株式投資と「プロ野球の球団経営」は似ている…“人気株だらけのポートフォリオ”では勝てない理由【マクロストラテジストが解説】

株式投資と「プロ野球の球団経営」は似ている…“人気株だらけのポートフォリオ”では勝てない理由【マクロストラテジストが解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

株式投資におけるポートフォリオづくりとプロ野球の球団運営は似ていると、フィデリティ・インスティテュートの首席研究員・重見吉徳マクロストラテジストはいいます。来年1月から始まる新NISAに向けて、どのようなポートフォリオを組むべきなのでしょうか。本記事では、野球におけるスターティング・オーダーにたとえながら、長期的に株式投資を続けるコツを解説します。

世界の中小型株式への長期投資にはアクティブ・ファンドが一案

ただし、実際に購入可能な運用対象に目を向けると、図表2に示すとおり、現在、日本国内で人気のインデックス・ファンドは、米国の大型株式のみを投資対象とするものか(→たとえば、S&P 500に連動するもの)、全世界の株式を投資対象とするものでも小型株式が含まれないものが支配的なようです(→たとえば、MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスに連動するもの)。

 

「一番左」のS&P500は大型株式のみが対象。「真ん中」のMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスには小型株式が含まれず。
[図表2]インデックスファンドの企業規模別構成 「一番左」のS&P500は大型株式のみが対象。「真ん中」のMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスには小型株式が含まれず。
出所:S&P Dow Jones Indices LLC、MSCI、フィデリティ・インスティテュート。
注:データ時点2023年8月31日
あらゆる記述やチャートは、例示目的もしくは過去の実績であり、将来の傾向、数値等を保証もしくは示唆するものではありません。

 

「一番左」のS&P500は大型株式のみが対象。「真ん中」のMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスには小型株式が含まれず。

 

また、今後、世界の中小型株式のみを投資対象とするインデックス・ファンドが普及したとしても、中小型株式のなかには成長が止まっている「ベテラン企業」もありますし、成長途上の「若手企業」でも、すべてのそうした企業が大きな成長を遂げるわけではありません。

 

このため筆者は、世界の中小型株式市場で長期の運用実績があり、運用哲学を吟味すれば、将来にわたっても「若手成長銘柄」を探していくことが期待されるアクティブ型の投資信託につみたて・分散投資をすすめることを提案します。

世界の中小型株式に割安感

最後に、現在の世界の中小型株式の状況を見てみます。図表3に示すとおり、世界の中小型株式は、とくに大型成長株式対比でみると、過去20年で最も割安になっています。言い換えれば、世界の中小型株式は、期待リターンが高く、長期間の投資を開始するには良好なタイミングである可能性があります。

 

世界の中小型株式は、大型成長株式対比、過去20年来の最割安圏。(→米大型成長株式は、小型株式対比、過去20年来の割高さ) 出所:Refinitiv、フィデリティ・インスティテュート。 注:データ期間:1995年1月~2023年8月、月次。 「世界の中型(小型)株式/大型成長株式」:MSCI ACWI Mid (Small)Cap Indexの12ヵ月先予想PERを、MSCI ACWI Large Cap Growth Indexの12ヵ月先予想PERで割ったもの。
[図表3]世界の中型(小型)株式と大型成長株式の相対PER 世界の中小型株式は、大型成長株式対比、過去20年来の最割安圏。(→米大型成長株式は、小型株式対比、過去20年来の割高さ)
出所:Refinitiv、フィデリティ・インスティテュート。
注:あらゆる記述やチャートは、例示目的もしくは過去の実績であり、将来の傾向、数値等を保証もしくは示唆するものではありません。
データ期間:1995年1月~2023年8月、月次。
「世界の中型(小型)株式/大型成長株式」:MSCI ACWI Mid (Small)Cap Indexの12ヵ月先予想PERを、MSCI ACWI Large Cap Growth Indexの12ヵ月先予想PERで割ったもの。

 

また、図表4に示すとおり、世界の中小型「割安」株式についても、同様です。

 

世界の中小型割安株式は、大型成長株式対比、過去20年来の最割安圏。(→米大型成長株式は、小型割安株式対比、過去20年来の割高さ)世界の中型(小型)割安株式と大型成長株式の相対PER 注:
[図表4]世界の中型(小型)割安株式と大型成長株式の相対PER 世界の中小型割安株式は、大型成長株式対比、過去20年来の最割安圏。(→米大型成長株式は、小型割安株式対比、過去20年来の割高さ)世界の中型(小型)割安株式と大型成長株式の相対PER
出所:Refinitiv、フィデリティ・インスティテュート。
注:あらゆる記述やチャートは、例示目的もしくは過去の実績であり、将来の傾向、数値等を保証もしくは示唆するものではありません。
データ期間:1995年1月~2023年8月、月次。
「世界の中型(小型)株式/大型成長株式」:MSCI ACWI Mid (Small)Cap Indexの12ヵ月先予想PERを、MSCI ACWI Large Cap Growth Indexの12ヵ月先予想PERで割ったもの。

 

逆にいえば、世界の大型成長株式には米国のテクノロジー企業を中心に歴史的な割高感があり、長期の期待リターンが低い状態です。【前出】の「スタメン」に戻れば、大型成長株式に多く含まれる3番打者のクオリティ株式や4番打者のテクノロジー株式は「スーパースターゆえに、ヒットやホームラン1本あたりの年俸が高騰している」状態です。

 

マイケル・ルイスの書籍『マネー・ボール』に着想を得て、(野球にデータ・統計分析を取り入れた「セイバーメトリクス」に基づく)2002年のオークランド・アスレティックスの躍動を描いた同名映画には「選手を買うのが目的ではない。勝利を買うのが目的であり、勝利を買うには得点を買わないといけない」というセリフが出てきます。

 

大型成長株式の投資家は、スーパースター企業の利益にだけではなく、企業名がかもしだす期待にもお金を投じている可能性があります。いまはまだ知られていない企業への分散投資で、長期の常勝軍団をつくりあげましょう。

 

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重見 吉徳

フィデリティ・インスティテュート

首席研究員/マクロストラテジスト

 

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【参考文献】
・Ray Dalio (2018,2022) “Principles for Navigating Big Debt Crises”, Bridgewater Associates, Avid Reader Press / Simon & Schuster

・西野智彦 (2019) 『平成金融史-バブル崩壊からアベノミクスまで』中公新書、中央公論社

・リチャード・クー (2013) 『バランスシート不況下の世界経済』徳間書店

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