おわりに
シニアへの教育機会の充実が重要、即時性・情報流通効果はZ世代に期待
本稿ではニッセイ基礎研究所の調査に基づき、消費者のサステナビリティに関わる意識や行動について考察した。その結果、「サステナビリティに関わる問題は他人事ではない」といったサステナビリティに対する危機意識を持つ消費者は4割を超える一方、「価格が安くても人権問題等のある製品は買わない」といった具体的な取り組みを実施している消費者は約2割にとどまっていた。
つまり、現在のところ、日本の消費者はサステナビリティに関わる意識は高まってきたが、行動は途上段階にあり、意識と行動には差がある様子がうかがえた。
この理由としては、意識を具体的な行動へ移すための取り組みに課題があること(サステナビリティに関わる意識を投影しやすい製品やサービスが未だ少ないこと、情報の受発信や教育機会など)、また、物価高で家計負担が増すなかではサステナビリティに関わる価値よりも品質や機能、費用対効果といった本来の製品価値が優先されがちであることなどがあげられる。
このほか、消費者と比べて企業の取組みを見る目のほうが厳しいこと(特に「お金」をかけても取り組むべきという視点)も特徴的であった。
このようななかで、現在の日本の消費者に向けた製品を考える場合、再生素材等を用いることで価格が高くなるようなものよりも、価格に影響を及ぼさない範囲で購入時から使用後までを含めた消費者行動のいずれかの段階で消費者にサステナビリティに関わる「手間」をかけることを求めるもの(パッケージレスや補修サービス、リサイクルなど)が受け入れられやすいだろう。
また、「手間」をかけることで製品や企業に対する消費者の愛着を高められる効果も期待できる。
属性別には、意識は、日ごろから消費生活への関心が高い女性やシニアで、あるいは経済的余裕のある高年収世帯ほど高い一方、行動は必ずしも意識の高さに比例しているわけではなく、組織や学校での教育機会の有無や情報感度の強さ、経済的余裕などが影響していた。
よって、正規雇用者の多い男性では女性と比べて行動がやや先行していたり、学校などで学ぶ機会に恵まれたデジタルネイティブの若者では情報発信やボランティア活動に積極的な傾向が見られた。
一方、比較的教育機会の少ないシニアでは具体的な取り組みへの戸惑いが大きいが意識自体は高いため、価格よりサステナビリティを優先して製品を購入するといった個人の日常の消費行動として取り組める行動については、若者以上に積極的な傾向も見られた。
また、意識面の項目と行動面の項目の支持率の差(意識の高さと行動の取組みのギャップ)を見ると、若者よりもシニアでひらいているために、目先の伸びしろという意味では年齢が高いほど今後の行動を期待しやすいとも考えられる。
以上より、日本の消費者のサステナビリティに関わる取り組みを底上げするためには、シニア層や非就業者などサステナビリティに関わる教育機会が不足している層への情報発信や教育機会を充実させることで、意識を行動へ移すための具体的な取り組み方法を示すことが重要である。
一方で、企業等が即時性のある好感度の向上や情報流通効果を期待する場合には、やはり情報発信力の高いZ世代などの若者への訴求が効果的だろう。前稿でも述べた通り、将来的には、すべての消費者にとってサステナビリティという観点が消費行動の土台となっていくのだろう。
しかし、未だ意識と行動に隔たりがある現在では、消費者の特徴を丁寧に捉えたうえで各層に適した情報を訴求することが肝要である。
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