(※写真はイメージです/PIXTA)

会社の成長に必要不可欠な“権利”や“ノウハウ”といった「知的財産」は、形を持たない無形資産であるため、きちんと保護・管理しなければ、ライバルに“横取り”される危険性があります。そこで今回、特許権をはじめとした「知的財産」を守るために欠かせないいくつかの権利について、『「見えない資産」が利益を生む GAFAMも実践する世界基準の知財ミックス』著者の鈴木健二郎氏が解説します。

まだまだあった「知財」を守る権利の種類

・意匠権

意匠法によって規定されている工業デザインを守る権利です。独創的で美感を有する物品の形状、模様、色彩等のデザインを保護します。時折、著作権のように何もしなくても権利が発生するものと思われていることがありますが、特許庁にきちんと出願し、審査を受け、登録されてから初めて認められるものです。特許庁の審査を経て意匠公報で公開されるので、所在や内容が明らかな権利です。

 

例)美しく握りやすい曲面が施されたスマートフォンのデザイン

 

・商標権

商標法によって規定されている商品又はサービスについて使用するマーク(文字、図形など)に対して与えられる権利です。その効力は同一の商標・指定商品等だけでなく、類似する範囲にも及びます。商標として保護されるのは、文字、図形、記号のほか、立体的形状や音等も含まれます。権利の存続期間は10年ですが、存続期間は申請により更新することができます。

 

例)電話機メーカーが自社製品を他社製品と区別するために製品などに表示するマーク

 

これらの産業財産権の利用形態については、特許庁では以下のように説明されています。

 

〈利用形態の例〉

●新しい技術、新しいデザイン、ネーミングやロゴマークなどを、自社製品・サービスに独占的に使用する(類似の技術、デザイン、ネーミングやロゴマークなどを使用する他社を排除する)

●他者に産業財産権自体を移転する(売却・譲渡等)

 

いずれの知財権も、現状ではユニバーサルでないのが悩ましいところですが、特許についてはグローバリズムに対応しようとする動きもあります。いわゆる「パリ条約」の加盟国に開かれたものとして「特許協力条約(PCT)」が用意されています。

 

PCTは、国際特許出願を提出するかたちとなります。締約国の居住者や国民であれば、国内の特許庁か、あるいはジュネーブの「WIPO(世界知的所有権機関)」に出願をすることができます。このように、国際的に効力を持つ仕組みが出てきているのです。

 

WIPOのホームページでは、次のようにPCTの利点が紹介されています。

 

(i)出願人は、外国における保護の必要性についての再検討、各国における現地特許代理人の選任、必要とされる翻訳の準備、及び国内手数料の支払いのために、PCTを選択しなかった場合に比してさらに18ヶ月に及ぶ猶予を得ることができます。PCTに規定される様式によって国際出願を行えば、指定官庁における国内段階の出願手続きにおいて方式的な理由で出願が拒絶されることがありません。国際調査報告書及び書面による見解を基礎にして、出願人の発明の特許性についての評価を妥当な範囲で行うことができます。出願人は、指定官庁による手続きの前に、国際予備審査の過程で国際出願の補正を行うことができます。

(ii)国際調査報告、書面による見解、及び、場合によって国際予備審査報告書が国際出願に付されることにより、特許庁における調査及び審査の業務が大幅に軽減され又は実質的になくなります。

(iii)全ての国際出願が国際調査報告書と共に公開されることによって、第三者にとっては、請求された発明の特許性についての根拠ある見解を得る上で有利になります。

 

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※本連載は、鈴木健二郎氏の著書『「見えない資産」が利益を生む GAFAMも実践する世界基準の知財ミックス』(ポプラ社)より一部を抜粋・再編集したものです。

「見えない資産」が利益を生む GAFAMも実践する世界基準の知財ミックス

「見えない資産」が利益を生む GAFAMも実践する世界基準の知財ミックス

鈴木 健二郎

ポプラ社

アップルが、銀行やホテルを始めるのはなぜか? 会社のイノベーションの材料は、社内に埋もれている! 「知的財産」を最大活用する新規事業のつくり方。 三菱総研、デロイトトーマツコンサルティングを経て、特許庁・経…

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