アップルの世界観を支えるIPカウンセル、コマーシャルIP
アップルの知財ポートフォリオは「Apple System」と呼ばれ、多様な知財がまとまってひとつの巨大なシステムを形成し、アップルの世界観を維持しています。
Apple Systemは、アップルを中心にした企業コミュニティが集まって、知財を活用するプラットフォームになっており、本社のIPカウンセルや各事業部門のコマーシャルIPは、そのプラットフォームの守護者(=管理人であり警備員であり弁護人)であるというのが担当者全員の共通認識となっています。
Apple Systemに所属するのは、OEM企業(「Original Equipment Manufacturer」の頭文字を取ったもので、自社ではないブランドの製品を製造するメーカーのこと。自動車や電化製品、化粧品、食品など様々な分野で取り入れられている)、サプライヤー、ライセンス取引先の企業、共同開発企業、異業種のパートナー企業であり、彼らはいずれもアップルと共闘でビジネスを戦い抜く仲間であると考えられています。
その仲間が気持ちよく集い合えるように、あるいは安心して活動できるようにサポートするのが、アップルのIPカウンセルやコマーシャルIPの役割なのです。
サムスンのように、コミュニティの部外者がプラットフォームに土足で入ってきて、Apple Systemの知財を権利侵害するようなことがあれば、Apple System上の仲間のビジネスを守るためにも、こうした動きを徹底して排除することも辞さないという立場を取っています。
コミュニティのルールづくりは“あえて拠点任せ”
また、この組織構造の優れている点として挙げておきたいのは、「人の五感を包み込む」というアップルとしての経営ビジョンに則り、世界中の各拠点の知財活動のあるべき姿が、拠点ごとに明文化されて浸透していることです。
国や地域ごとに法制度や市場の特性が異なるので、Apple Systemのつくり方も大きく異なってきます。iPhoneなどのデバイスや、iTunesのようなアプリは世界共通であっても、戦い方が同じ地域はひとつもありません。
したがって、アップルのブランドイメージは世界共通ですが、地域ごとの事業戦略に合わせてコミュニティのルールづくりは、敢えて拠点ごとに任せる体制を採用しています。
世界で共通すべきルールと拠点ごとにローカライズした戦略を同居させるメリハリも、見事としか言いようがありません。まさに全社的な経営戦略の中に、多様な知財を調和させながら組み込めるような仕組みが構築されているのです。
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