(※写真はイメージです/PIXTA)

老人ホームを選ぶ際、多くの人は入居先を「終の棲家」と考えます。そのため、つい豪華な設備やサービスに目を奪われてしまい、長期的な視点が欠けてしまう人も少なくありません。そこで今回、株式会社FAMORE代表取締役の武田拓也FPが、尊敬する父親に優雅な余生を過ごしてほしいと考えたVさんの事例から、老人ホーム選びのポイントと注意点を解説します。

老人ホーム費用の落とし穴…「オプション」が大きな負担に

入居当初、施設の利用料は月25万円と、年金支給額の範囲内で問題ありませんでした。

 

ところが、認知症が進行して介護量が多くなると、サービス費も増えます。そのため、気づくと月々の費用は35万円を超えており、自宅の固定資産税や通信費などを合わせると、年間約200万円もの資産が減ってしまいます。

 

施設のパンフレットには入居後に毎月支払う「月額利用料」の内訳が記載されています。その主な項目は以下の3つです。

 

①家賃

②食費

③管理費

 

管理費には、人件費、施設の維持・運営費などが含まれます。施設によっては水道光熱費や通信費が定額で月額利用料に含まれるところもあれば、実費を別途請求するところもあります。

 

そのほかにも、月々かかる費用として次のものがあります。

 

①介護サービス費

②上乗せ介護費

③おむつ代

④レクリエーション費

⑤医療費

⑥日用品費

⑦その他

 

なお、おむつ代や手袋など消耗品の一部は月額利用料に含まれる施設もあります。

 

その他の内容として、清掃や洗濯、配膳・下膳、健康管理費、夜間見守り、通院送迎、買い物代行などがありますが、これらについては施設ごとで月額利用料に含まれている場合と、有料のサービスとして提供しているところがあるため、入居前にしっかり把握しておきましょう。

 

結局、父親の身体的にも費用的にもこのまま高級老人ホームで過ごすことが難しくなっていたことから、Vさんは退去を決断。地元のグループホームを探すことにしました。

 

なお、Vさんの父親は認知症が進行し、意思確認がとれませんが、退去手続きについては入居契約の際に「身元引受人」となった親族が手続きできるため、心配はいりません。

認知症発症→住宅型有料老人ホーム入居で無駄になること

■入居一時金(前払い金)

有料老人ホームを退去する場合、入居一時金(前払金)は全額が戻ってくるわけではなく、経過年数に応じて償却されます。

 

一般的には5~10年の償却期間(想定居住期間)が設けられています。今回Vさんの父親は償却期間を過ぎていたため、入居一時金の返金はありませんでした。

 

対策として、途中で退去する可能性がある場合は、入居一時金を払わない「月払い方式」の利用を検討してください。月々の居住費は高くなりますが、最初に高額な費用を負担がなくなります。

 

■豪華な設備

入居一時金や月額費用が高額になる理由としてフィットネスルームにシアタールーム、ダンスホールに温水プールなど設備が充実していることやスタッフの数が多くサービスが手厚いことなどが挙げられます。健康であれば設備を有効に活用することもできますが、認知症となり介護度が重くなると利用する機会もなくなります。

 

対策としては、入居する「本人にとって」必要な設備か確認しましょう。

 

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