Xフォロワー24万人超・元陸上自衛官、「あなたは国のために戦えますか?」と聞かれたら〈“いいえ”と答えて当然〉だと思う深いワケ

Xフォロワー24万人超・元陸上自衛官、「あなたは国のために戦えますか?」と聞かれたら〈“いいえ”と答えて当然〉だと思う深いワケ
(※写真はイメージです/PIXTA)

公式X(旧Twitter)で日々ライフハックを発信し、フォロワー24万人超を誇る元陸上自衛官エッセイスト・ぱやぱやくん氏。ぱやぱやくん氏は、陸上自衛隊で学んできたさまざまな教えの中には、退職後に「あの教えはとても素晴らしいものだったな」と心底実感することが数多くあるといいます。ぱやぱやくん氏の著書『「もう歩けない」からが始まり 自衛隊が教えてくれた「しんどい日常」を生きぬくコツ』(育鵬社)より一部を抜粋し、見ていきましょう。

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軍人は何のために戦っているのか?

軍隊とは国防の基盤であり、軍人は、政府からの命令があれば「死ぬ気で戦う」というイメージがあると思いますが、実はそうではありません。

 

軍人とは、時の政権や資本家のために戦うのではなく、自分たちの文化・家族・誇りを守るために戦うものです。政権が頼りなく、国家指導者に対する反発が強い場合や、「戦争の意義がわからない」という場合は、軍隊は戦わずに敗走し、あっという間に国家が転覆することがあります。

 

たとえば、第一次世界大戦において、ドイツ帝国は国内がほぼドイツ人だったので戦う意欲も目的も明確でしたが、同盟国のオーストリア=ハンガリー帝国は複雑な多民族だったため、「何のために戦争をやるのか?」「なぜ、国のために戦うのか?」「そもそも兵士に公用語が通じない」などと問題だらけで、どちらかというと開戦当初はドイツの足を引っ張ってしまったという歴史があります。

 

また現代では、サダム・フセイン政権のイラク軍が該当します。2003年に勃発したイラク戦争で、イラク軍は多国籍軍になす術もなく敗退しましたが、これは「兵器の性能」や「戦術の差」だけではなく、「そもそもイラク軍に戦う気がなかった」という要因も大きかったのです。

 

イラク戦争では、圧倒的な軍事力を持つ多国籍軍に航空優勢を取られ、救いようのない不利な状況に加え、国内で恐怖政治を行い、無謀な戦争を繰り返すフセイン政権のために戦おうという軍人は少なく、撃破した戦車を調べても、「遺体がなかった」というケースが多かったそうです。「戦う価値がない」と軍人が思うと、どんなに兵器がそろっていても戦わなくなるのです。「こんな腐った政府は早く倒れてしまえ」と多くの国民が思っているのに、死ぬ気で戦うわけがないのです。

 

ただ、前に述べた通り、軍人は「自分たちの文化」や「民族としての誇り」を守るために戦います。イラクを例にすると、フセイン政権が倒れた後に、イラクの人々は、「これで国が良くなる」と思いました。しかし、アメリカ占領後、電力・水道・ガスなどのインフラは、フセイン政権のときよりも悪くなり、アメリカによる介入が強くなったため、元イラク軍人が武装勢力となり、泥沼化したという見方もあります。

 

現在、ロシア軍と戦っているウクライナ軍も、指導者であるゼレンスキー大統領とその政権のために戦っているのではなく、自分たちの家族や土地、文化をロシアに支配されたくないから命をかけて戦っているのだと私は思います。

他国から侵略を受けたとき、あなたはどうする?

日本のメディアはよく、「あなたは国のために戦えますか?」というアンケートを若者に取っています。しかし、これは質問としてよくないと思います。あまりにも漠然としています。人間には「死にたくない」という本能があるので、「いいえ」と答えて当たり前です。

 

私ならこのように質問してみたいです。

 

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【質問】他国から侵略を受けたとき、二つの選択肢があります。あなたはどちらを選びますか。

 

A. 自分たちの大切な人や文化、生活を守るために武器を持って戦う。

B. 戦わない。自分たちの大切な人や文化、生活が失われても抵抗しない。

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具合が悪くなりそう質問ですが、侵略されるということは、すべての決定を占領国に委ね、そこにどんな不条理があっても受け入れるしか選択肢がなくなるということです。資産をすべて没収され、車両の運転も禁止、家族と離ればなれになり、先祖代々の墓をほじくり返され、日本語は使用制限がかかり、聞いたこともない僻地に居住を命じられ、農場や工場で過酷な労働をさせられる可能性があります。

 

日本が他国の侵略を受け、政府が武力に倒れ、侵略国が、「みんな、戦わずに降伏してくれてありがとうね。日本政府はもうないけど、僕たちがもっといい国にするよ」と宣言し、より良くなる保証などどこにもありません。そもそも、そんな優しくて温かい国ならば、最初から日本に武力侵攻してこないでしょう。

 

もちろん、Aを選択すれば、相手を殺さなければなりませんし、自分が死ぬかもしれません。「死ぬ」ということは恐怖ですが、「心を殺しながら生きる」という生活は絶望です。選択肢としてはどちらも最悪ですが、よく考えたうえで自分が少しでもマシだと思う選択肢を選ぶしかありません。

 

もし、日本政府が恐怖政治をして国民を虐げながら、政治家が腐敗して私利私欲を貪っていたら、他国に倒してもらった方がいいかもしれません。しかし、侵略国と日本とを比べて、「今の日本政府の方が全然マシ」と思うなら戦うしかないでしょう。これが「命をかけて戦う」ということの本質だと私は考えています。

「愛国心」や「愛国者」という言葉には政治的な響きを感じるが

自衛隊では、「使命感」の一つに「先祖より守り抜いてきた祖国を次の世代に受け継ぐこと」があると教えることがあります。おそらく一般の人にはあまりピンと来ないでしょうが、時代をさかのぼって、鎌倉時代に元が襲来したとき、鎌倉武士が元軍と北九州で戦わなければ、現在、日本という国は存在せず、中国領の島があるだけになったかもしれません。ペリー来航時に日本が荒れ果てた国家だったら、きっと、アメリカの植民地になっていたでしょう。

 

この世界には、国を持つことのできない人々が大勢います。クルド人は世界に4000万人くらい存在すると言われていますが、さまざまな事情により、現在に至るまで自分たちの国を持つことができません。祖先から受け継いだ、文化、伝統、土地を守り抜くということは、限られた民族しか享受しえない幸せなのです。

 

日本では「愛国心」や「愛国者」という言葉には政治的な響きがありますが、英作家のジョージ・オーウェルは、愛国心について次のように表現しています。

 

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「ナショナリズムと愛国心ははっきり違うのだ。二つの言葉はふつうきわめてあいまいに使われているから、どんな定義を下してみても異論が出るだろうか、(中略)わたしが『愛国心』と呼ぶのは、特定の場所と特定の生活様式にたいする献身的愛情であって、その場所や生活様式こそ世界一だと信じてはいるが、それを他人にまで押しつけようとは考えないものである」

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つまり、オーウェルの意見では、愛国者とは保守・リベラルなどの政治思想は関係なく、生まれ育った土地の川や自分の国の文化が好きならば愛国者だといえます。そして、「愛国心」と排他的な「ナショナリズム」は分けて考える必要があるのです。

「自分の大切なもののために戦う」感情こそが大切ではないか

戦中の日本軍の将兵は、「お国のために」を合言葉に戦っていました。作家で従軍経験のある伊藤圭一氏は、このように述べています。

 

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「兵隊たちは、つねに『お国のため』という合言葉を信条として、非条理な軍隊内務生活に耐え、また過酷な戦場を、生き、戦ったのである。『天皇のため』という、もっともらしい押しつけの修飾語は、兵隊は好まなかった。(中略)『お国のため』―という言葉には、覚悟と諦観が同時に存在し、また、その言葉の裏には『おふくろのため』『好きな女のため』という、兵隊各自の解釈による思いがかくされていたのである」

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この「自分の大切なもののために戦う」感情こそが大切だと私は思っています。

 

あなたが自分の家族、生まれ育った土地の自然、先祖代々の土地やお墓、日本語の好きな詩があり、それをずっと守っていきたいと考えるのであれば、それなりの愛国者ではないでしょうか。

 

 

ぱやぱやくん

防衛大学校卒の元陸上自衛官。退職後は会社員を経て、現在はエッセイストとして活躍中。名前の由来は、自衛隊時代に教官からよく言われた「お前らはいつもぱやぱやして!」という叱咤激励に由来する。著書に『今日も小原台で叫んでいます 残されたジャングル、防衛大学校』『陸上自衛隊ますらお日記』(どちらもKADOKAWA)、『飯は食えるときに食っておく 寝れるときは寝る』(育鵬社)などがある。

 

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※本連載は、ぱやぱやくん氏の著書『「もう歩けない」からが始まり 自衛隊が教えてくれた「しんどい日常」を生きぬくコツ』(育鵬社)より一部を抜粋・再編集したものです。

「もう歩けない」からが始まり 自衛隊が教えてくれた「しんどい日常」を生きぬくコツ

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ぱやぱやくん

育鵬社

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