法人口座を開設するなら「最寄りの信用金庫」がおすすめなワケ【税理士が解説】

法人口座を開設するなら「最寄りの信用金庫」がおすすめなワケ【税理士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

従来は「ゆるゆる」だった日本の金融機関の審査が、国際社会からの要請やコロナ融資の反動を受けてか、一気に厳しくなっているようです。口座開設も融資もハードルが上がっているとなれば、どの金融機関で口座開設するかは以前より慎重に検討しなくてはいけません。小さな会社におすすめの法人口座はどこなのか? 板山翔税理士が解説します。

 

――会社を設立したので法人口座を開設したいのですが、おすすめの金融機関はありますか?

 

板山翔税理士:「小さな会社の場合、メインバンクとして最寄りの信用金庫、サブバンクとしてネット銀行の法人口座を開設することをおすすめしています。」

日本の金融機関、「審査ゆるゆる、どんどん融資」から一転

会社を設立していざ法人口座を開設しようと思っても、年々法人口座開設のハードルが高くなっており、せっかく会社作ったのに口座がなかなか作れない…なんて話をちらほら聞くようになりました。

 

近年国際的にマネーロンダリングやテロ資金供与への対策が行われており、その中で日本の金融機関は対策が甘すぎると指摘を受けたことが影響しているそうです。

 

逆に言えば、あまり対策をしなくても悪いことをする人が日本人には少なかったからなのでしょうけど、世界的に見れば日本は審査がゆるゆるだったわけで、国際的な要請を受けて一気に審査が厳しくなった様子。

 

また、融資の審査についても、コロナ融資の反動を受けたのか、最近は厳しくなってきている印象があります。

 

コロナ禍ではかなりゆるい審査でどんどん融資してもらえましたが、やはりその回収が厳しかった反省からか、思うように審査が通らないケースが増えたと感じています。

 

口座開設も融資も審査が厳しくなっているとなれば、どの金融機関で口座開設をすればいいのか、以前より慎重に検討する必要がありますよね。

 

結論から先に言えば、口座開設がしやすく融資も受けやすい信用金庫をメインバンクとして、使い勝手がいいネット銀行をサブバンクとして口座開設するのがおすすめです。

 

なぜその組み合わせなのか? 他の金融機関ではダメなのか? もう少し詳しく解説していきますね。

「法人口座を開設できる金融機関」の主な種類と特徴

そもそも法人口座を開設できる金融機関にはどんな種類のものがあって、それぞれどんな特徴があるのか、まず選択肢の全体像をつかんでもらいたいと思います。

 

一言で金融機関といっても、銀行や信用金庫だけでなく、協同組合・信用組合・労働金庫など細かく分ければ10種類以上あります。

 

全部説明しているとキリがないので、今日は法人口座開設の選択肢として挙がりやすい、次の4種類の金融機関(都市銀行、地方銀行、信用金庫、ネット銀行)の特徴を詳しく見ていきましょう。

 

【都市銀行(都銀)】

都市銀行は、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行の3大メガバンクにりそな銀行を加えた4行しかありません。

 

いずれも大都市に本店を置き、全国規模で展開している最大手の銀行で、取引先も上場企業や大企業が多いです。

 

法人口座開設や融資審査のハードルは最も高く、その分融資の金利は最も低いのですが、そもそも取引してもらうこと自体が設立直後の小さな会社には困難です。

 

【地方銀行(地銀)】

地方銀行は、横浜銀行、福岡銀行など全国に58行あります。地方銀行より小規模な第2地方銀行も、全国に35行あるそうです(行数は財務省HP:金融機関一覧より)。

 

地方銀行はその名のとおり地方都市に本店を置く地域密着型の銀行で、取引先も地元の企業や個人が中心です。

 

法人口座開設や融資審査のハードルは都銀より低くなりますが、融資の金利は都銀より高くなる傾向があります。

 

【信用金庫】

信用金庫は京都中央信用金庫、城南信用金庫など全国に241行もあります(財務省HP:金融機関一覧より)。

 

信用金庫は営業エリアが法律で限定されている超地域密着型の金融機関です。これは株式会社である銀行と違って、信用金庫は地域の繁栄を図ることを目的とした協同組織だからです。

 

また、従業員300人以下(または資本金9億円以下)の中小企業しか会員になれず、地銀よりさらに小規模な取引先が多いのも特徴です。

 

別の法律でできた金融機関である信用組合も、活動内容は信用金庫と似た組織で、全国に60行あるそうです(財務省HP:金融機関一覧より)。

 

信用金庫はその目的ゆえに、都銀や地銀より法人口座開設や融資審査のハードルはさらに低くなりますが、その反面、融資の金利は最も高くなることが多いです。

 

【ネット銀行】

ネット銀行は、楽天銀行、住信SBIネット銀行など、インターネット上の取引を中心とする銀行です。

 

実店舗を持たないため、対面での相談などは難しいものの、法人口座開設や融資審査もネット上だけで手続きができるため、利便性が高くなっています。

 

また、預金金利が高く振込手数料も安いなど、店舗設備を持たない分、コストパフォーマンスも高いのが特徴です。

メインバンクとして「信用金庫」をおすすめする理由

ここまで都銀、地銀、信用金庫、ネット銀行の4種類の金融機関の特徴を見てきました。

 

その中でも、メインバンクを信用金庫としておすすめする理由は、シンプルに法人口座開設や融資審査のハードルが低いメリットが大きいからです。

 

もちろんその分金利は高くなりますし、都銀で口座開設ができるネームバリューなどは手に入りませんが。

 

金利が高いといっても1~2%の差の世界ですし、都銀のネームバリューがあったところで取引が増えるかと言ったら、小さな会社の場合はそこまで影響しないでしょう。

 

それよりも、口座開設できるのか否か、融資を受けられるか否かの方が、はるかにビジネスに与える影響が大きいです。

 

設立直後の小さな会社であったとしても親身に相談に乗ってもらえる、最寄りの信用金庫での口座開設をまずは検討しましょう。

 

もちろん、もともと都銀や地銀とつながりがあって、前向きに相談に乗ってもらえそうであれば、最初から都銀や地銀で口座開設しても何ら問題はありません。

 

特に積極的に融資を活用していきたい場合は、複数の金融機関とつながりを持っておいた方が何かと便利です。

 

なお、創業直後は融資を受けるつもりがなかったとしても、先々融資を活用したい機会が訪れたときのために、信用金庫で口座開設しておいて損はありません。

 

先ほどゆうちょ銀行を選択肢として挙げなかったのも、ゆうちょ銀行は法人向けの融資は行っていないため、先々のことを考えてのことです。

サブバンクとして「ネット銀行」をおすすめする理由

次にサブバンクとしてネット銀行をおすすめする理由は、こちらは何と言っても使い勝手がいいからです。

 

ネット銀行は対面で相談できないため、ビジネス拡大のパートナーとなるメインバンクとしては少々心もとないです。

 

中小企業のおよそ1/3が政府系の金融機関である日本政策金融公庫から融資を受けており、実店舗がある金融機関であれば公庫との協調融資なども検討してもらえますが、ネット銀行はそこまでの個別対応はしてもらえません。

 

しかし、たとえ融資に多少弱くても、ネット銀行の利便性は実店舗がある金融機関をはるかにしのぎます。

 

そもそもサブバンクは何のために必要なのか? といいますと、1つは納税資金や貯蓄用の資金をメインバンクと別口座に移して貯めておくため、もう1つはメインバンクで融資を受けられなかった場合のリスクヘッジのためです。

 

ネット銀行であれば、資金移動がネットだけで簡単に行えますし、振込手数料も安く、自動振替などの機能も充実しています。

 

私が使っている住信SBIネット銀行であれば、1つの口座の中に目的別口座を10個まで作成できるので、納税用、貯金用などの目的別口座を作って資金を管理できるためとても便利です。

 

また、融資審査もネット上だけで手早く簡単に行えるため、メインバンクで融資が受けられるかどうか手応えが怪しければ、ネット銀行で融資申請をして応急処置を図る、なんて使い方にも向いています。

 

設立直後でも法人口座開設ができるかどうかの書類審査については、ネット銀行によってだいぶムラがある印象なので、審査で落ちても諦めずに他のネット銀行で再チャレンジしてみてください。

 

資本金が数十万円しかない合同会社の設立直後で、会社住所もバーチャルオフィスという口座開設のハードルが高いクライアントでも、数件目であっさり審査に通ったなんてこともありました。

まとめ

以上のとおり、メインバンクは口座開設や融資申請の通りやすさを重視して信用金庫を選び、サブバンクは使い勝手を重視してネット銀行を選ぶことをおすすめします。

 

もちろん、会社の状況に合わせて違う組み合わせにしてもらっても全く問題ありません。

 

今日話した知識を参考にして、自社に最適な組み合わせを考えてもらえたら幸いです。

 

 

板山 翔

板山翔税理士事務所 代表、税理士

 

おそらく日本初の「オンライン専門の税理士事務所」の創設者。自社の事業を「税理士業」ではなく、「経営に必要な情報をオンラインで提供する事業」と捉え、経営戦略コンサルタントとしても活動している。従業員5名以下の小さな会社の経営者を中心に、「小さな会社だからこそできる差別化戦略」の立て方や、「短期間で売上アップするためのマーケティング戦略」、「長期的に資産を形成していくための財務戦略」などを教えている。

 

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