突然、遺産分割協議書が届いて…「署名捺印して、印鑑証明書と併せて返送してください」たまにある“異常事態”。「指示どおりに返送」はNG【司法書士が解説】

突然、遺産分割協議書が届いて…「署名捺印して、印鑑証明書と併せて返送してください」たまにある“異常事態”。「指示どおりに返送」はNG【司法書士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

遺産分割にあたっては、相続人全員で協議して分け方を決定し、その内容を書面にするという流れが通常です。ところが世の中には、ある日突然遺産分割協議書が届き、署名捺印等を求められるというパターンも…。司法書士・佐伯知哉氏(司法書士法人さえき事務所所長)が、遺産分割協議書が送られてきた場合の注意点や対応方法を紹介します。

ある日、遺産分割協議書が突然届いて…

 

「あなたは〇〇さんの相続人です。この遺産分割協議書に実印で署名捺印して、印鑑証明書と併せて返送してください。」

 

親戚などから突然このような書類が送られてきたら、どうすればよいのでしょうか。当事務所でもたまに相談を受けることがあり、「言われたとおりサインして、印鑑を押して返してもよいのでしょうか?」と尋ねられます。

 

そこで本記事では、遺産分割協議書が突然届いたときの注意点や対応方法について紹介します。

「中身を見ずに返送」は絶対NG

まず一番大事なこととして、「書類の中身を何にも確認せずに返送する」という対応は絶対にしてはいけません。

 

遺産分割協議書というのは、“相続人全員で話し合って「遺産の分け方」を決定し、それを認めた”ということの証拠となる書類です。署名して実印で押印すれば遺産分割協議書の内容を認めたことになるため、あとあと納得できない点が出てきても「やっぱりナシ」はできません。ですので安易に返送するのはNGです。

そもそも「いきなり遺産分割協議書が届く」は異常事態

次に、「遺産分割協議書が突然送られてくる」というのは普通はありえないことである、というのを覚えておいてください。

 

先ほど少し説明したように、遺産分割では相続人全員で話し合い(協議)をして内容を決定します。その決定内容を書面化したものが遺産分割協議書です。ですから「いきなり遺産分割協議書が届く」というのは、相続人の1人である自分がいない状態で知らないうちに決定された内容が書面化され、送られてきたということになります。

 

書面化の前提となる「協議(=書面の内容を決めるための話し合い)」が飛ばされた状態で自分のもとに遺産分割協議書が届くわけですから、そもそも順番が間違っているのです。

遺産分割協議書が突然届いたときの対処方法

遺産分割協議書がファーストコンタクトになるのは本来ありえないことです。とはいえ、遺産分割協議書が突然届くケースはあるわけです。この場合、どうすればよいのでしょうか?

 

まずは中身をきちんと確認しましょう。遺産分割協議書だけでなく、今回の相続の経緯や、どのような相続人がいるのか(相続人関係図などの図があればベストです)、被相続人の財産がわかる書類が入っているかチェックしてください。

 

遺産分割協議書だけポンと送られてきただけでは、わからないことが多過ぎます。自分が本当に相続人なのかどうか、送り主が本当に自分と関係のある人物なのかどうか、遺産の内容は本当にそれですべてなのかどうか、また、なぜ遺産分割協議書が突然届くような事態になったのか…。このあたりのことをきちんと説明した書類が入っていて、「何か特殊な事情があって、遺産分割協議書でファーストコンタクトを取ることになった」と納得感を得られる材料になるのであればまだいいと思います。

 

異常事態であることに変わりはありませんが、書類の中に前提材料があるかどうかは確認してください。

 

次に、書類の送り主をきちんと確認しましょう。自分の親族なのか、自分以外の相続人の誰かなのか。相続人の代理人が送ってきた場合には、その代理人がきちんとした国家資格を持った人物かどうかを確認してください。

 

送り主が相続人を称する人である場合、相続人の関係図のようなものがあれば自分との関係性(おじやおば、いとこ、姪や甥など)を確認できます。一方、親戚が依頼した代理人であれば、基本的には苗字からして他人ですし、どんな人物かはわかりません。しかし、きちんとした有資格者であればネット検索ですぐに出てきます。

 

国家資格者である士業であれば、各資格を統括する連合会などでフルネームや事務所の住所が公開されています。たとえば筆者の場合は司法書士ですので、日本司法書士連合会ホームページ>司法書士検索>氏名欄に「佐伯 知哉」と入力すれば一発です。

 

このご時世では、突然遺産分割協議書を送りつけられたと思いきや実は詐欺だった…というパターンもありえますので、送り主が本当に自分の親族なのかどうか、代理人であればきちんと国家資格を持っているのかどうかを確認することが重要です。

 

最後に、自分で内容を確認してもよくわからない、問い合わせるのも怖いという場合には専門家に相談しましょう。一般の方にとって遺産分割協議書やその他の中身は普段あまり目にするものではないですし、高齢の方であれば詐欺に狙われやすいという問題もあります。

 

自分の代わりに相手方に連絡してほしいという場合は、弁護士に問い合わせるとよいでしょう。相続の場面で、相続人の一部の代理人となって、他の相続人に対して交渉事を行うという対応は弁護士にしかできません。すでに揉め事がくすぶっているような状態であれば最初から弁護士に相談し、弁護士に代理人として連絡してもらうのがよいかと思われます。

 

一方、自分の代わりに連絡や交渉事をしてほしいというわけでなく、自分の知っている親族が送り主で、単純にその内容について確認してほしいという依頼であれば司法書士でも対応可能です。心配であれば一度相談してみるとよいでしょう。

 

以上、今回は遺産分割協議書が突然届いた場合の対応方法について紹介しました。遺産分割協議の順番を考えればイレギュラーなケースではありますが、ご参考になれば幸いです。

 

 

佐伯 知哉

司法書士法人さえき事務所 所長

 

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