(※写真はイメージです/PIXTA)

「贈与税は年110万円まで非課税だから、相続税対策として生前贈与が有効」とよく聞きます。しかし、生前贈与にも注意すべきポイントがあり、「安易に生前贈与をしていると、後で贈与を受け取った子や孫が「多額の贈与税」を支払わなければならない可能性があると、司法書士法人永田町事務所の加陽麻里布氏はいいます。具体的な事例をもとに、その原因や解決策についてみていきましょう。

「生前贈与」のキホン

生前贈与は、贈与者が亡くなる前(=相続が発生する前)に、受贈者に対して財産を無償で譲渡することです。通常、親や祖父母といった「直系尊属」から、子や孫などの「直系卑属」に利用され、法定相続人以外に対しても財産を引き継がせることが可能です。

 

一定額を超える贈与には贈与税がかかりるため、贈与額が大きくなるほど、高額な贈与税を支払わなければなりません。しかし、贈与する金額が年間110万円以内であれば「非課税枠」のは範囲内となるため、贈与税はかかりません。また、控除を受けるための書類申請等も不要なことから、広く活用されています。

 

たとえば、1,200万円を孫に贈与したい場合、1度にまとめて贈与すると、

 

1,200万円-110万円(基礎控除)=1,090万円(課税価格)

1,090万円(課税価格)×40%(累進課税)-125万円(控除額)=311万円

 

となります。

 

しかし、1年に110万円以下の金額を分割して贈与を行うと、これは非課税枠の範囲内ですから贈与税の支払い義務を免れることができるのです。このことを、「暦年贈与」といいます。

 

もっとも、この「暦年贈与」には注意が必要です。非課税の仕組みをよく理解せずに利用すると、大きな落とし穴にハマってしまうケースがあります。

生前贈与を受けていた孫…突然の「深刻な事態」に唖然

都内在住の武さん(仮名)は、同じく都内に住む父方の祖父母(宇野夫妻)から数年間生前贈与を受けていました。これは、「武さんの誕生日である1月8日に、武さんの預金通帳にきっちり110万円ずつ振り込む」という形で行われていました。

 

そんなある日、札幌から上京していた母方の祖父母(品川夫妻)は、宇野夫妻が暦年贈与によって相続税対策をしていると聞き、同年から品川夫妻も武さんの誕生日に110万円ずつ、暦年贈与を行うようになったそうです。

 

武さんは毎年振り込まれる220万円を「臨時ボーナス」のつもりで贅沢に使っていました。

 

その後、持病により宇野家に相続が発生。思わぬケガをきっかけに、中野家にも相続が発生しました。

 

父方の祖父と母方の祖父を相次いで亡くした武さんは深い悲しみに暮れていましたが、税務署から思いもよらぬ「お手紙」が届きました。なんと武さんは、知らぬ間に「高額な贈与税」を納税しなければならないことになっていたのです。

 

「可愛い孫にはできるだけたくさんの財産を遺し、将来困らないようにしてあげたい」という祖父母の想いとは裏腹に、武さんは大変な事態に追い込まれるはめになってしまいました。

 

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