(写真はイメージです/PIXTA)

10月27日、欧州中央銀行(ECB:European Central Bank)は政策理事会を開催し、金融政策について決定しました。本稿では、ニッセイ基礎研究所の高山武士氏が、ECB政策理事会での決定及び発表について解説します。

質疑応答(ギリシャ・金利上昇について等)

・ギリシャについて。ギリシャ国債はECBでは正常に戻ったのか。すべての購入政策で、それが再稼働された際には適格になるのか。また、ギリシャ経済が正常に戻るという確信はあるか。つまり、債務問題が発生する以前のAやA+という格付に戻るのか

  • 現在、稼働している購入政策はPEPP下の再投資のみである
  • APPは再投資を実施していないので、どの国が適格でどの国が非適格かは問題にならない
  • ギリシャはPEPPの下で、当時決定された特別免除により適格とされた
  • 良いニュースはこの免除が無意味になったことであり、例外を設けずにPEPPのもとで適格となる
  • ギリシャ経済はコロナ禍前よりも高い位置にある
  • 比較は低俗だが、ギリシャにいるので例外的に述べると、ギリシャは他の国と比較して非常に優れている

 

  • (ストゥルナラス・ギリシャ中銀総裁)ギリシャ経済はコロナ禍前よりも約10%高く、成長率はユーロ圏平均より大幅に高く、スプレッドは通常の範囲にある
  • 総じて、総裁の述べたように成功談と言える
  • A+の格付に戻るまでにやるべきことが多くあることは否定しない

 

・中央銀行の損失について。今週、リクスバンクがバランスシートを修復するために800億クローネが必要になると警告した。ユーロ圏の中央銀行も同じような資本注入が必要となるのか

  • 中央銀行ごとに置かれている状況は異なるので、具体的なことには立ち入らない
  • ユーロシステムとして、ECBとして我々の使命は1つで、それは物価の安定であり、我々は損失を補填し利益を計上することを目的とはしておらず、損益計算書によって導かれるような決定は間違っていると言える

 

・PEPPの再投資について。理事会のメンバーから再投資の終了を前倒しする可能性があると述べられたことに対する見解は

  • 今回の会合ではPEPPについて議論していない

 

・金融政策の伝達の勢いに、ハマスとイスラエルの戦争という不確実性が加わったため、ECBの見通しは楽観的すぎると考えられるのではないか

  • 次回12月の会合で新しい見通しを作成し、完全にデータに基づいて数値を改定し、上方あるいは下方修正する予定である

 

・銀行貸出調査について、何度か言及されたように、経済は基本的には停滞している。これはリスクなのか。伝達は遅いが、行き過ぎたと心配しているか

  • 3つの政策金利が十分に長い期間維持されれば、中期的に2%の目標に戻るのに必要となる重要な貢献をすると考えている

 

・金利の上昇について。金利上昇は、金融調達環境が引き締まるので金融政策の伝達を助けるという見方がある。一方で、金融安定へのリスクとなるという議論もされている。どちらの意見にも賛成するか。また将来的に正しいバランスを見つけることが難しくなると考えられるか

  • (デギンドス副総裁)2週間程度で金融安定レビュー(FSR)を公表する予定であり、ユーロ圏の金融安定リスクについて記載している
  • 金利上昇についてはかなり注視している
  • 過去に指摘し、近い将来にも引き続き指摘できるリスクは、様々な種類の資産価格がかなり高いということである
  • これらの資産評価額は、金融資産だけではなくて、不動産市場についても、金利上昇により重要な調整をもたらす可能性がある
  • 同時に、高金利は主にノンバンクの金融仲介機関に影響を及ぼす要因になる可能性がある
次ページ質疑応答(任期前半の振り返り・スペインについて等)

※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年10月27日に公開したレポートを転載したものです。

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