(※写真はイメージです/PIXTA)

従業員に残業をさせたら、雇用主である企業は残業代を支払わなければなりません。もし残業代を適切に支払っていない場合、後々訴訟などのトラブルに発展する可能性があります。では、残業代や残業代計算のもととなる基礎賃金は、どのように計算すればよいのでしょうか? Authense法律事務所の西尾公伸弁護士が詳しく解説します。

月60時間超の残業の場合、“5割以上”の「割増賃金」を支払う

残業代計算においては、割増賃金について理解しておかなければなりません。割増賃金とは、法定労働時間を超えて行った労働に対して、通常の賃金に割増しして支払うべきとする賃金です。

 

割り増すべき割合は労働基準法37条に定められており、それぞれ次のとおりです。

 

法内残業の場合…割増賃金は支払い不要

法内残業の場合には、割増賃金の支払いは必要ありません。つまり、通常どおりの賃金を支払えばよいということです。

 

たとえば、残業代計算のもととなる1時間あたりの基礎賃金が2,000円である場合、法内残業で支払うべき賃金は1時間あたり2,000円となります。

 

法定時間外労働の場合…「2割5分以上」または「5割以上」の割増賃金

法定時間外労働の場合には、2割5分以上の賃金を割り増しして支払わなければなりません(労働基準法37条、労働基準法第三十七条第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令)。たとえば、残業代計算のもととなる1時間あたりの基礎賃金が2,000円である場合、時間外労働で支払うべき賃金は1時間あたり2,500円となります。

 

また、月の法定時間外労働の合計が60時間を超えた場合には、超えた分の時間分については、5割以上の割増賃金を支払わなければなりません(労働基準法37条)。

 

この60時間超の残業に対する割増賃金を5割以上とする規定は、これまで中小企業は適用除外とされていました。しかし、2023年4月1日からは中小企業も適用対象とされるため注意が必要です。

 

深夜労働の場合…残業でなくても「2割5分以上」、残業の場合「5割以上」の割増賃金

深夜時間帯(原則として、午後10時から午前5時)のあいだに労働をさせた場合には、2割5分以上の賃金を割り増しして支払わなければなりません(同37条4項)。また、時間外労働かつ深夜労働である場合には規定が重複して適用されるため、割増率は5割(=時間外労働2割5分+深夜労働2割5分)となります。

 

たとえば、残業代計算のもととなる1時間あたりの基礎賃金が2,000円である場合、法定時間外の深夜労働で支払うべき賃金は、1時間あたり3,000円となります。

 

休日労働の場合…「法定休日」に働かせると、「3割5分以上」の割増賃金

労働基準法では、週1回または4週を通じて4日以上の休日を与えなければならないとしており、これを「法定休日」といいます。

 

この法定休日に労働させた場合、3割5分以上の賃金を割り増しして支給しなければなりません(労働基準法37条、労働基準法第三十七条第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令)。

 

たとえば、残業代計算のもととなる1時間あたりの基礎賃金が2,000円である場合、休日労働で支払うべき賃金は、1時間あたり2,700円です。

 

また、休日の深夜に残業させた場合には両者が重複して適用されるため、割増率は6割(=休日労働3割5分+深夜労働2割5分)となります。

 

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※本記事はAuthense企業法務のブログ・コラムを転載したものです。

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