投資関連のロボアドバイザーサービス提供の関門となる法定登録

今回は、投資関連のロボアドバイザービジネスを日本で行う上で、どこまでの業登録をしてから業務を始めるべきなのかを考えてみます。 ※本連載は、西村あさひ法律事務所の有吉尚哉弁護士、本柳祐介弁護士、水島淳弁護士、谷澤進弁護士の編著書籍、『FinTechビジネスと法 25講』(商事法務)の中から一部を抜粋し、近年、大きな注目を集めている「FinTech」の概要や関連法制について紹介していきます(本稿は、上記書籍の14講の抜粋です)。

サービス開始時に、どこまでの業登録が必要か

3.許認可とロボアドバイザービジネスの内容・開始時期の検討に係る問題

 

ロボアドバイザービジネスのスタートアップ時点において、どこまでの業登録が必要かという点に関連して、実務上、以下のような質問が生じ得る。

 

①金融商品取引業の登録を必要としない範囲でサービスを提供することで、ロボアドバイザービジネスを実施できないか

②サービス内容を限定し、たとえば、第一種金融商品取引業や投資運用業の登録が必要となる業務については外部の業登録者に委託し、自らは投資助言・代理業に係る業務のみを行うことによって、規制対応の負担を軽くできないか

③当初は、金融商品取引業の登録が必要となる業態を1つに絞ってロボアドバイザービジネスを実施することによって登録手続に要する時間を短縮し、ビジネスのスタート時点を早く設定できないか

④社内体制整備のための人員が当初から揃わないことから、当初は社内体制面で比較的緩やかな投資助言・代理業によって提供できるサービスの範囲でロボアドバイザービジネスを行うこととし、後からビジネスの拡充に伴い、他の業態の登録を追加取得するスケジュールにできないか

段階的にビジネスの拡充を図る方針も考えられる

このような質問への対応は、金融商品取引法における「金融商品取引業」の範囲の解釈を伴う場合が多く(1)、ロボアドバイザービジネスの内容、そのシステム、ウェブサイトの画面設計や方針等、個別具体的事情を踏まえて検討しなければならないことから、一概に論じることはできない。

 

特に、第一種金融商品取引業や投資運用業の登録の取得は、時間面でも費用面でも相当の負担を伴うものであることから、たとえば、当初は投資助言・代理業の登録を取得する方向でその行うサービスの内容を限定し、追って第一種金融商品取引業や投資運用業の登録を取得する等、段階的にロボアドバイザービジネスの拡充を図るという方針も考えられる場合もあろう。

 

他方で、その行うロボアドバイザービジネスが当初から定まっている場合には、第一種金融商品取引業や投資運用業の登録も含む複数の登録を、業務開始当初から取得するという方針もあり得る(2)

 

まとめ

 

ここまでのように、どの業態の金融商品取引業の登録が必要となるかについての判断と、必要な登録を取得するタイミング・スケジュールの確定は、ロボアドバイザー業者にとっては、人員確保、費用の負担、ビジネスプランに直結する重要な問題である。このことから、許認可の要否およびその内容・スケジュールの検討は、ロボアドバイザービジネスの構想段階等の初期の段階から視野に入れて検討を行う必要がある。

 

(1)①どこまでが投資助言・代理業の登録だけでできる業務か、②どこからが投資運用業に係る業務として投資運用業の登録取得が必要か、③どこまでが投資運用業と投資助言・代理業に係る業務として許容され、第一種金融商品取引業の登録取得なしでできる業務か等の業務内容についての検討は、その行う業務の内容次第であり、個別具体的事情を踏まえた慎重な考察が必要となる。

(2)連載第9回の図表に記載した業者のほとんどが、第一種金融商品取引業、投資運用業、投資助言・代理業のすべてを取得している。もっとも、これには、もともと第一種金融商品取引業を取得している証券会社によるロボアドバイザービジネスへの参入の場合も含まれていることから、各業者の実際のロボアドバイザービジネスとそれに対応して必要な登録が何かということは、各業者が取得している登録だけからでは判断できないことに留意されたい。

西村あさひ法律事務所・弁護士
ニューヨーク州弁護士 

2002年神戸大学法学部卒業、2005年司法修習終了(58期)、2012年ノースウエスタン大学(LL.M./Kellogg Program)卒業。
【主な著書等】「Third Edition(Japan Chapter)」『The Real Estate Law Review』(共著、Law Business Research、2015)、『Q&A金融商品取引法の解説』(共著、金融財政事情研究会、2007)

(第14講担当)

著者紹介

西村あさひ法律事務所 パートナー弁護士

2001年東京大学法学部卒業、2002年司法修習終了(55期)、2010年〜2011年金融庁総務企画局企業開示課専門官、2013年~京都大学法科大学院非常勤講師、2018年~武蔵野大学大学院法学研究科特任教授。

【主な著書等】
『金融とITの政策学』(共著、金融財政事情研究会、2018)、『ファイナンス法大全(上)(下)〔全訂版〕』(共編著、商事法務、2017)、『ここが変わった!民法改正の要点がわかる本』(翔泳社、2017)、『FinTechビジネスと法25講』(共編著、商事法務、2016)、『資産・債権の流動化・証券化(第3版)』(共編著、金融財政事情研究会、2016)、『平成26年会社法改正と実務対応(改訂版)』(共著、商事法務、2015)

著者紹介

西村あさひ法律事務所・パートナー 弁護士
ニューヨーク州弁護士 

2001年早稲田大学法学部卒業、2003年司法修習終了(56期)、2010年コロンビア大学ロースクール(LL.M.)卒業。

【主な著書等】『ファンド契約の実務Q&A〔第2版〕』(商事法務、2018)、『ファンドビジネスの法務〔第3版〕』(共著、金融財政事情研究会、2017)、『FinTechビジネスと法 25講』(共編著、商事法務、2016)、『投資信託の法制と実務対応』(共著、商事法務、2015)、「株式関連事務におけるブロックチェーンの活用」NBL1168号(2020)、「株式投資型クラウドファンディング業者に関する法的論点と実務」旬刊商事法務2112号(2016)、「上場企業の第三者割当をめぐる法整備の概要」ジュリスト1470号(共著、2014年)、「外国ETF・外国ETFJDRの上場に関する法的論点と実務」旬刊商事法務2034号(2014)、「並行第三者割当の法的論点と実務」旬刊商事法務2024号(共著、2014)、「〔座談会〕ブロックチェーンの法的検討(上)(下)」NBL 1094・1096号(2017)

著者紹介

西村あさひ法律事務所・パートナー 弁護士 

2004年東京大学法学部卒業、2005年司法修習終了(58期)、2013年スタンフォード大学ビジネススクール(MBA)卒業、2012年〜2014年米国WHILL,Inc.ビジネスディレクター、2007年〜2010年および2015年成蹊大学法科大学院非常勤講師。
【主な著書等】『租税法概説(第2版)』(共著、有斐閣、2015)、『企業取引と税務否認の実務』(共著、大蔵財務協会、2015)、『ビジネスパーソンのための企業法務の教科書』(共著、文藝春秋、2012)、「シティグループと日興コーディアルグループによる三角株式交換等の概要〔下〕」旬刊商事法務1833号(共著、2008)

(第1講担当)

著者紹介

西村あさひ法律事務所 パートナー弁護士
ニューヨーク州弁護士

2004年東京大学法学部卒業、2006年司法修習終了(59期)、2012年ヴァンダービルト大学ロースクール(LL.M.)卒業、2012年〜2013年金融機関(在ニューヨーク)に出向、2013年〜2014年外資系証券会社(在東京)に出向。

【主な著書等】
『新株予約権ハンドブック(第3版)』(共著、商事法務、2015)

著者紹介

連載法律家による「FinTech」入門

本連載は、2016年7月15日刊行の書籍『FinTechビジネスと法 25講』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

FinTechビジネスと法 25講

FinTechビジネスと法 25講

有吉 尚哉,本柳 祐介,水島 淳,谷澤 進 編著

商事法務

西村あさひ法律事務所所属の弁護士が、「FinTechビジネス」のさまざまな分野ごとに概要を紹介しつつ、それらのビジネス遂行上に必要な法令の基礎知識・適用関係を、平成28年5月25日に成立した改正Fintech関連法も踏まえて解説…

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