1.結果の概要:成長率は5期連続のプラス成長。前期、市場予想を上回る
10月26日、米商務省の経済分析局(BEA)は23年7-9月期のGDP統計(1次速報値)を公表した。7-9月期の実質GDP成長率(以下、成長率)は、季節調整済の前期比年率1で+4.9%(前期:+2.1%)と5期連続のプラス成長となり、前期を大幅に上回ったほか、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+4.5%も上回った(図表1・2)。成長率としては21年10-12月期(+7.0%)以来の水準となった。
7-9月期の成長率を需要項目別にみると、設備投資が前期比年率▲0.1%(前期:+7.4%)と僅かながら2年ぶりにマイナス成長に転じたほか、外需の成長率寄与度も▲0.08%ポイント(前期:+0.04%ポイント)と小幅ながら成長押し下げに転じた(図表2)。
一方、住宅投資が+3.9%(前期:▲2.2%)と10期ぶりにプラス成長に転じたほか、在庫投資の成長率寄与度が+1.32%ポイント(前期:横這い)と前期から大幅な成長押上げに転じた。
さらに、政府支出が前期比年率+4.6%(前期:+3.3%)、個人消費が+4.0%(前期:+0.8%)と前期から伸びが加速した。とくに、当期の成長率が大幅に上昇した要因は個人消費の増加によるところが大きい。
これらの結果、GDPから在庫投資と外需を除いた国内最終需要は前期比年率+3.5%(前期:+2.0%)となり、国内需要の伸びは前期から加速した。
このように、当期は成長率が前期から大幅に上昇し、2%弱程度とみられる潜在成長率の倍以上の高成長となった。在庫投資の成長押上げや政府支出の伸びが加速したのに加え、個人消費が大幅に加速したことが大きい。
個人消費はFRBによる大幅な金融引締めにも関わらず、雇用者数の堅調な増加を背景に堅調となった。もっとも、個人消費の4%の伸びは持続困難とみられ、10-12月期には個人消費の大幅な伸び鈍化に伴う成長率の低下は不可避だろう。
1 以降、本稿では特に断りの無い限り季節調整済の実質値を指すこととする。
2.結果の詳細:(個人消費・個人所得)財消費、サービス消費ともに増加
7-9月期の個人消費は、財消費が前期比年率+4.8%(前期:+0.5%)、サービス消費が+3.6%(前期:+1.0%)と財、サービスともに前期から伸びが加速した(図表3)。
財消費では、耐久財が+7.6%(前期:▲0.3%)と前期からプラスに転じたほか、非耐久財が+3.3%(前期:+0.9%)と前期から伸びが加速した。
耐久財では、自動車・自動車部品が+1.3%(前期:▲9.1%)と前期からプラスに転じたほか、家具・家電が+7.2%(前期:横這い)、娯楽・スポーツカーが+15.8%(前期:+11.2%)と前期から伸びが加速した。
非耐久財は、ガソリン・エネルギーが▲7.6%(前期:+8.9%)と前期からマイナスに転じた一方、衣料・靴が+6.7%(前期:▲7.1%)と前期からプラスに転じたほか、食料・飲料が+2.1%(前期:+1.0%)と前期から伸びが加速して非耐久財消費全体を押し上げた。
サービス消費は、娯楽サービスが+1.3%(前期:+1.5%)、輸送サービスが+2.9%(前期:+3.5%)と前期から伸びが鈍化した。
一方、飲食・宿泊サービスが+5.6%(前期:▲0.9%)と前期からプラスに転じたほか、住宅・公共料金が+3.6%(前期:+0.7%)、医療サービスが+3.0%(前期:+2.5%)、金融サービスが+6.1%(前期:+4.5%)と前期から伸びが加速してサービス消費全体を押し上げた。
一方、実質可処分所得は前期比年率▲1.0%(前期:+3.5%)と5期ぶりにマイナスに転じた(図表4)。貯蓄率は3.8%(前期:5.2%)と5期ぶりに低下した。