(※写真はイメージです/PIXTA)

「高いスキルを見込んで採用したのに突然辞めてしまった」「チームリーダーに就けると急に辞めてしまう」「せっかく新人から育て上げていい仕事ができるようになったのに退職した」……このような悩みを持つ経営者は多いのではないでしょうか。本記事では、優秀な人ほど突然会社を辞めてしまう理由とともに、早期離職を防いで定着率を上げる方法について、仕組み経営株式会社の取締役・清水直樹氏が解説します。

優秀な人が突然辞める理由、5選

まずは退職理由として挙げられることの多い5つをご紹介していきます。皆さんの会社でも、このような理由で突然退職された方はいないでしょうか?

 

1.やりがい・達成感を感じない

これは主に評価などの人事制度に対する不満です。どんなに頑張って成果を残しても、正当に評価されないのでは仕事を続ける意欲は低下してしまいます。特に昇進や昇給に絡むことはその人のライフステージにも大きな影響があるため、離職へとつながってしまいます。

 

2.給料が低い

特に20代~40代の多くが給料の低さを理由に挙げています。会社の理念への共感だけではなく、やはり現実的には給料やボーナスなどの報酬は仕事に対するモチベーションの源になります。そのほか、給与明細が不明瞭、残業代や休日出勤手当がないという、そもそも法令違反と言えるケースも見られます。

 

3.企業の将来性に疑問を感じた

これにはもちろん業界全体の将来性に対する不安も含まれます。会社の業績が悪い、成長が見込めないビジネスモデルである、あるいはモラル上問題のある業務をしているなど、従業員が安心感を持って働けないと離職率は上がります。特に優秀な社員であるほど会社や業界の実情に触れる機会も多いので、離職理由につながりやすくなります。

 

4.職場の人間関係

上司や同僚との関係性が築けずに退職を決意するパターンです。「1」に挙げたように、上司からの評価に納得できずに人間関係が悪化することもあります。また、パワハラやセクハラといったトラブルもここに含まれます。

 

5.残業や休日出勤など拘束時間が長い

いくらやりがいのある仕事であっても、残業や休日出勤が多ければ満足度が下がってしまいます。そればかりか、睡眠不足とうつの発症の関連性も多く指摘されているなど、健康面へも悪影響をおよぼしてしまうことになります。

優秀な人が辞める会社の問題点

ここまで、優秀な人が突然辞める理由を5つ取り上げましたが、それぞれを会社の問題点に置き換え、問題解決のための仕組みについてご説明していきます。

 

1.人事制度がうまくできていない

評価制度が不透明で、社員に対する説明が不足していたり、上司に対する人当たりがよく、要領のいい人間だけが昇進できると思われてはいないでしょうか? 人事制度がうまくつくられていない会社では、優秀な人ほど理不尽な思いを抱えるようになってしまいます。

 

人事制度は社員の評価や給与を決める根本的な基準となるので、社員の仕事へのやりがい・達成感はもちろん、事業の成長全体に大きな影響を与えます。人事制度は、会社内における人事的な決まりごとであり、社内公募制度や産休・育児休暇制度、留学制度などもこれに含まれます。

 

人事制度は「等級・職位制度」「評価制度」「給与制度」の3つの要素で構成され、各要素が互いにリンクし合って成立します。「社員に求めるもの」と「なにを持って社員の給与を決めるのか」の2つの軸を明確にすることで人事制度が透明化でき、社員のモチベーションアップによる定着率の改善と業績向上につながるわけです。

 

2.給与制度が不適切

社員が日々の生活を送るのがギリギリの収入しか得られず、貯金もできないような状態ではありませんか? お金がすべてではありませんが、給与制度が不適切な状態では、将来に対する展望を持つことができず、仕事へのモチベーションも高まりません。

 

給与制度には月例給(基本給・各種固定的に支給される手当・残業代などの変動手当)、賞与、報酬金のほか、退職金・ストックオプションなどの後払い的に支給されるもの、福利厚生に関するものも含まれます。

 

給与制度とは、等級や評価に基づいて給与や賞与を決定する制度のことです。社員のなにを評価するのかによって給与が上下するため、その仕組みから会社全体の方針や人事戦略が明確になります。給与制度を策定する際には、水準をどうするか、体系と等級の関係、昇格や降格時の給与のルールを考慮し、さらに「1」で述べた人事制度とも連動させる必要があります。

 

3.業績が悪い、戦略がない

会社の業績や事業戦略、業界全体の展望に対して不安を抱く社員に向かって、自社の将来性について根拠を伴った説明をすることはできるでしょうか? このような場合にエビデンスとなるのが「事業性評価」です。

 

事業性評価とは、本来、金融機関が融資を決定する際に、その会社の財務諸表(定量情報)のみならず、今後の戦略や強み、知的資産などの定性情報も考慮に入れて評価するというものです。これは金融機関が行うことですが、会社側が事業性評価を受ける準備をする過程で、自社の戦略や強みを明確化、文書化する仕組みをつくることができます。

 

創業のきっかけや沿革、ミッション・ビジョン・バリュー、後継者の育成計画、市場環境、成長戦略、財務指標などを振り返り、またあらためて洗い出すことで、社員に対して自社の将来像や可能性について根拠を持った説明ができるようになります。

 

4.組織文化に合った採用ができていない

職場の人間関係に悩む社員が生まれる背景には、組織文化に合った採用活動ができていないという問題が潜んでいます。そもそも自社の組織文化がどういったものであるのか、経営者自身が把握することができているでしょうか?

 

組織文化とは、組織の構成員が共通して持つ信念や価値観の集合体であり、組織と構成員の活動を特徴づけるものであると定義されています。創業者の価値観や組織リーダーの言動、創業時からの成功体験・失敗体験が醸成されて、その会社の持つ文化となっていきます。

 

この組織文化を採用活動に反映させたものがカルチャーフィット採用です。個人の態度、価値観、信念が組織のコアバリューや企業文化に沿っている人を積極的に採用していくという意味です。特に中小企業や成長企業の場合、1人の採用が会社全体に与える影響が大きくなりますから、カルチャーフィットしない人を入れてしまうと、文化の維持が難しくなってしまいます。

 

5.業務の仕組み化ができておらず属人的

残業や休日出勤などで拘束時間が長くなってしまう原因として、業務の仕組み化が未完成で属人的な組織になっていることが考えられます。限られた社員に業務が集中してしまったり、リーダーに依存するようなチームの在り方になってはいないでしょうか?

 

もちろん、極めて専門的な仕事を担うスペシャリストや、クリエイティブ系の職種の場合、属人化を否定することはできませんし、彼らの自由な発想に任せたいという考え方もあると思います。ただし、極端に属人的な仕組みになってしまうと自社ブランドの一貫性を維持することが困難になります。

 

このため、特に高度な判断や思考が必要とされない定型業務のマニュアル化(手順書化)や標準化が求められます。また、スペシャリストやクリエイティブ系など非定型業務においても、仕事を分解して、定型業務と非定型業務にわけたり、複数人を業務に関わらせるなどの工夫が必要となります。

 

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