(※写真はイメージです/PIXTA)

今年8月、福島第一原発のALPS処理水放出が中国で大炎上しました。ネット上を中心に激しい日本バッシングが起きるなか、東洋証券上海駐在員事務所の奥山要一郎所長は「一時恐怖すら覚えた」といいます。あれから2ヵ月……現在中国はどのような状況なのか、現地のリアルを奥山所長が解説します。

ファクトよりも「バズってなんぼ」…ネット大国・中国の実態

この夏、中国で大きな話題になった「水問題」。そう、福島第一原発のALPS処理水放出だ。8月24日の放出後、ネット上を中心に激しい日本バッシングが起きた。

 

例のいたずら電話は中国でも発生。日本政府系の機関や日系企業の一部では業務に支障が出るほどだったという。

 

それから1ヵ月以上が経ち、現在(9月下旬)はどうなっているかというと……正直なところ、ほとんど話題になっていない。一時は恐怖すら覚えた「日本叩き」は、すでに下火になった印象すらある。

 

今般の日本に対する抗議や非難、嫌悪感などはネット(スマホ)を中心に広まった。“主戦場”は、抖音(ドウイン=中国版TikTok)、快手(クアイショウ)、WeChat視頻号(チャンネル)などのショート動画プラットフォームや、小紅書(RED)などのSNS。

 

これらのアプリを開くと、事実に基づかないデマやフェイクの類の処理水関連コンテンツが多数出回っており、内心忸怩(じくじ)たる思いをしたのを覚えている。

 

残念ながら、中国ではファクトチェックがほとんど行われず(より正確に言えば、チェックする基準が曖昧)、真実とはかけ離れた情報があたかも事実のように拡散されてしまう。発信側は「流量(アクセス数、データ量などの意)」を最重要視し、情報の真偽は気にしない風潮も見受けられる。

 

端的に言えば「バズってナンボ」。さらに、ユーザー側も深くは考えずに動画を“消化”していくので、結果として奇想天外な論調がネット内でまん延することもある。今から思い返すと、8月最後の週末は日本に対する嫌悪感の強まりを感じ、気分も沈んでいた。

 

ところが、雰囲気を一変させたのは意外な出来事だった。バスケW杯(FIBAバスケットボールワールドカップ2023)における日本チームの躍動ぶりである。

 

にわかに注目が集まったのは、8月27日のフィンランド戦で大逆転勝利を収めた頃だったと思う。ショート動画アプリを開くと、日本チームの活躍ぶりを伝えるコンテンツが人気を博していた。中国でも大人気の「スラムダンク」のテーマソングを添えた編集動画もある。

 

この流れは、同31日のベネズエラ戦の劇的な勝利でさらにヒートアップ。コメント欄には素直に応援する声のほか、「日本は嫌いだけど、この戦いぶりは称賛されるべき」というものも見られ、思わず苦笑。

 

もっとも、これらの背景には中国チームの不甲斐ない戦いぶりもあったのだが……(大会通算成績は、日本は3勝2敗で全体19位、中国は1勝4敗で29位)。

 

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