日露戦争前夜の国際関係
日露戦争前夜の国際関係を整理しましょう。列強間には、日英同盟、露仏同盟、三国同盟が存在します。日露で戦争が始まって激化すれば、同盟国のイギリスとフランスも参戦※。つまり日英VS露仏という大戦争になってしまいます。
※ 日英同盟・露仏同盟の規定で、参戦が義務づけられている
英仏露が共倒れになった場合、一番得をする国はドイツです。ライバルが勝手につぶし合って、まさに「棚ボタ」!
ヴィルヘルム2世にとっては最高の展開ですよ。逆にドイツの宿敵フランスとしては絶対に避けたい状況だから、日露の戦争に関わりたくない。
ここで選択を迫られたのがイギリスです。上述したように、イギリスはロシアこそがライバルだと長らく考えてきたわけですが、ドイツのことも気になる。「むしろ注意すべき相手は、新興のドイツなんじゃないか?」という意見が出てきたんですね。
そして、イギリスは決断。「大英帝国が警戒すべきは、ドイツである」と。まとめると、[図表6]のような感じです。
こういった事情で日露戦争の開戦直後に英仏協商が結ばれました※。「日露の戦いに英仏は加わらないから2カ国だけでやってね(俺らはドイツをマークするから)」という意図です。
※ ファショダ事件で英仏関係が改善されていたことも背景
ドイツをライバル認定したイギリスですが、当然ロシアもつぶしたいわけで、単独でロシアと戦う日本を全面支援。なんとか日本が勝利し、イギリスにとっては最高の結果になった一方、敗北したロシアは朝鮮から手を退きました。
一連の日露対立で“激おこ”のヴィルヘルム2世
一連の日露対立の結果、一番不愉快な思いをしたのは間違いなくドイツのヴィルヘルム2世です。日露戦争で英仏露が共倒れになれ~♪ と期待したのに英仏は参戦せず(怒)。
そして日露戦争ではロシアがまさかの敗戦。極東から撤退したロシアは、南下政策の矛先をまたバルカン半島に向けたのです(怒怒)。
平尾 雅規
河合塾
世界史科講師
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