写真提供:坪井当貴建築設計事務所

知られざる「日本の住宅とその性能」について焦点をあてる本連載。今回のテーマは、2024年4月から始まる「賃貸住宅も対象とした省エネ性能の表示制度」。日本の住宅マーケットを変え、今後の住宅の資産価値にも影響を及ぼす可能性があるといいます。みていきましょう。

高断熱賃貸住宅を望む人とのマッチングが容易になる

上述の筆者が実施したアンケート調査項目の一つに、「仮に住み替える場合に、一般的な性能の賃貸住宅(断熱等級4)と高断熱賃貸住宅(断熱等級6:断熱性能が2倍程度)があったとします。高断熱住宅に対して、冷暖房光熱費削減額にさらにどの程度家賃を上乗せしても構わないか?」という趣旨の設問を設けました。

 

この設問に対して、冷暖房光熱費の削減額に加えて、さらに5%以上の家賃を上乗せしてもよいと回答した人は、合計で43%にも上りました。冷暖房光熱費削減という直接的な経済メリット以外の「健康」、「快適」といったメリットに対して対価を支払う意欲のある人が意外に多いということです。

 

このうち、15%程度上乗せしてもいいという人は4%、20%以上上乗せしてもいいという人は5%でした。15%以上の上乗せ意欲を持つ人は、合計で9%ですから、比率としては決して高くありません。ですが、現状では、高断熱賃貸住宅の供給は極めて限られています。このことを鑑みると、高断熱賃貸住宅に住みたい人と、入居募集中の高断熱賃貸住宅のマッチングをきちんと行うことができれば、高断熱賃貸住宅の事業性が高まることは間違いありません。

 

いままでは、この点が、高断熱賃貸住宅の普及促進に向けての大きな課題でした。賃貸住宅の断熱性能等の情報が提供されていなかったため、ごく一部の高断熱賃貸住宅を探している人が、供給が極めて限られるそのような住宅に巡り合うことは、とても難しいことでした。ところが、SUUMO等の不動産情報サイトで高断熱賃貸住宅を検索することができるようになれば、この問題は一気に解消します。

 

これらのことを逆に捉えると、今後さらに空室率が高まる中で、性能の劣る賃貸住宅の空室リスクが今後急速に高まる可能性があるということでもあります。

 

既存の賃貸住宅の所有者の方々も性能向上リノベーション等の実施も検討するべきかもしれません。既存住宅の性能向上に対しては、国も自治体もかなり手厚い補助制度を用意しているので、ぜひ検討してみることをお勧めします。

 

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