(※写真はイメージです/PIXTA)

「相続放棄」は、故人の財産や負債の引継ぎを辞退する大切な選択肢です。相続を通じて借金等を背負うリスクを避けたいと考える方にとって、この手続きは有力な手段となります。ただし、相続放棄を行うには家庭裁判所での手続きが必要であり、期間や注意点も多く存在します。本記事では、相続放棄の手続きから注意点、避けるべき行為まで詳しく解説します。

相続放棄とは何か

相続放棄とは、相続人が故人の財産や負債を一切引き継がないことを選ぶ手続きです。特に、借金が多い場合に検討されます。

 

手続きは、相続の開始を知った日から3ヵ月以内に、故人の最後の住所を管轄する家庭裁判所で行います。必要な書類(故人の住民票除票等)を提出し、裁判所に受理されることで手続きが完了します。

相続放棄前後に“避けるべき行為”

相続放棄を行う前後には、いくつか注意が必要な行為があります。これらを行うと、相続放棄が認められなくなったり、無効となったりすることがあります。

相続財産の処分

相続放棄を考えている場合、相続財産を処分してはいけません。例えば、実家を解体したり売却したりすると、相続を承認したと見なされ、相続放棄ができなくなります。保存行為(現状維持のための措置)は認められますが、処分行為には慎重を期すべきです。

 

預貯金の引き出しや解約

 

故人の預金に手をつけると、相続放棄ができなくなるリスクがあります。誤って引き出してしまった場合でも、使わなければ処分行為と見なされないこともありますが、元の口座に戻すのが理想です。口座が凍結されている場合は、引き出した現金を他の資金と分けて管理するようにします。

 

車や家具などの遺品整理

 

車や家具は相続財産に含まれるため、売却や廃棄をすると相続を承認したと見なされることがあります。車を処分しなければならない場合は、専門家に相談し、見積もりを取って書類を残すことが大切です。家具についても同様で、安易に処分せず、弁護士に確認し、証拠書類を残すことをおすすめします。

 

賃貸契約の解約

 

故人が賃貸物件に住んでいた場合、相続放棄を検討しているなら、賃貸契約の解約には注意が必要です。契約を解約すると、賃貸物件を借りる権利(賃借権)も財産の一部と見なされ、それを処分したとされて相続放棄が認められなくなる恐れがあります。解約を進める場合は、貸主や管理会社と相談し、後で証拠となる書類をきちんと残しておくことが大切です。

 

クレジットカードや携帯電話の解約

 

故人のクレジットカードや携帯電話の解約も慎重に行うべきです。これらを解約することで、相続財産を処分したと見なされる可能性があります。相続放棄の手続きが完了するまでは、契約に手をつけない方が無難です。

相続財産の隠匿・消費

相続放棄を行った後でも、故人の財産を隠したり使ったりすると、相続を承認したと見なされ、相続放棄が無効となる恐れがあります(民法921条3号)。相続放棄後は、財産に手をつけないよう注意が必要です。

 

財産を隠す、目録に記載しない

 

相続放棄後に故人の財産を隠す、遺産目録に記載しないなどの行為は、背信行為とみなされます。このような行為が発覚すると、相続放棄の効力が否定され、相続を承認したことになるリスクがあります。隠匿や未記載は法的なペナルティを伴うため慎重に対応することが求められます。

 

被相続人の債務支払い

 

相続放棄を検討している場合、故人の借金を相続財産から支払うのは避けるべきです。借金の支払いが「処分行為」とみなされ、相続放棄ができなくなる可能性があります。支払いが避けられない場合は、自分の資産を使って支払いを行うと良いでしょう。これにより、相続放棄手続きに影響を与えることなく債務を返済できます。

 

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