

3.外国人宿泊者数は急速に回復

外国人宿泊者数のうち、国別が分かる従業者数10人以上の施設でみると、2023年9月の中国人延べ宿泊者数は2019年比▲48.3%(8月:同▲50.5%)と香港(同5.4)、台湾(同9.5%)、アメリカ(同44.0%)など他の国・地域と比較すると回復が遅い。

 

中国が8月10日に日本への団体旅行を解禁したことで、中国人延べ宿泊者数の回復が期待されたが、その直後、処理水放出によって反日感情が高まり、日本への旅行を中止する動きによって回復スピードが鈍化したままとなっている。

 

一方、外国人延べ宿泊者数(従業者数10人以上の施設)の2019年比は2023年9月に全体が5.9%(8月:同▲2.4%)とプラスに転じ、中国を除いた全体が同31.8%(8月:同27.9%)と5ヵ月連続でコロナ禍前の水準を上回った。

 

中国人延べ宿泊者数がコロナ禍前の半分程度の水準であるにもかかわらず、外国人延べ宿泊者数はコロナ禍前の水準を大きく上回っている。

 

中国人宿泊者数の回復は遅れる公算が大きいが、足元の円安が追い風となり、今後も外国人宿泊者数は回復基調を継続するだろう。

 

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年11月1日に公開したレポートを転載したものです。

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