「現状維持」が精いっぱいの育毛サロン
薄くなって必死なときには、無我夢中で駆け込む育毛サロンですが、実際に店舗に入っていくのは恥ずかしいものです。
たとえば、ある育毛サロンの看板の出ているビルがあったとします。自分はそこに入って、目的の階に行きたいわけですが、誰かが一緒にエレベーターに乗ってしまうと、その階のボタンを押すのははばかられます。
サロンがあるのが3階だとすると、「俺は3階じゃないよ」って顔をして、しょうがないから5階を押したりするわけです。
ところが、そういうときに限って、その人が5階の会社の人だったりします。
「何かご用ですか?」と聞かれて、「あれ、ここじゃないみたいだぞ。間違えました~」って、わざとらしい芝居までしないといけなくなります。
それでも、3階をすぐ押せばいいのですが、声をかけてきた5階の会社の人が美人だったりすると、3階を押す勇気が出なくて、「また1階から出直し」……なんて具合です。
そういう感じで、入るのも恥ずかしい育毛サロンですが、私は、有名なところには一通り行きました。
その積み重ねから、サロンの限界はよく知っているつもりです。
結論から言うと、サロンに行っても、薬を塗ってマッサージを受けるだけ。そういう人任せの方法だけでは、髪は生えてきません。だから、私が最初のサロンの人に言われたとおり、現状維持が精いっぱいなのです。
あとで詳しく述べますが、自分の生活を正して体質を変えなければ、薬もうまく効きません。そして、もしもよい薬を使いたいなら、専門クリニックに行って内服薬を処方してもらうのが一番なのです。
社員のモチベーション維持が目的の「発毛コンテスト」
数あるサロンのなかには、「ハゲはなおる」と言っているところもあります。ただし、実際にやっていることは、どこのサロンもほとんど変わりません。
彼らが「なおる」と言っているのは、精神力なども重視しているからなのです。
あるサロンは、頻繁に開催している「発毛コンテスト」で知られていますが、あれは何のためにやっているかというと、宣伝だけでなく、社員やスタッフのモチベーションを維持するためのお祭りなのでしょう。
そもそも、コンテストで審査されるのは「どれほど髪が増えたか」だけではありません。
片道2時間かけて、雨の日も雪の日も毎週通ったとか、おばあちゃんだけどあきらめずに続けたとか、ストーリー性も加味されたうえで優勝者が決まります。
苦労話にみんな酔っている感じがします。
なぜかというと、スタッフが自分たちの仕事の意義を確認し、達成感や使命感を共有することが目的だから。つまりは全支店が集まったところで、がんばった支店を褒め合うイベントなのですね。
お客様のハゲをなおそうという強い気持ちをもつこと。それもすごく大事なことなのですが、残念ながら根性だけでは髪は生えてきません。
髪が生えたことに仰天する育毛サロンのスタッフ
この業界には有名なサロンがいくつかあります。私も、自分の髪が危なかった頃に何度か駆け込みましたし、たいていの有名育毛サロンには行ってみたことがあります。
ですが、サロンに頼っているときにはあまり結果が出なくて、おまけに「髪は増えません」と言われたりもしたので、自分で育毛のノウハウを研究、実践した結果、髪が生えてきたのです。
挙げ句の果てにと言いますか、毛が生えた頃には、こんなことがありました。
育毛サロンの多くは、たいてい体験後にフォローアップの営業をかけてくるのですが、あるとき、ひとつのサロンから電話がかかってきました。
「最近どうですか? 髪の調子は?」
「いや、もう生えてきましたから」
「え?」
「生えてきたんですよ」
「生えてきたって、いったいどういうことですか?」
「なんか、いろいろやったら生えてきたんですよ」
「ということは、髪が生えたんですか?」
「そうです」
「髪って、毛のことですよね?」
「もちろん毛のことですよ」
「え? どうやって生えてきたんですか?」
そんな話になったので、(やっぱり、なんかおかしいよなぁ)と思いました。
で、電話の向こうの人に、こう言いました。
「ちょっと待ってくださいよ。その質問、おかしくないですか? お宅、お客の髪の毛を生やすのが仕事でしょ?」
「ええ、まあ、そうなんですが……」
こんなありえない会話を、実際にしたことがありました。
残念ながら、これが日本の育毛ビジネスの実態というわけです。