サステナビリティに「お金より手間」をかけたい消費者心理
調査ではサステナビリティに関わる意識や行動について計27の設問を設定し、それぞれどう思うかを尋ねた。
その結果、意識面においては、20~74歳全体で、そう思う(「そう思う」+「ややそう思う」)との回答が最も多いのは「地球環境や社会の持続性(以下、サステナビリティ)に関わる問題は他人事ではない」(43.9%)であり、
次いで僅差で「サステナビリティにいますぐに取り組まないと手遅れになる」(42.8%)、「手間がかかっても、企業(などの組織)はサステナビリティを配慮(した行動を)すべきだ」(42.1%)、「社会の一員として何か社会のために役立ちたい」(41.0%)、「お金がかかっても、企業(などの組織)はサステナビリティを配慮(した行動を)すべきだ」(40.4%)と4割台で続く(図表(a))。
一方、そう思わない(「あまりそう思わない」+「そう思わない」)との回答が最も多いのは「他人がサステナビリティを配慮していないと気になる」(28.4%)であり、次いで「サステナビリティに積極的に取り組む企業で働きたい」(25.8%)、「時間的な余裕があれば、サステナビリティを意識したい」(20.7%)と2割台で続く。
なお、「他人がサステナビリティを配慮していないと気になる」(そう思う割合がそう思わない割合より▲7.9%)という他人について尋ねた項目や、「サステナビリティに積極的に取り組む企業で働きたい」(同▲7.3%)という対象が限定される項目では、そう思う割合がそう思わない割合を下回るが、その他の項目では、そう思う割合がそう思わない割合をそれぞれ1割以上、上回る。
つまり、意識面においては、いずれも支持率は半数を超えないものの非支持率は上回る項目が多く、日本の消費者においてサステナビリティに関わる意識が一定程度は醸成されている様子がうかがえる。
また、消費者と企業の取り組みに関わる意識を比べると、そう思う割合は、「お金がかかっても、企業/消費者はサステナビリティを配慮すべきだ」では、企業(40.4%)が消費者(30.9%、企業より▲9.5%pt)を約1割上回るが、「手間がかかっても、企業/消費者はサステナビリティを配慮すべきだ」では、企業(42.1%)と消費者(39.8%、企業より▲2.3%pt)は同程度である(図表2)。
このように、消費者では企業と比べて「お金」を費やすことに対する支持率が下がる理由には、(1)消費者は物価高で家計負担が増すなかでは「お金」をかけてサステナビリティに取り組むことは難しいが、「手間」はかけてもいいと考えていること、
また、(2)サステナビリティに関わる意識の醸成が成長段階にある(まだ成熟段階ではない)なかでは消費者自身よりも、社会へ与える影響が大きな企業を見る目のほうが厳しくなっている(あるいは期待が大きくなっている)ことなどが考えられる。
このようななかで、現段階で日本の消費者に向けた製品を考える場合、たとえば、再生素材等を用いることで価格が高くなるようなものよりも、パッケージレスや補修サービス、リサイクルなど、購入時から使用後までを含めた消費者行動のいずれかの段階で、消費者にサステナビリティに関わる「手間」をかけることを求める形が受け入れられやすいのではないだろうか。
また、「手間」をかけることで、製品や企業に対する愛着も高められるのではないか。
サステナビリティへの意識は高いが、行動には及んでいないワケ
行動面については、そう思う割合が最も高いのは「(ものを買う時は、)価格が安くても(生産や製造時に)人権問題等のある製品は買わない」(22.1%)であり、次いで僅差で「(日ごろ、自分の行動が、)サステナビリティ(に与える影響)を意識して行動している」(21.5%)、「(ものを買う時は、)価格が安くてもサステナビリティに影響のある製品は買わない」(21.1%)と2割台で続く(図表1(b))。
なお、行動面では意識面と比べて、そう思う割合が低く、いずれも、そう思わない割合を下回る。
そう思わない割合が最も高いのは「サステナビリティに関する情報を発信している」(52.9%)であり、次いで「学校や組織等でサステナビリティについて学ぶ機会がある(あった)」(47.3%)、「サステナビリティに関する情報を収集している」(47.3%)、「サステナビリティを意識してボランティア活動等をしている」(47.0%)、「サステナビリティについて家族や友人と話すことがある」(45.1%)と約半数を占めて続き、そう思う割合をそれぞれ3割以上、上回る。
なお、戸惑いや躊躇に関わる項目については、そう思う割合は「サステナビリティに(関わる行動に)興味はあるが(具体的に)何をしたらよいかわからない」(35.5%)、「サステナビリティに(関わる行動に)興味はあるがきっかけがない」(30.5%)、「サステナビリティに関わる問題(とは、どういうものか、)がよくわからない」(29.2%)と、それぞれ3割前後を占めて、そう思わない割合を上回る(図表1(c))。
つまり、現在、日本の消費者のサステナビリティに関わる意識は成長段階にあるが、関心はあっても具体的な行動に戸惑いがある消費者も目立ち、行動については途上段階にあるようだ。また、行動の非(未)実施率の高さは、製品購入と比べて、サステナビリティに関わる情報の受発信や教育機会の有無で目立ち、意識を具体的な行動へ移すための取り組みに課題がある様子がうかがえる。
また、「価格が安くても人権問題等のある製品は買わない」といった価格よりサステナビリティを優先する行動に注目すると、「価格が高くても(略)買う」という「お金」をかけてサステナビリティに取り組むことへの非支持率の高さが目立つ(3割超)。この理由には、前述の通り、物価高で家計負担が増していること、サステナビリティに関わる意識が未だ成熟段階にないことなどがあげられる。
ところで、冒頭で述べたように、前稿では価格よりサステナビリティを優先する消費者は1割に満たなかったが、本稿では約2割と前稿の2倍に上る。これは設問形式の違いによる影響と考えられる。
前稿では、日ごろのサステナビリティに関わる消費行動の実施状況について、30の選択肢から複数選択で回答を得る形式であったが、本稿では、それぞれの行動に対して、「そう思う」に加えて「ややそう思う」という、やや消極的な状況を含む選択肢も設定されていることで、幅を持った回答が得られているのだろう。
とはいえ、価格よりサステナビリティを優先する消費者は約2割であり、やはり少数派ではある。成長段階にある意識と途上段階にある行動とで差のある理由としては、前述の通り、意識を行動へ移すための取り組みに課題があり、たとえば、値ごろ感のある再生素材を利用した製品やサステナビリティに取り組めるサービスを含む製品など、意識を投影しやすい製品が少ないことも影響しているのだろう。
その結果、現在のところ、消費者が製品購入を考える際、サステナビリティに関わる価値よりも、品質や機能、費用対効果といった本来の製品価値を主眼に置くことになるのではないだろうか。よって、繰り返しになるが、価格に影響を及ぼさない範囲で、消費行動のいずれかの段階で、サステナビリティに関わる取り組みを促進できるような訴求方法が有意義といえる。
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