「言わなくてもわかる」とは?
「常識が通じない(言わないとわからない)」社員が増えていると言われていますが、まず、「常識」とは具体的になにを指すのでしょうか。
ルールや規律は、会社の中で明確に定められた、守るべき行動や態度を示すものです。
これに対し、常識は「言わなくてもわかる」とされる、共通的な社会的な価値観や行動の範疇を指します。
会社のルールや規律を破ることは、簡単に指摘や訂正が可能です。しかし、常識が欠けている場合、指摘が難しく、同僚や上司とのあいだに摩擦が生じることもあるでしょう。最近は、常識がなく、言わないとわからない社員が増えているために、経営者や上司としては悩みを抱えることになります。では、言わないとわからない人に対して、どうアプローチしたらいいでしょうか。
選択肢1:すべての「常識」をルール化
最も簡単に考えられる方法は、その「常識(=本来、言わなくてもわかること)」を明文化し、明確なルールとして伝えることでしょう。経営の仕組み化という観点から言うと、これが正しいアプローチのように思えます。しかし、これあまりお勧めできません。
ルールとすべき事項には限りがない
「すべての常識をルール化する」というアプローチには、実はいくつかの限界と課題が存在します。その理由は、ルールとすべき事項には限りがないからです。
なにかひとつをルール化するということは、それ以外のものをルール化しないという選択をしたことと同じです。
たとえば、子供に対して「廊下を走らない」というルールを設けると、それは「教室で走らない」というルールを作っていないことになり、子供は教室で走り回るようになります。となると、次には「教室では走らない」というルールを作らざるを得ないことになります。
以下同様に、際限なくルールを作ることになり、最終的にはルールが多くなりすぎ、形骸化します。
■常識とはなにか判定できない理由
これはコンピューターに物事を教えるという行為にたとえることができます。
コンピューターに猫の画像を見せて、それを「猫」であると認識させるにはどうすればいいか。従来は、「猫」の特徴をリストアップし、それをコンピューターに教えることで猫を認識させようとする試みをしていました。
たとえば、「ヒゲがある」「4本足である」という特徴を与えて「猫」を認識させようとします。この2つの特徴だけでは、猫と犬の区別が付きません。そこでさらに「耳が立っている」という特徴を与えてみます。すると猫と犬の区別はつくかもしれませんが、猫とキツネの区別がつかなくなります。
以下同じように、どんどん特徴を与えますが、結局のところ、猫にも個体差があるのでそれらをすべてを特徴づけするのは難しいのです。
ここで「猫」を「常識」に置き換えてみましょう。
「常識」を教え込もうとして、さまざまなルールを作っても、彼らには「常識」がなにかを判定できないのです。
《最新のDX動向・人気記事・セミナー情報をお届け!》
≫≫≫DXナビ メルマガ登録はこちら