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遺産相続ではいかに多くの遺産をもらうかに関心が集まりがちですが、遺産相続を放棄(=相続放棄)したほうがいいケースがあります。みていきましょう。

相続は放棄することができる

相続放棄とは、相続の権利を放棄して遺産を一切受け取らないことをいいます。

 

亡くなった人の遺産は、配偶者や子供など相続人が相続します。ただし、相続人は必ず遺産を相続しなければならないわけではなく、相続しないこともできます。相続放棄した人は最初から相続人でなかったことになり、他に相続人がいればその人たちだけで遺産を分け合うことになります。

 

相続放棄したほうがいい、2つのケース

相続放棄をすると遺産を一切受け取ることができなくなります。それでもあえて相続放棄をした方がよいケースがあります。たとえば次のような場合です。

 

故人の借金の返済を免れたいケース

次のような場合は、相続放棄で借金の返済を免れることができます。

 

●故人に多額の借金があった

●故人が誰かの借金の連帯保証人になっていた

 

遺産相続では、預貯金や不動産などプラスの財産をもらうだけでなく、借金などマイナスの財産も引き継がなければなりません。したがって、相続人は故人の借金を返済する義務があり、借金の額が大きい場合は自身の財産を持ち出すことになってしまいます。

 

故人が誰かの借金の連帯保証人になっていた場合は、相続人が保証債務を引き継ぎます。ただちに返済義務が生じるわけではありませんが、借金をしている人が返済できなくなった場合は、保証債務を引き継いだ相続人が返済しなければなりません。

 

相続放棄をすれば、プラスの財産をもらわないかわりに借金や保証債務も引き継がなくてよいため、借金の返済を免れることができます。

 

ただし、相続人が全員で相続放棄をしても借金や保証債務が消えるわけではありません。他の親族が新たに相続人になって、その人が借金や保証債務を引き継ぐことになります。このような場合は、新たに相続人になる人に連絡するなどの配慮が必要です。

 

遺産相続のトラブルを避けたいケース

次のような場合では、遺産相続の手続きやそれにかかわるトラブルを避けるために相続放棄を利用することがあります。

 

●事業承継のため特定の相続人に遺産を集中させたい

●遺産が少ないので煩雑な手続きやトラブルを避けたい

 

故人が企業オーナーや自営業者であれば、事業の後継者に遺産を多く継がせた方が事業基盤は安定します。このように特定の相続人に遺産を集中させるのであれば、他の相続人が相続放棄をすることでその後の手続きを円滑に進めることができます。

 

遺産分割協議でも特定の相続人に遺産を多く継がせることはできますが、遺産分割協議書など必要書類が増えて相続手続きが煩雑になります。

 

遺産の額が少ない場合では、遺産相続の煩雑な手続きやトラブルを避けるために相続放棄をすることもできます。

 

相続放棄をした人は遺産分割協議に加わる必要がないため、トラブルに巻き込まれる心配はなくなります。外国など遠隔地に住んでいる人にとっては、話し合いのための連絡や書類のやり取りにかかる手間が省けることもメリットです。

 

【遺産相続のトラブルを避けるもう一つの方法】

遺産相続のトラブルを避ける方法には「相続分の譲渡」もあります。相続分を有償で譲渡すれば、遺産相続のトラブルに巻き込まれることなくお金をもらうことが可能になります。

 

相続分の譲渡は、自身が相続した遺産を譲渡するのではなく、相続人の地位そのものを譲渡します。譲渡する相手は他の相続人だけでなく第三者でも可能です。譲渡は有償でも無償でもよく、他の相続人の同意は必要ありません。

 

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本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。

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