日本の先進的な医療設備や技術に興味を示す外国人
筆者は中国で医師となった後、さらに視野を広げるべく韓国の大学で再度医学を学び、日本に帰国しました。日中韓3カ国の医師資格を持っていることもあり、現在ではたびたび海外諸国へ渡航し、現地の医療関係者や医学生を対象に講演・教育活動を行っています。
特に免疫細胞療法に関しては、私のクリニックは日本国内でも早い時期に臨床に取り入れた先駆け的なクリニックの一つといえるため、自分が今まで取り組んできたことやその成果を広めたいと、こうした活動に力を入れています。
中国でも大都市などでは免疫治療に対する関心も高く、日本の先進的な医療設備や技術が求められているのです。
ただ、こうした海外での講演・教育活動は、一方的に私が彼らに知識や情報を与える場ではないと認識しています。彼らからも、それぞれの地での研究や実地医療の現状を生きた情報としてもらっているのです。お互いに、持っているものを発信し合う場であり、医療の国際交流といえるでしょう。
そうした経緯もあり、私のクリニックには海外からも患者さんが受診に来られます。飲食店が多い土地柄、日本に住んでいる外国の方が病気やケガなどで受診されることも多いのですが、それだけでなく、わざわざ検査目的で来日する人も珍しくありません。
もはや医療に国境はなく、外国であっても、受けたい医療があれば受けに行くという考え方が、国内外に広がりつつあるのを実感しています。
健康診断、がん治療のために訪れる人が多い
近年は「医療観光」「メディカルツーリズム」といった言葉が知られるようになってきました。旅行会社でも、がんのPET検査を旅程に組み入れたツアーを販売したり、中国語などの言語教育に力を入れている医療機関などもあるそうです。
日本の医療を受けるために来日しているのは約半数が中国、次いで韓国、ロシア、米国で、この4カ国からが全体の8割を占めています。また、そうした医療渡航者の渡航目的は、健康診断・健康管理や、がん関連の診断・治療が多いのです。
しかし、単にビジネスとして海外から人を呼び込むことだけを考えていては、いずれ行き詰まってしまいます。
大切なのは、相手の文化や生活環境などを理解した上で何を望んでいるのかを把握し、満足してもらう医療を提供することではないでしょうか。これは、医療を受ける側がどこの国の人であろうと、変わることはないと思います。
医療に真摯に取り組む姿勢を崩すことなく、日本の先進的な医療を世界中の人が受けられる時代が来る――長年にわたる医療の国際交流の経験から、私はそのように確信しています。