サービス開始時に、どこまでの業登録が必要か
3.許認可とロボアドバイザービジネスの内容・開始時期の検討に係る問題
ロボアドバイザービジネスのスタートアップ時点において、どこまでの業登録が必要かという点に関連して、実務上、以下のような質問が生じ得る。
①金融商品取引業の登録を必要としない範囲でサービスを提供することで、ロボアドバイザービジネスを実施できないか
②サービス内容を限定し、たとえば、第一種金融商品取引業や投資運用業の登録が必要となる業務については外部の業登録者に委託し、自らは投資助言・代理業に係る業務のみを行うことによって、規制対応の負担を軽くできないか
③当初は、金融商品取引業の登録が必要となる業態を1つに絞ってロボアドバイザービジネスを実施することによって登録手続に要する時間を短縮し、ビジネスのスタート時点を早く設定できないか
④社内体制整備のための人員が当初から揃わないことから、当初は社内体制面で比較的緩やかな投資助言・代理業によって提供できるサービスの範囲でロボアドバイザービジネスを行うこととし、後からビジネスの拡充に伴い、他の業態の登録を追加取得するスケジュールにできないか
段階的にビジネスの拡充を図る方針も考えられる
このような質問への対応は、金融商品取引法における「金融商品取引業」の範囲の解釈を伴う場合が多く(1)、ロボアドバイザービジネスの内容、そのシステム、ウェブサイトの画面設計や方針等、個別具体的事情を踏まえて検討しなければならないことから、一概に論じることはできない。
特に、第一種金融商品取引業や投資運用業の登録の取得は、時間面でも費用面でも相当の負担を伴うものであることから、たとえば、当初は投資助言・代理業の登録を取得する方向でその行うサービスの内容を限定し、追って第一種金融商品取引業や投資運用業の登録を取得する等、段階的にロボアドバイザービジネスの拡充を図るという方針も考えられる場合もあろう。
他方で、その行うロボアドバイザービジネスが当初から定まっている場合には、第一種金融商品取引業や投資運用業の登録も含む複数の登録を、業務開始当初から取得するという方針もあり得る(2)。
まとめ
ここまでのように、どの業態の金融商品取引業の登録が必要となるかについての判断と、必要な登録を取得するタイミング・スケジュールの確定は、ロボアドバイザー業者にとっては、人員確保、費用の負担、ビジネスプランに直結する重要な問題である。このことから、許認可の要否およびその内容・スケジュールの検討は、ロボアドバイザービジネスの構想段階等の初期の段階から視野に入れて検討を行う必要がある。
(1)①どこまでが投資助言・代理業の登録だけでできる業務か、②どこからが投資運用業に係る業務として投資運用業の登録取得が必要か、③どこまでが投資運用業と投資助言・代理業に係る業務として許容され、第一種金融商品取引業の登録取得なしでできる業務か等の業務内容についての検討は、その行う業務の内容次第であり、個別具体的事情を踏まえた慎重な考察が必要となる。
(2)連載第9回の図表に記載した業者のほとんどが、第一種金融商品取引業、投資運用業、投資助言・代理業のすべてを取得している。もっとも、これには、もともと第一種金融商品取引業を取得している証券会社によるロボアドバイザービジネスへの参入の場合も含まれていることから、各業者の実際のロボアドバイザービジネスとそれに対応して必要な登録が何かということは、各業者が取得している登録だけからでは判断できないことに留意されたい。