【世界史】19世紀後半、覇権国イギリスに迫る急成長のドイツ…立役者の“鉄血宰相”ビスマルクが国内で批判されていたワケ

【世界史】19世紀後半、覇権国イギリスに迫る急成長のドイツ…立役者の“鉄血宰相”ビスマルクが国内で批判されていたワケ
(※写真はイメージです/PIXTA)

「ドイツの統一は雄弁や多数決によってではなく、鉄と血、すなわち兵器と兵力によってのみ達成される」と主張したことから“鉄血宰相”と呼ばれたビスマルク。強権・武力主義のイメージがあるビスマルクですが、彼には意外な側面がありました。『大人の教養 面白いほどわかる世界史』(KADOKAWA)の著者である河合塾講師の平尾雅規氏が、学校では教えてくれない「歴史の裏側」を解説します。

日露戦争前夜の国際関係

日露戦争前夜の国際関係を整理しましょう。列強間には、日英同盟、露仏同盟、三国同盟が存在します。日露で戦争が始まって激化すれば、同盟国のイギリスとフランスも参戦。つまり日英VS露仏という大戦争になってしまいます。

※ 日英同盟・露仏同盟の規定で、参戦が義務づけられている

 

英仏露が共倒れになった場合、一番得をする国はドイツです。ライバルが勝手につぶし合って、まさに「棚ボタ」!

 

出所:『大人の教養 面白いほどわかる世界史』(KADOKAWA)より抜粋 ※図中右側、正しくは「ドイツ」「イタリア」「オーストリア」。
[図表5]日英同盟、露仏同盟、三国同盟の関係 出所:『大人の教養 面白いほどわかる世界史』(KADOKAWA)より抜粋
※図中右側、正しくは「ドイツ」「イタリア」「オーストリア」。

 

ヴィルヘルム2世にとっては最高の展開ですよ。逆にドイツの宿敵フランスとしては絶対に避けたい状況だから、日露の戦争に関わりたくない。

 

ここで選択を迫られたのがイギリスです。上述したように、イギリスはロシアこそがライバルだと長らく考えてきたわけですが、ドイツのことも気になる。「むしろ注意すべき相手は、新興のドイツなんじゃないか?」という意見が出てきたんですね。

 

そして、イギリスは決断。「大英帝国が警戒すべきは、ドイツである」と。まとめると、[図表6]のような感じです。

 

出所:『大人の教養 面白いほどわかる世界史』(KADOKAWA)より抜粋
[図表6]イギリスのライバルは… 出所:『大人の教養 面白いほどわかる世界史』(KADOKAWA)より抜粋

 

こういった事情で日露戦争の開戦直後に英仏協商が結ばれました。「日露の戦いに英仏は加わらないから2カ国だけでやってね(俺らはドイツをマークするから)」という意図です。

※ ファショダ事件で英仏関係が改善されていたことも背景

 

ドイツをライバル認定したイギリスですが、当然ロシアもつぶしたいわけで、単独でロシアと戦う日本を全面支援。なんとか日本が勝利し、イギリスにとっては最高の結果になった一方、敗北したロシアは朝鮮から手を退きました。

 

一連の日露対立で“激おこ”のヴィルヘルム2世

一連の日露対立の結果、一番不愉快な思いをしたのは間違いなくドイツのヴィルヘルム2世です。日露戦争で英仏露が共倒れになれ~♪ と期待したのに英仏は参戦せず(怒)。

 

そして日露戦争ではロシアがまさかの敗戦。極東から撤退したロシアは、南下政策の矛先をまたバルカン半島に向けたのです(怒怒)。

 

 

平尾 雅規

河合塾

世界史科講師

 

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※本連載は、平尾雅規氏による著書『大人の教養 面白いほどわかる世界史』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。

大人の教養 面白いほどわかる世界史

大人の教養 面白いほどわかる世界史

平尾 雅規

KADOKAWA

「なぜ、戦争や紛争が絶えないのか?」「なぜ、国によって考え方・風習・生活が違うのか?」 ……答えは高校時代に習った世界史の授業のなかにあったはずなのに、大人になったいま、その答えがすっぽりと抜け落ちていません…

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