4―現在のところ、価格よりサステナビリティ優先の消費者は少数派、企業等は丁寧な属性把握が必要
本稿ではニッセイ基礎研究所の調査に基づき、消費者のサステナビリティに関わる意識について考察した。その結果、必ずしも内容まで十分に理解されているわけではないが、現在では「SDGs」は実に7割の消費者が耳にするようになっていた。
なお、キーワードの認知状況で上位にあがり、理解度も高かった「ヤングケアラー」は、現在、中高生のクラスに1~2人は存在する状況であり、昨年来、政策として支援策が強化されている。
本来、勉強や部活動などに集中できる時期に家事や介護、育児などの負担の大きな状況は、心身の発達や人間関係、進路などに影響を及ぼす。
将来を担う世代の生活環境の改善は、持続可能な社会を維持する上で非常に重要な課題であり、今後、高齢化や核家族化が一層、進行する中で、ヤングケアラーの早期発見やサポートが強く求められる。
また、キーワードの認知状況について1年半前と比べると、新型コロナウイルス感染症の5類引き下げ以降、消費者意識が外へ向かうことで、サステナビリティへの関心が僅かながら弱まりつつも、内容についての理解は深まっている傾向もうかがえた。
属性別には、男性では企業活動、女性では日常生活に関わるキーワードの認知度が高く、年齢は高いほど、世帯年収は高いほど全体的に認知度が高い傾向があった。
サステナビリティに(も)関わる消費行動については、エコバッグの持参や詰め替え製品の購入などプラスチックごみが出にくい行動は浸透しつつある一方、現在のところ、価格よりもサステナビリティを優先して製品を選ぶ消費者は1割に満たなかった。
物価高が続く中では低価格志向は高まりがちであり、他の行動(モノを長く使う、リサイクルなど)でも貢献できるという側面もあるのだろう。
属性別には、男性より女性で、また、高年齢ほど積極的に取り組む傾向があり、70~74歳では価格よりサステナビリティを優先する行動が約2割を占めた(ただし、ネットモニターであることを考慮する必要あり)。
また、世帯年収については、認知度で見られたほど大きな違いはないが、省エネ家電の購入などは高年収層で多い傾向があった。
なお、よく世間ではZ世代のサステナブル意識の高さが取り上げられるようだが、当調査では、Z世代などの若者より、シニアの方がサステナビリティに関わるキーワードを理解しており、日頃の取り組みでも積極的な傾向が見られた。
企業や自治体のサステナビリティに関わる広報活動などを眺めると、「サステナブル意識が高いZ世代をターゲットとしている」ような印象を受ける。
しかし、当調査に基づけば、この理解は必ずしも正しいものではなく、「Z世代は昔の若者と比べればサステナブル意識が高いが、現時点を比べれば年齢が高いほどサステナブル意識は高い」という理解が妥当だ。
将来的には、すべての消費者にとってサステナビリティという観点が重要になっていくのだろうが、サステナビリティより価格を優先する消費者が大半である現在では、消費者の特徴を丁寧に捉えて訴求をしていく必要がある。
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