残業が楽しくなってきた…は実は「潰れる寸前」かもしれない。元自衛官が教える「身体が限界に近い」サイン

残業が楽しくなってきた…は実は「潰れる寸前」かもしれない。元自衛官が教える「身体が限界に近い」サイン
(※写真はイメージです/PIXTA)

公式X(旧Twitter)で日々ライフハックを発信し、フォロワー24万人超を誇る元陸上自衛官エッセイスト・ぱやぱやくん氏。ぱやぱやくん氏は、陸上自衛隊で学んできたさまざまな教えの中には、退職後に「あの教えはとても素晴らしいものだったな」と心底実感することが数多くあるといいます。ぱやぱやくん氏の著書『「もう歩けない」からが始まり 自衛隊が教えてくれた「しんどい日常」を生きぬくコツ』(育鵬社)より一部を抜粋し、日常生活に役立つ知識を紹介します。

人は「肉体の限界」を超えると現実を正しく認識できなくなる

陸上自衛隊では、厳しい訓練をくぐり抜け、すぐれた技術と不屈の精神を持ったレンジャー隊員がいます。このレンジャー訓練は、かなり過酷です。食料や水の制限をし、文字通り不眠不休で山中を活動します。

 

レンジャー隊員になるための訓練を受ける隊員のことを「学生」と呼びます。学生は訓練中、疲労や睡眠不足から幻聴や幻覚が聞こえたり見えたりするようになる場合があります。

 

「道に弁当が落ちている」

「木にバナナが実っている」

 

と現実ではないものを見たという話がよくあります。

 

「仲間から呼ばれた方向に歩いて行ったら崖だった」などの危険なケースも中にはあります。

 

今、自分が見えているものが本物なのか、幻覚なのかがわからなくなるため、レンジャー学生は、「これは本物か?」と自分の感性を疑い、一つひとつ確認する作業を行います。私は次のような話を聞いたことがあります。

 

◎山中におにぎりが落ちている → 山中に落ちているわけない

◎自分のバディが遠くで呼んでいる → バディは隣にいるから幻聴

◎道でバーベキューをしているグループがいる → 近づいたら消えた

◎教官がポカリを持ってきた → 持っているのはライトだった

 

日常生活ではここまでの幻覚・幻聴を経験することはまずないでしょう。しかし、山中で遭難した人は、同じような経験をします。遭難者の手記を見ると、「会社の人が自分を助けに来て呼んでいる」という幻聴を聞いたり、「崖の下にコーラが落ちている」という幻覚を見たという話がよくあります。

 

自分の肉体を超えて活動し、睡眠時間が短いと、人は幻覚・幻聴を経験します。場合によっては、その幻が自分の命を奪うことさえあります。

 

もし、あなたが極限状態にあるならば、「見えているもの、聞こえているものを疑う」というアクションをとった方がいいでしょう。結果として命を救うことになります。

「まだ大丈夫」と「もう限界」の見極めが大切

「『もう歩けない』からが始まり」という考え方は、辛いときに有効ですが、肉体的に限界を超えているのに、「ここからがスタート」と考えていると、倒れてしまいます。

 

ネガティブな気持ちや弱気な心は、「考え方」である程度カバーできますが、限界を超えると身体に異変が起こってきます。

 

人生は困難の連続であるため、辛いときに頑張ることが大切ですが、限界を見極める必要があります。あまりにも我慢強いと、限界を超えて身体を壊してしまうケースがあります。

 

自衛官という職業も、「まだ大丈夫」と「もう限界」の見極めが大切です。実際に、普段、不平不満を言わない優秀な隊員が、ある日、無理がたたって身体に異変が出て、休職するようなパターンは珍しくありません。身体に異変が出てきたときは、「もうやめろ」のサインだと思ってください。

これが出てきたら要注意…5つの「限界に近いサイン」

ここで、私が考えるいくつかの「限界に近いサイン」を紹介します。

 

【サイン①厳しい状態が楽しくなる】

私が見てきた中で、潰れてしまう人で多かったケースは、厳しい状態を乗り切るために「ハイ」になっている状態です。

 

「仕事こそが我が喜び」

「国のために奉仕できて幸せ」

「残業を苦しいと思ったことがない」

「もっと厳しくて激しい訓練がしたい」

 

といった超ポジティブな発言が口グセの隊員を幹部の中で何人か見ました。

 

しかし、彼らは、ある種、働くことで脳内麻薬が放出されてハイになっている状態なのです。一種の錯綜状態になっているため、「もっとできる」「まだまだやれる」と思って仕事量を増やしすぎると、ある日ガツンと反動で潰れてしまうことが多いのです。

 

この手のタイプは、周りがアドバイスをして業務量を調整してあげないと、本当に潰れるまで働いてしまうので注意しましょう。

 

【サイン②感情の振れ幅が激しい】

落ち込んでいたと思っていたら、急に明るくなったり、そして、また落ち込んだりしている人も要注意です。こうした人は、「泣きながら笑っている」「怒りながら笑っている」といった変わった姿を見せることもあります。

 

【サイン③生活がおろそかになる】

今までは問題なかったのに、ある日、「少しだらしなくなったな」という印象を持つようになった人がいたら、要注意です。まだ仕事に影響が出ていなかったとしても、すでに生活がおろそかになっているからです。部屋が荒れている、カバンの中が汚い、経理処理すべき請求書や領収書がたまっている、ワイシャツの襟が汚れている、などがサインです。

 

【サイン④人と話すのが怖くなる】

「自分は役に立たない」「情けない」と考え、人と会話をすることを恐れるようになる人もいます。人と目を合わせられない、報告が怖い、という症状が出てきたら、限界が近いサインです。

 

【サイン⑤食欲がまったくわかない】

ストレスが強くなると、交感神経がたかぶり、食欲がなくなります。「何も食べたくない」という日が何日も続き、食事が適当になっていくと、体力が低下し、加速度的にメンタル不調になります。

 

 

他にも、意味もなく涙が出る、夜に眠れない、朝起きることができない、手足がしびれる、めまいがする、偏頭痛がする、などの症状が起きることがあります。ここまで来ると、身体が「休め」と悲鳴を上げていると考えた方がいいでしょう。

 

 

ぱやぱやくん

防衛大学校卒の元陸上自衛官。退職後は会社員を経て、現在はエッセイストとして活躍中。名前の由来は、自衛隊時代に教官からよく言われた「お前らはいつもぱやぱやして!」という叱咤激励に由来する。著書に『今日も小原台で叫んでいます 残されたジャングル、防衛大学校』『陸上自衛隊ますらお日記』(どちらもKADOKAWA)、『飯は食えるときに食っておく 寝れるときは寝る』(育鵬社)などがある。

 

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※本連載は、ぱやぱやくん氏の著書『「もう歩けない」からが始まり 自衛隊が教えてくれた「しんどい日常」を生きぬくコツ』(育鵬社)より一部を抜粋・再編集したものです。

「もう歩けない」からが始まり 自衛隊が教えてくれた「しんどい日常」を生きぬくコツ

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ぱやぱやくん

育鵬社

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