(写真はイメージです/PIXTA)

10月27日、欧州中央銀行(ECB:European Central Bank)は政策理事会を開催し、金融政策について決定しました。本稿では、ニッセイ基礎研究所の高山武士氏が、ECB政策理事会での決定及び発表について解説します。

4.記者会見の概要

政策理事会後の記者会見における主な内容は以下の通り。

 

(冒頭説明)

・(ストゥルナラス・ギリシャ中銀総裁とそのスタッフへの感謝の言葉)

 

・(声明文冒頭に記載の利上げとスタッフ見通しへの言及)

 

・経済とインフレ率の状況をどう見ているかの詳細と金融・通貨環境への評価について述べたい

 

(経済活動)

・ユーロ圏経済は引き続き弱い

  • 最近の情報は、製造業生産が低下を続けていることを示唆している
  • 冴えない域外需要と資金調達環境の引き締まりにより、投資と個人消費への重しが強まっている
  • サービス部門もさらに軟化している
  • これは主に製造業活動の弱さが他部門に波及したこと、経済再開による押し上げ効果が解消され、高い政策金利の影響が広がっていることによる
  • 今年いっぱいは、引き続き経済の弱さが継続する見込みである
  • しかし、インフレ率がさらに低下し、家計の実質所得が回復し、ユーロ圏の輸出が上向くにつれ、今後数年の経済活動は強まるだろう

 

・経済活動はこれまでのところ、労働市場の強さによって支えられている

  • 失業率は8月に6.4%で歴史的な低水準に留まっている
  • 同時に労働市場にも軟化の兆しが見られる
  • 新規雇用はサービス業も含めて減速しており、経済活動の低下が次第に雇用にも波及している

 

・エネルギー危機の解消に伴い、政府は引き続き関連する支援策を終了させるべきである

  • これは中期的なインフレ圧力が加速し、さらに強力な金融政策で対応することを避けるために重要である
  • 財政支援策は、我々の経済をより生産的にし、高い公的債務を段階的に削減させるよう計画されるべきである
  • ユーロ圏の生産余力を強化させる、次世代EUプログラムの完全な実行によっても支えられている構造改革や投資は、中期的な物価上昇圧力の削減に寄与するとともに、グリーンやデジタルへの移行を支援するだろう
  • そのためにも、EUの経済統治枠組み(economic governance framework)の改革は年末までに迅速に結論を出し、また資本市場同盟へ向けた進展や銀行同盟の完了が加速されるべきである

 

(インフレ)

・インフレ率は8月の水準から9月にはほぼ1%ポイント低下し、4.3%となった

  • 短期的にはさらに低下が進むと見られるが、昨年秋のエネルギー価格と食料価格の高騰には前年比の比較から外れていく
  • 9月の低下は広範囲にわたっている
  • 食料インフレは、歴史的な水準よりも依然として高いものの、再び減速した
  • エネルギー価格は前年比で4.6%落ち込んだが、直近では再上昇しており、地政学的な緊張により、予測が困難になっている

 

・エネルギーと食料品を除くインフレ率は8月の5.3%から9月には4.5%に低下した

  • この低下は、供給制約の改善とエネルギー価格下落の転嫁が進んだこと、金融引き締めの影響が需要や企業の価格設定力に及んできたことによる
  • 財とサービスのインフレ率はそれぞれ4.1%と4.7%と大幅に落ち込み、サービスインフレはベース効果による押し下げが見られた
  • 観光や旅行関連の価格上昇圧力も軟化している

 

・多くの基調的なインフレ指標は低下を続けている

  • 同時に、賃金上昇の重要性が高まっていることを反映し、域内物価の上昇圧力は依然として強い
  • 長期のインフレ期待に関する多くの指標は、現在は2%付近にある。
  • しかし、いくつかの指標は引き続き上昇しており、注視が必要である
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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年10月27日に公開したレポートを転載したものです。

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