ビットコイン等の暗号通貨で独特な役割を担う「採掘者」
暗号通貨に関しては、さまざまなプレーヤーが存在する。ここでは代表的なプレーヤーの種類を紹介する。
1.暗号通貨の開発企業
暗号通貨の中にはビットコインのように個人が趣味または研究目的で開発した(とみられる)ものもあれば、企業が(時として不当な)営利目的で開発するものもある。
アルトコインの開発を行うベンチャー企業の中には、まとまったコインを生成した上で、ウェブサイトを通じて、その将来的な利用方法を提示し、価格上昇を見込んだ投資家に対して(主としてビットコインを対価とする)販売を行うことにより、開発資金等の調達を行うことがある。
これはクラウドセール(crowdsale/crowd sale)、プリセール(presale)、IPO(Initial Public Offering)、ICO(Initial Coin Offering)、ITO(Initial Token Offering)のように呼ばれ、購入型クラウドファンディングに類似した側面を有するが、投機的な側面が強く、その意味では投資型クラウドファンディングにも類する。もっともクラウドファンディングのプラットフォームを通さずに自社のウェブサイトにおいて行うのが通常であるが、各国の証券規制の適用の有無には留意を要する。
また、開発企業(またはその関係企業)は、その開発した暗号通貨を取り扱う交換所を運営したり、当該暗号通貨を利用するための仕組みを構築したりするなど、当該暗号通貨にとっての「信頼された第三者」としてその価値を支えることがある。
2.採掘者
ビットコインの仕組みの中では、採掘者(マイナー)が重要なプレーヤーとなる。
プルーフ・オブ・ワーク等のブロック形成のための合意プロセスへの参加を通じて貢献する参加者に当該暗号通貨による報酬を与える場合、そのような参加者は一般に採掘者と呼ばれ、このような報酬として暗号通貨を獲得する行為は採掘またはマイニング(mining)と呼ばれる。採掘者は世界中に多数存在することが望ましいが、プルーフ・オブ・ワークの場合、電気料金等のシステム維持コストの低い地域に所在する採掘専用の高度なシステムを備えた事業者が有利であり、これがビットコインにおける採掘者の寡占化の原因となっている。
なお、暗号通貨の種類によっては必ずしも採掘者とは呼ばれないし、具体的な役割も異なり得る。
仮想通貨から法定通貨や他の仮想通貨への交換も活発化
3.利用者
利用者はいうまでもなく重要なプレーヤーである。その利用方法はビットコインについては前回説明したとおりである。暗号通貨を投資の対象とする利用者の中には投資ファンドなども含まれる。
4.交換所
FATFの定義によると、交換所(exchanger)とは、仮想通貨と法定通貨、他の仮想通貨その他の資産との交換の事業を行う者である。
典型的には、ウェブサイトを通じて利用者に暗号通貨と法定通貨の交換を行わせる事業者であり、この意味では取引所とも呼ばれる。その中には、交換所が自ら暗号通貨の売買を行う場合もあれば(この場合は販売所とも呼ばれる)、利用者間の暗号通貨の売買の媒介および決済を行うシステムを提供する場合もある(取引所という場合にはこの場合のみを指すこともある)。後者の取引所には、マーケット・メイカーが存在する場合もある。
また、ATMと呼ばれる自動化された機械設備等を用いてオフラインで暗号通貨の売買を行う販売所も存在する。もちろん、手作業によって暗号通貨の売買を行う販売所も存在する。
他方で、ウェブサイトを通じてもっぱら暗号通貨同士の交換のみを行う事業者もある。
さらに、小売店が暗号通貨による代金の支払いを受け付けることができるよう、小売店に対して商品・サービスごとに相場に応じた暗号通貨建ての価格を提供するとともに、顧客の支払った暗号通貨を法定通貨に交換するサービスを提供するペイメント・プロセッサーも存在する。
また、国際送金手段としての利用を望む利用者に暗号通貨を販売した上で当該暗号通貨を送金先となる国で換金しやすいウォレットに送付するというビジネスも存在する。
5.その他
このほかにも、顧客の暗号通貨の預託を受けるウォレット事業者、関連するさまざまなソフトウェアやハードウェアを開発・販売する企業、事業者の自主規制団体、啓発活動や研究活動を行う団体、コンピュータ科学、経済学、法学などの観点から学術研究を行う研究者、法定通貨を扱う交換所に対して預金口座を開設する銀行等の金融機関、法律、会計、税務などの助言を行う専門職など、さまざまなプレーヤーが存在している。