寄付金について経済的合理性が認められた裁判事例
(平11.6.30裁決、裁決事例集No.57357頁)※下線は筆者
「法人がその有する債権を放棄し又は他人の債務を負担したような場合には、それは、一般的には経済的な利益の無償の供与に当たることとなるから、これらの行為により生じた損失の額は、寄付金の額に該当するというべきである。
しかし、法人がこれらの行為をした場合でも、それが例えば、その法人自体の経営危機を回避するためにやむを得ず行ったものであること等、そのことについて相当な理由があると認められる場合には、その行為により生じた損失の額は、寄付金の額に該当しないと解されている。
また、法人税基本通達9-4-1《子会社等を整理する場合の損失負担等》(以下「本件通達」という。)は、法人が上記のような行為をした場合において、その行為をしたことにつきやむを得ないと認められる相当な理由があるときは、その行為により生じた損失の額は、寄付金の額に該当しないものとして取り扱う旨を定めたものであり、当審判所においても、本件通達は合理的な取り扱いであり、相当なものと認められる。
なお、本件通達にいう子会社等には、当該法人と資本関係を有する者のほか、取引関係、人的関係、資金関係等において事業関連性を有する者が含まれることとされている。
ニ そこで、本件売掛金の減額処理が寄付金に該当するか否かについて検討する。
(イ)原処分関係資料及び請求人から提出された資料並びに当審判所の調査によれば、次の事実が認められる。
A 石油業界における石油卸売業者の特約店は、縦の取引で系列以外の商品は扱えない仕組みとなっているところ、特約店の営業状態が悪化すれば将来、請求人に負担が掛かることは社会通念上当然のことであり、業界新聞等からも価格競争が一段と激化し、石油業界の経営は、今後一段と厳しく石油スタンドの統廃合は必然的な状況にあることは十分うかがえること。
B 本件特約店の平成9年3月を含む事業年度の所得金額は、いずれも欠損金額であること。
C K社、L社及びM社については、売上金額、所得金額とも毎期減少しており、また、経営者の経営意欲も喪失し、今後、業績が上がることは見込めない状況にあり、事業を継続したとしても、赤字の累積、請求人の売掛債権の焦げつきが予想されること。
D N社については、経営環境が厳しい中、経営者の健康上の理由と後継者不在のため廃業予定であったところ、立地条件等からみて将来性を見込み、請求人の従業員が代表者を引受け事業を継続したこと。(→筆者注:稟議書、役員ミーティング議事録等が必要)
E 本件特約店の廃業及び代表者交替については、請求人の要請と廃業、経営改善策の条件等が合意に達したので行ったものであること。
F 本件特約店の廃業及び代表者の交替に伴う支援に当たっては、役員会に諮られ、その議事録も存在すること。
G 本件売掛金の減額処理の決定は、当事者間でそれぞれ経済的折衝を経て確定したものであり、請求人が本件特約店の経営支配権を有するものではなく、かつ、本件特約店は資本系列等特殊な関係にある取引先ではないこと。
H 本件売掛金の減額処理は、一律に基準を設けて算定しているものではなく、本件特約店ごとに個々に算定したものであること。
I 申請書に基づき支援を行った本件特約店以外の特約店に対しては、販売促進費として処理し、当該販売促進費の支払は、振込の方法によっていること。
J 申請書に基づき支援を行った本件特約店以外の特約店に対しては、「経営改善支援先改善状況進捗報告」を2か月ごとに徴し、改善状況をチェックしながら、請求人の経営判断の資料に資していること。(※下線筆者)
有効となる証拠を集めるポイント
上記A~JにおいてBCDFHIJに代表される各書面が登場しますが、これを日常的に作成することで証拠力は高まります。これらの累積が経済的合理性あった各取引であったことを疎明していくのです。
(ロ)前記(イ)の事実から、請求人が将来の石油業界の経済環境等を踏まえ、本件特約店側の経営事情というより、請求人における総合的経営戦略として、不採算特約店に対しては、廃業等を積極的に誘導し、廃業等の条件が合意に達した本件特約店については、廃業資金、経営改善資金として支援したことは、むしろ、現状打開策の一環として、経営遂行上、真にやむを得ない費用であり、客観的にみて経済的合理性を有し、社会通念上も妥当視される処理と認められる。
また、請求人は、支援の方法として売掛金の減額処理の方法を採ったもので、実質的には債権放棄と認められ、その債権放棄をするに至ったことについては、前記(イ)の事実から債権放棄をしなければ、今後より大きな損失を蒙ることが予想され、債権放棄したことによって請求人にメリットがあると判断できる。
なお、本件売掛金の減額処理について、相当の理由があるのか否か、数値的な比較だけでなく、社会、経済環境をも十分に配慮した検討がなされるべきであるが、原処分庁の判断はこの点について明らかにされていない。
(ハ)したがって、前記(ロ)のとおり、本件売掛金の減額処理は、請求人自らの経営改善策の一方策であり、事業遂行上、真にやむを得ない費用であり、寄付金には該当しない。
各取引、特に金額的に重要な取引、後々事実認定ベースになりそうな取引、においてはこのような証拠を文書化しておくことが必須といえます。
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