イギリスにおける給与所得者数は減少が続いている
10月17日、英国国家統計局(ONS)は雇用関連統計の一部を公表し、結果は以下の通りとなった。
・給与所得者数(※1)は前月(3013.39万人)から1.1万人減の3012.29万人となった(図表1)。増減数は前月(▲0.8万人)から減少幅が拡大し、市場予想(※2)(+0.3万人)を下回った。
【8月(23年6-8月の3ヵ月平均)】
・週平均賃金は、前年同期比8.1%で前月(8.5%)から低下、市場予想(8.3%)も下回った(図表2)。
※1:歳入関税庁(HRMC)の源泉徴収情報を利用した統計。直近データは約85%のデータから推計(22年7月から推計方法変更)。
※2:bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。
サービス業の求人数が減少…さらに賃金上昇率も低下傾向に
今回、当初予定の10月17日に公表された雇用関係統計は一部にとどまる。ONSは回答率の低下を受けて、最良の推計を行うために追加の時間が必要であるとして、失業率などの公表については24日に延期している。
17日に公表された統計は、求人数、給与所得者関連統計、賃金関連統計のみとなっているので、以下ではこれらのデータを確認する。
このうち、9月のデータとして公表されている求人数および給与所得者数を確認すると、求人数は23年7-9月の平均で98.8万件となり22年3-5月平均(130.2万件)をピークに減少傾向が続き(図表3)、2ヵ月連続で100万人を割り込んだ。
産業別には、事務サービス、専門サービス、医療といったサービス業の減少が目立った。ただし、単月求人数は9月に100.6万件となり8月の95.2万件から増加し、再び100万人を超えた(※3)。
給与所得者データでは、9月の給与所得者数(速報値)が前月差で▲1.1万人となった。また8月分のデータは改定されマイナス幅が拡大した(改定前▲0.1万人→改定後▲0.8万人)。その結果、給与所得者数は3ヵ月連続で累計2.4万人減少した。
なお、給与所得者の変動を流出・流入に分類すると、足もとでは流出増加よりも流入減少の方が目立っている(図表4)。
給与額(中央値)の伸び率は9月に前年同月比5.7%となった。8月のデータは改定により前年比7%台の高い伸び率となったが(改定前6.7%→改定後7.6%)、足もとで伸び率が大幅に鈍化したことになる(前掲図表1)。
8月までのデータ(労働力調査の一部)では、名目賃金が23年6-8月期の前年同期比で8.1%と前月(8.5%)から低下した。
一方、インフレ率が低下したことを受けて実質賃金の上昇率は1.3%と前月(1.2%)からやや上昇した(前掲図表2)。6-8月期にはNHS職員や公務員への一時金支払が賃金上昇率を押し上げた面があるが、ボーナスを除く定期賃金伸び率も前年同期比7.8%と高い(図表5)。
定期賃金伸び率はデータ公表以来最も高い伸び率を記録した前月(7.9%)からやや低下したものの、低下幅はわずかにとどまっている。また、実質ベースの定期賃金上昇率も前年同期比1.1%と前月(0.6%)から上昇している。
なお、公的部門の定期賃金伸び率は6.8%と、民間部門の伸び率よりは低いもののデータ公表以来最も高い伸び率を更新している(図表6)。
※3:3ヵ月平均のデータは季節調整値だが、単月データは未季節調整値のため季節性が除去されていないため留意が必要。
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