(※写真はイメージです/PIXTA)

「住宅ローンなんていつでも借りられる」と考えてはいないでしょうか。人生最大の借金となる住宅ローンの返済期間は35年。最近では40年から50年と長期にわたるものも登場しています。人生の約半分の期間を費やして返済するのが住宅ローンなのです。この莫大な借金をしようとすると、金融機関は融資していい人物なのかをあらゆる情報を使って精査します。これを「審査」と呼びますが、多くの人が考えている以上に厳しい基準で判断しています。住宅ローンの審査を通過できるのは決して当たり前のことではなく、タイミングを逃せば一生借りられないという最悪の事態も起こりえます。そこで長岡FP事務所代表の長岡理知氏が事例をもとに、金融機関における住宅ローンの審査基準について解説していきます。

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    「何を見られている?」一筋縄ではいかない住宅ローンの審査

    国土交通省住宅局『令和4年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書』によると、1,016の金融機関から審査項目についての回答を得ていることが分かります。「融資を行う際に考慮する項目」を採用している金融機関の数が多い順番に並べてみます。

     

    1位 完済時年齢(98.7%)

    2位 健康状態(97.9%)

    3位 借入時年齢(97.2%)

    4位 担保評価(96.1%)

    5位 勤続年数(93.2%)

    6位 連帯保証(93.1%)

    7位 返済負担率(93.0%)

    8位 年収(92.9%)

     

    このようになります。「連帯保証」は保証会社の保証のことであるため、個人信用情報の内容とも言い換えることができます。逆にあまり採用されていない審査項目を並べてみると

     

    20位 性別(21.2%)

    19位 雇用先の規模(25.4%)

    18位 所有資産(26.2%)

    17位 家族構成(29.8%)

     

    となっています(この結果は調査票が選択式であるため、実際にはこれ以外の審査項目も存在すると考えられます)。

     

    このことから金融機関が最も重視しているのは「完済時の年齢」と言えます。多くの住宅ローンは完済時が80歳以下という規定になっています。80歳までにあと何年あるのか、それによって返済負担率はどのくらいになるのかと他の項目と連動していくため、非常に重要な項目です。

     

    80歳まであと25年であれば、同じ金額の融資を受けたとしたら35年返済よりも毎月の返済額は高くなります。年収に占める返済額の割合(返済負担率)が一定以下でなければならないため、融資可能額が低くなってしまう可能性があるのです。

     

    一方で「所有資産」「勤務先の規模」は考慮されないことが多く、「預貯金が多いから融資額を増やす」ということはありません。「勤務先が大企業だから増やす」こともありません。

     

    個人信用情報の内容が最も大切と思い込みがちですが、それ以上に完済時年齢が重要だという点は多くの人のイメージとやや異なるかもしれません。住宅ローンを借りるためには、若い方がいいということです。

    人生において住宅ローンの「借り時」はある

    仕事を頑張って昇進し、大企業の部長職になったら銀行は喜んでたくさん融資してくれるのではないか? と思った事例のAさんでしたが、勘違いでした。

     

    重要なのは完済時の年齢と、年収、勤続年数です。大手企業で部長職となるのは早くて40代後半、一般的には50代が一般的でしょう。確かに業界での信頼度や知名度は高くなっているかもしれませんが、融資を受けるためには年齢的に不利であるのが現実です。

     

    55歳の部長職よりも、28歳の一般社員の方がはるかに有利なのです。出世競争を勝ち抜いてきたという50代部長のプライドの高さとは裏腹に、住宅ローンの審査は若い人が希望通りに通過しやすいのは皮肉でもあります。

     

    ましてや50代で年収が低かったら、住宅ローンの融資額は希望通りにはいかなくなります。「融資可能額が低すぎる、でも自己資金はない」ということになれば、マイホームは諦めざるをえません。安い中古物件を買おうかと検討するものの、今度は「担保評価」が低く住宅ローンを借りられない……ということもありえます。

     

    住宅は高い買い物なので焦りは厳禁です。しかしいずれマイホームが欲しいのであれば、希望通りの住宅ローンを借りるためにはタイムリミットがあるのだという自覚が必要です。住宅購入は「景気は関係なく、来年は今よりも不利になる」のが鉄則です。焦る必要はありませんが、着実に、現実的な検討を今から重ねていくことをお勧めします。

     

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