海外とのオンライン取引の決済や海外送金には有用
暗号通貨を利用することが可能な場面はさまざまであるが、ここでは典型例であるビットコインを例に挙げて、これまでにどのような方法で利用されているかを紹介する。
1.決済手段
ビットコインは、当然ながら、決済手段としての利用が想定されている。すなわち、日本円や米ドルと同様に、ビットコインにより商品やサービスの価格が提示され、ビットコインによって代金の支払いが行われるというものである。
もっとも、一般に、自国の法定通貨が安定している場合、訪問中の非居住者はともかくとして、ビットコインについて居住者が決済手段としての利便性を感じる場面は限定的であるように思われる。現に、日本国内においてもビットコインによって代金の支払いを行うことができる小売店(オンラインおよびオフライン(実店舗))は少しずつ増加しているが、その数は限定的なものに留まる。
とはいえ、小売店にとっては比較的安価に導入することができることもあり、今後、ビットコインの利用者の増加とビットコインによる代金の支払いを受け付ける小売店の数の増加が相乗効果を生む可能性もあろう。
また、法定通貨の価値の安定性にかかわらず、国際的なオンライン取引においては簡易な決済手段として有用性が認められる。
2.送金手段
ビットコインは送金手段としても有用である。すなわち、送金元でビットコインを購入し、そのビットコインを送金先に送付した後、送金先においてビットコインを売却すれば、その間の相場変動リスクにはさらされるものの瞬時に送金を行うことが可能である。とりわけ、国際送金においては、銀行を通じて行う場合には時間がかかったり手数料が高額であったりといった問題があるものの、ビットコインであれば瞬時に低コストで国外に送付することが可能である。現に、出稼ぎ労働者の母国への送金、留学生への生活費の送金などに利用されている例はある。
また、外国為替規制の影響を受けずに国際送金を行うための手段として利用されることもある。
実際の利用の多くは「投機」を目的としたもの
3.価値の貯蔵手段
ビットコインを貯蔵する仕組みはウォレット(wallet)と呼ばれるが、これには、ビットコインをウォレット事業者に送付して管理させるオンライン・ウォレット、PCソフトやモバイル・アプリを用いたソフトウェア・ウォレット、専用のハードウェアを用いるハードウェア・ウォレット、紙にQRコードを印字することにより作成するペーパー・ウォレットなどがある。このうち、オンライン・ウォレットはウォレット事業者の信用リスクを負うことになる点に留意を要する。他方で、オンライン・ウォレット以外のウォレットについては自ら秘密鍵を管理することとなるところ、秘密鍵を喪失すると対応するビットコインは永久に失われることになる点に留意を要する。
ビットコインは相場のボラティリティが大きく、また、前述のとおり秘密鍵を喪失すると対応するビットコインは永久に失われることから、長期的な価値の貯蔵手段としては必ずしも適切ではない。もっとも、長期的な相場の高騰を見込んで貯蔵する場合もあるし、2013年にキプロスでみられたように、自国の金融機関への預金への信頼が失われた場合などには、法定通貨建ての預金をビットコインに逃避させる動きがみられることもある。
4.投資の対象
現在、ビットコインの主たる利用方法は、投資、とりわけ投機の対象としての利用である。投資の対象として活発に取引されることによりビットコインに流動性が与えられて売買価格差(スプレッド)が縮小することから、投資の対象とされることはビットコインが前記1から3までの機能を果たすためにも重要な点であると考えられる。日本国内においても、外国為替証拠金取引(FX取引)による投資に慣れた個人投資家らによって投資の対象とされている。そのような投資家への需要に応えるため、FX取引と同様の証拠金取引や、株式の場合と同様の信用取引なども提供されている。