「共有不動産」はトラブルになりやすい
ここまでみてきたように、共有不動産というのはそもそもトラブルになりやすいです。先ほどの事例は共有不動産トラブルの代表例ですが、基本的に「共有不動産」に対して各共有者が単独で行える行為は限られています。
共有不動産になにかしようと思ったら、他の共有者の同意が必要なケースが多いです。たとえば、地目変更や売却といった「共有不動産の変更・処分行為」には、他の共有者全員の同意が必要になります。
じゃあ管理はどうかというと、賃貸借を行うといった「共有不動産の管理行為」には、他の共有者の過半数の同意が必要です。
ただし、修繕などの「共有不動産の保存行為」については、各共有者が単独で行うことができます。
つまり、先ほどの事例でいいますと、弟は兄の同意がなければ売却も管理もできず、弟が単独でできるのは雨漏り対応といった修繕程度です。
こうなると、予想される共有不動産トラブルとしては
・売却ができない
・賃貸に出せない
・他の共有者が固定資産税などの税金を払わない
・他の共有者が当該不動産を占有している
など、さまざまなものが挙げられます。
このように、共有不動産はデメリットのほうが大きいため、なるべく単独所有に解消していくというのがトラブルを防ぐ1番の対策です。
共有不動産の「3つ」の解消方法
具体的な解消方法としては、以下の3つがあります。
1.共有持分権者間で売買する
1つ目が、「共有者全員で売買して解消してしまう」こと。これは持分を誰か1人に集め、他の共有者に代金を払って単独所有にしてしまうということです。
ただしこれは“個人間売買”となるため、仲介手数料などはかからない反面、価格設定が難しいというデメリットがあります。この場合、不動産鑑定士などにお願いしなければならないなど手間がかかります。
2.共有持分権者全員で合意のうえ、第三者に売却する
それから、「共有持分権者全員で合意のうえ第三者に売却し、代金を持分に応じて全員で分ける」という方法もあります。
ただし、この方法は結局、共有者のうち1人が代表者となって手続きを行う必要があるため、代表者に負担がかかります。また、だれか1人でも同意しなければ売却できません。
3.物理的に土地を分筆する
また、これは最終手段になりますが、「物理的に土地を分筆してしまう」という方法もあります。これは、登記簿を新たに作って分筆するということになりますが、測量や登記が必要です。
また、ひとつの土地を分けるということは「使いやすい土地」「使いづらい土地」が出てくるため、評価が下がる可能性があります。
このように、上記の方法にはそれぞれメリット・デメリットがあります。
◆まとめ…共有不動産トラブルを避けるために
共有不動産はトラブルになりやすいです。したがって、今回紹介した事態を防ぐためには、
・共有から単独に変更しておく
・共有不動産は売却し現金化する
・相続人が複数いる場合は、共有にならないようにあらかじめ「遺言書」を作成しておく
といった対策を事前に行っておくといいでしょう。
また、すでに共有不動産となってしまい、円滑に手続きを進めたいとなると、共有者全員での話し合いや代表者によるとりまとめなどなかなか難しいことも多いです。
そのため、弁護士や司法書士などの専門家に相談し、専門家と一緒に共有不動産の解消に努めることをおすすめします。
<<<【司法書士が解説】“え!?不動産売却できないの!?…共有不動産の落とし穴>>>
加陽 麻里布
司法書士法人永田町事務所
代表司法書士
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