(※写真はイメージです/PIXTA)

配偶者が亡くなってから隠された借金が判明するケースは意外と多く、遺された遺族は後始末が非常に大変です。それがもし、故人の親族と配偶者のあいだで争いが起きがちな「子のいない夫婦の相続」で起きると、なおさら混乱を招くでしょう。では、隠された借金が相続時に見つかった場合には、どうすればよいのでしょうか。本記事ではFP1級の川淵ゆかり氏が、Bさんの事例とともに、相続における借金の対処法について解説します。

60歳になる専業主婦のBさん

61歳のAさんは、昨年定年退職を迎えた元サラリーマンです。60歳になる専業主婦の奥さんのBさんと地方で一戸建てに住んでいました。

 

夫婦に子どもはなく、大人しい奥さんに対し、Aさんは精力的な人で、サラリーマン時代も仕事で毎日帰りは遅く、さらに多趣味であったため、休日も「ゴルフだ、釣りだ」と外出ばかりしているような人でした。

 

そんなAさんも仕事を辞めたことで最近は大人しくなってきたところでしたが、脳卒中により、あっという間に亡くなってしまいます。

 

本記事でご紹介するのは、Aさんの死亡保険の受け取りの方法等を確認に来られたBさんから後日お伺いしたお話です(※一部脚色して掲載しています)。

Bさんの老後のお金

遺族基礎年金は、子*のいない人は受け取れません。

*「子」とは、18歳になってから迎える最初の3月末までにある人、または障害等級が1級・2級の場合は20歳未満の人です。

 

 

Bさんが受け取れる遺族年金は、子がいないために中高年寡婦加算(※下記参照)を加えても月に12万円ちょっとです。Bさんが65歳になり自身の老齢基礎年金が受け取れるようになったあとも月に1万6,000円ほど増える程度です(令和5年度の金額で算出)。

 

遺族厚生年金の年金額

遺族厚生年金の年金額は、死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額となります。

 

なお、上記受給要件の1、2および3に基づく遺族厚生年金の場合、報酬比例部分の計算において、厚生年金の被保険者期間が300月(25年)未満の場合は、300月とみなして計算します。

 

65歳以上で老齢厚生(退職共済)年金を受け取る権利がある方が、配偶者の死亡による遺族厚生年金を受け取るときは、「死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額」と「死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の額の2分の1の額と自身の老齢厚生(退職共済)年金の額の2分の1の額を合算した額」を比較し、高いほうの額が遺族厚生年金の額となります。

 

中高齢寡婦加算

中高齢寡婦加算とは、遺族厚生年金(長期の遺族年金では、死亡した夫の被保険者期間が20年以上の場合(中高齢者の期間短縮の特例などによって20年未満の被保険者期間で老齢厚生年金の受給資格期間を満たした人はその期間))の加算給付の1つを指します。

 

遺族基礎年金は子どものいない妻には支給されませんし、子がいてもその子が18歳(18歳の誕生日の属する年度末まで)または20歳(1級・2級の障害の子)に達すれば支給されなくなりますが、夫が死亡したときに40歳以上で子のない妻(夫の死亡後40歳に達した当時、子がいた妻も含む)が受ける遺族厚生年金には、40歳から65歳になるまでの間、中高齢の寡婦加算(定額)が加算されます。

 

妻が65歳になると自分の老齢基礎年金が受けられるため、中高齢の寡婦加算はなくなります**

**令和5年度の年額は、59万6,300円です。

 

Bさんは悲しみにくれながらも、「年金額は少ないですが、2,500万円の死亡保険に加入していたのと、1,500万円ほどの退職金を受け取っていたはずですし、ほかにも貯蓄があるはずですから、自分の今後はそんなに心配していません」といいます。

 

 

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