当局の秘策②、③…要は「需要を喚起して市場の好転を待つ」
「認房不認貸」の導入
②の認房不認貸は、一種の住み替え促進策と言える。「過去に住宅ローンを組んでいた場合でも、現時点で自分名義の不動産を持っていなければ、1軒目の住宅ローン頭金比率や優遇金利が適用される」という建付け。
中国では投機防止策として複数の物件購入時に金利負担などを重くするケースがあり、現状ではたとえ住み替えでも2軒目購入とカウントされコストが高く付いてしまう。それを今後は、住み替えならば初回購入とみなし、ハードルを下げましょうというもの。
より広く新しい物件への引っ越し需要を喚起するのが大きな狙いだ。
市民の投資マインドの改善
③の投資マインドは、景気改善や市況好転を待つしかないのが正直なところ。中国人民銀行による都市部預金者アンケート調査(23年4~6月期)では、不動産価格の見通しは「下落」が「上昇」を上回っている。
「向こう3ヵ月間で支出を増やす項目」という設問(複数選択)に対して「不動産」と答えた者は16.2%に過ぎず、20年以降で2番目に低い水準。市民のマインド改善はやや時間を要しそうだ。
まとめると、保交楼政策を優先させて市民の不安を払しょくし、住み替え促進策で需要を喚起し、とにかく市況が好転するのを待つ――とでもなろう。今後の展開は読みにくいものの、各指標が揃ってプラスに転じるのは来年以降にずれ込みそうだ。
以上の見通しは、足元統計やマクロ的観点、政策動向から論じただけだ。各企業の状況および戦略はさまざまなので、今後も紆余曲折があり、突発的な事態が起きることもあるだろう。
ただ、「不動産価格は常に右肩上がり」という一種の神話が一旦終了することは衆目の一致するところ。野蛮的成長から理性的発展へ。次なる発展ステージへの模索が続く。
奥山 要一郎
東洋証券株式会社
上海駐在員事務所 所長
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