相続登記の依頼料「〇〇円~」って実際どれくらい?
いよいよ来年2024年4月から相続登記を一定期間内にしないと過料(罰金のようなもの)の課される改正法が施行されますが、手続きを行うにあたって、いったいどのくらいのコストがかかるのか気になる人も多いと思います。
当事務所ホームページのデータを解析しても、費用のページを見ている人は多く、筆者自身も依頼者側の立場になるときにはやはり費用は気になります。
目に見えて手に取れる商品とは異なり、手続きの代理費用になるので、司法書士事務所のホームページ等で確認しても、「相続登記〇〇円~」といった形で記載されていて、実際いくらかかるのか分からないのが現状です。
そこで、今回は相続登記にはどのくらいの費用がかかるのかを解説していきます。
自力でやっても依頼しても「登録免許税等の実費」はかかる
まず、前提として相続登記にかかる費用ですが、司法書士に依頼した場合は「司法書士報酬+登録免許税等の実費」を合算した金額がかかります。
「司法書士報酬」の部分に関しては、司法書士に支払う報酬になるので、自分で手続きした場合にはかかりません。
「登録免許税等の実費」の部分に関しては、自分自身で手続きをしても司法書士に依頼しても同様にかかる費用になります。
ですので、相続登記の費用として自分でやった場合と司法書士に依頼した場合で差が出るのは「司法書士報酬」の部分になります。まずはここを理解してください。
「登録免許税等の実費」とは?
自分で手続きをしても発生する「登録免許税等の実費」には、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。
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①登録免許税
相続登記を申請する際に、納付する税金になります。登記申請書に収入印紙を貼付する方法が一般的です。登録免許税の金額は、不動産の固定資産税評価額に0.4%を乗じた金額になります。たとえば、評価額1,000万円の不動産であれば登録免許税は4万円ということになります。
②戸籍(除籍・改製原)謄本、住民票等の公的書類
相続人が誰であるかを証明するため、相続登記の申請書に戸籍謄本等の添付が必要です。他にも住民票や印鑑証明書が必要になることもあるのでこれらの書類を取得しなければなりません。戸籍謄本は1通あたり450円、除籍・改製原謄本は1通あたり750円です。住民票や印鑑証明書は1通あたり300円ほどになります。
③郵送費・交通費
書類の取得実費以外にも交通費や郵送費などもかかりますので、これらの金額も実費として必要なものになります。
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代表的なものを列挙しましたが、実費の金額については不動産の価格や個数、相続人の人数等でまったく違うものになります。
よく、電話などで「相続登記はいくらかかりますか?」と質問されるのですが、不動産の価格や規模の違いで数万円で済むこともあれば、数十万円以上になることもあるので一概にお答えすることができないのです。
ただし、繰り返しになりますが、実費については自分で手続きしても変わらず発生する費用です。ここは、誰がどのように手続きしても原則として差が出る部分ではありません。
実費以外にかかる「司法書士報酬」はいくらくらい?
次に、司法書士報酬について解説します。司法書士事務所のホームページなどに記載されている〇〇円~といった金額はこの司法書士報酬の部分です。
以下、日本司法書士連合会が会員である司法書士に取ったアンケートデータがあるので、このデータと司法書士事務所経営者である筆者の相場感覚を併せて解説していきます。
【図表】は、土地建物(評価額の合計1,000万円)、相続人が3名(たとえば、配偶者1名と子2名)の一般的に多いパターンの相続登記の報酬金額のデータです。
筆者は東京都町田市の司法書士事務所ですので、関東地区の部分を見てみると、報酬が低額帯で約4万円、高額帯で約10万円となっています。低額帯と高額帯で倍以上の差がありますね。
過去、司法書士報酬は法定されていたのでどこの事務所に依頼しても原則変わらないものでした。現在は事務所によって報酬は自由化されているので、このように金額に差が出ることになっています。
倍以上の金額差の理由については、まず地域差が考えられます。東京や神奈川といった人口の多い地域と北関東の人口の少ない地域では、テナント費用や人件費など事務所の維持コストがまったく異なります。データは関東地区という大まかな分類になっているので、都会と田舎が一緒くたになっています。
また、何をどこまでやるのかということによっても費用差が出ます。アンケートデータの前提条件以外の事務を行う場合にも司法書士報酬に違いが出ますので、こういった提供するサービスの内容が一律ではないことも価格差が出る理由になります。
司法書士に依頼した場合の「相続登記手続き」の中身
司法書士の提供するサービスの内容によって費用に違いが出るとして、そもそも相続登記手続きの中身としてどういった事務を行うのでしょうか。ざっくり4項目に分けることができます。
①相続人調査・戸籍収集
戸籍(除籍・改製原)謄本を集めて内容を確認して相続人を調査します。他にも相続登記に必要な公文書を収集します。この部分を依頼者に行ってもらう場合や司法書士が代行する場合もあります。
②物件調査
相続登記の対象物件の調査をします。現地に行って確認することはほとんどありませんが、私道持分やマンションの共用部分など相続登記の対象物件に漏れはないかなど遺産調査を含んだ事務手続きになります。
③遺産分割協議書の作成
相続人で話し合った内容に基づいて不動産の分け方などを記した遺産分割協議書を作成したり、法律的な交通整理をします。
④相続登記手続き(申請書作成、申請代理、回収)
相続登記の申請書や添付書類の作成、法務局への提出、登録免許税の納付、発行された権利証の回収などを行います。
なお、日本司法書士連合会実施のアンケート結果で関東地方では約4~10万円の報酬ということでしたが、相続登記に必要な上記①~④までを司法書士事務所が支援・代理して行った場合で、同条件で東京と神奈川エリアであれば「8~12万円くらい」の事務所が多いでしょう。もちろん、東京・神奈川でもこの価格帯より低かったり高かったりする事務所もあるので、目安として参考にしてください。
「すでに相続が発生している人」も義務化の対象。早めの準備を
このように、司法書士事務所のホームページで報酬が「〇〇円~」といった記載になっているのは前提条件の違いで、司法書士報酬や実費に変動があるため固定の金額がどうしても記載できないことが理由なのです。正確な費用を知るためには一度司法書士事務所に見積を出してもらうとよいでしょう。
また、複雑な相続登記では申請の仕方によって登録免許税等の実費を低く抑えることができる場合もあるので、そういった場合もプロに依頼するメリットは大きいでしょう。
相続登記の義務化が迫っているので、まだ手続きをしていない人は早めに準備を進めておきましょう。
佐伯 知哉
司法書士法人さえき事務所 所長
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