今回は、ビットコインなどの暗号通貨(仮想通貨)について、その特徴による4類型をお伝えします。 ※本連載は、西村あさひ法律事務所の有吉尚哉弁護士、本柳祐介弁護士、水島淳弁護士、谷澤進弁護士の編著書籍、『FinTechビジネスと法 25講』(商事法務)の中から一部を抜粋し、近年、大きな注目を集めている「FinTech」の概要や関連法制について紹介していきます(本稿は、上記書籍の18講の抜粋です)。

ビットコインに触発され、様々な「暗号通貨」が登場

暗号通貨/仮想通貨とは

 

ビットコインの登場後、これに触発され、ライトコイン(Litecoin)、ドージコイン(Dogecoin)、モナーコイン(Monacoin)など、ブロックチェーン技術を用いた通貨、類似の機能を有する仕組みが数多く登場した。ビットコインを含めこれらの仕組みはいずれも暗号技術を基礎とすることから「暗号通貨」と呼ばれるが、特にビットコイン以外のものはアルトコイン(1(Altcoin:Alternative coinの略)と呼ばれる。アルトコインにおいて採用されるブロックチェーンの仕組みは一様ではなく、改竄や二重取引を防止する仕組みとしてプルーフ・オブ・ワークに替わる仕組みを採用するものもある。

 

もっとも、暗号通貨やアルトコインがどこまでを含むかは必ずしも明確ではない。たとえば、暗号通貨やアルトコインと呼ばれるものの中には、国際的な銀行間の即時グロス決済システムであるリップル(Ripple)において用いられるXRPや、分散型コンピューティング・プラットフォームとして知られるイーサリアム(Ethereum)において用いられるイーサ(Ether)も含まれる。

 

XRPは、本来は直接両替のできない異なる法定通貨間の交換に際してその橋渡しとして用いるためのものであるが、一般に公開されていることや発行者が取引所を設営したこともあったことなどからビットコインと同様に取引の対象とされている。また、イーサもまた一般に公開され、広く活発に取引された結果、現在ではビットコインに次ぐ時価総額を誇る暗号通貨とされている。

「中央集権型/非中央集権型」と「換金型/非換金型」で分類

こうしたビットコイン等の暗号通貨は「仮想通貨」(virtual currency)と呼ばれることも多いが、国際的な政府間組織である金融活動作業部会(FATF:Financial Action Task Force)の定義によれば、仮想通貨とは、大まかにいえば、法定通貨(fiat currency)とは異なる単位によって表示される通貨類似の機能を有するデジタルな価値の表章であり、暗号通貨に限らず、ビットコイン以前から存在するものである。

 

FATFによると、仮想通貨は、その発行、利用ルール設定、台帳管理および償還を行う管理者(administrator)の存在する中央集権型(2)(centralised)と(暗号通貨のように)管理者が存在しない非中央集権型(3)(decentralised)に分類される。従前は仮想通貨には中央集権型仮想通貨しか存在しなかったが、ビットコインの登場により新たな非中央集権型仮想通貨という類型が登場したことになる。

 

仮想通貨はまた、法定通貨との交換が可能な換金型(convertible)と(ゲーム内資産のように)法定通貨との交換ができない非換金型(non-convertible)にも分類される(4)。非換金型は中央集権型のみが存在するものとされている。

 

以上の分類を整理したものが以下の図表であり、これに従えば、ビットコインなどの暗号通貨は、非中央集権型・換金型仮想通貨(decen-tralised convertible virtual currency)として位置づけられることになる。

 

【図表 FATFによる仮想通貨の分類】

なお、リップルのIOUにみられるように特定の者が一定額の法定通貨との交換を約束するものも含めて暗号通貨と呼ぶこともあるが、こういった法定通貨建てのデジタル通貨は「仮想通貨」ではなく換金型電子マネーの一種として位置づけられるべきものである。以下では、FATFのいう「仮想通貨」に分類されるもののみを暗号通貨と呼ぶこととする。

 

(1)日本語では「オルトコイン」とも呼ばれる。

(2)中央管理型、集中型のように訳すこともある。

(3)分散型と訳すこともある。

(4)実際にはゲーム内資産についても(違法ないし契約違反かはともかくとして)事実上、その売買、いわゆるリアル・マネー・トレーディング(RMT:Real Money Trading)が頻繁に行われる場合があることから、換金可能かそうでないかという区分には疑問がないわけではない。

本連載は、2016年7月15日刊行の書籍『FinTechビジネスと法 25講』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

FinTechビジネスと法 25講

FinTechビジネスと法 25講

有吉 尚哉,本柳 祐介,水島 淳,谷澤 進 編著

商事法務

西村あさひ法律事務所所属の弁護士が、「FinTechビジネス」のさまざまな分野ごとに概要を紹介しつつ、それらのビジネス遂行上に必要な法令の基礎知識・適用関係を、平成28年5月25日に成立した改正Fintech関連法も踏まえて解説…

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