夫からの最後の贈り物「生命保険金4,000万円」を受け取った妻の悲劇…2年後に税務調査でまさかの「追徴課税500万円」のワケ【税理士が解説】

夫からの最後の贈り物「生命保険金4,000万円」を受け取った妻の悲劇…2年後に税務調査でまさかの「追徴課税500万円」のワケ【税理士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

節税対策として有効な「生命保険金」ですが、契約内容次第では税務調査によってあとから多額の追加徴税が発生してしまうケースがあると、税理士事務所エールパートナーの木戸真智子税理士はいいます。具体的にはどのようなケースなのでしょうか。本記事では、Aさんの事例とともに生命保険契約時の注意点について解説します。

単身赴任中の夫が突然死、生命保険金を受け取ったが…

ここで事例を挙げて解説します。

 

Aさん 56歳 会社員

妻   51歳 専業主婦

長男  25歳 会社員

長女  21歳 大学生

 

Aさんは関東近郊の一戸建てに住んでいましたが、2年前に、東京の本社から大阪の子会社に役員として出向することになりました。定年も少し先に見えてきたところで、マイホームの完済もあと数年。そして、出向は3年もすればまた戻ってくるだろうということで、家族での話し合いの結果、単身赴任をすることにしました。

 

Aさんは、家のことはいままで妻に任せていたため、久しぶりの一人暮らしで慣れない家事に戸惑いながらも、残業や部下との飲み会で毎日忙しい日々を送っていました。

 

なにより、大学を卒業してからずっと一筋にいまの会社に勤め続けてきて、子会社での役員という役職にも就いたことで、定年まであと少し、仕事をやり切りたいという気持ちが強くありました。

 

そんな日々を送っていた矢先に、思ってもいない不幸が起きてしまいます。

 

Aさんは心不全を発症し、運び込まれた病院でそのまま還らぬ人となりました。単身赴任で、日ごろの体調管理ができない状況にあったことに、家族も大変悲しい気持ちになりました。しかし落ち込んでばかりもいられません。Aさんの仕事に対する信念や信頼、そして家族への想いをしっかり受け取り、家族みんなで気持ちの整理をしていくことにしました。

 

Aさんは家族のことを第一に考えて、仕事一筋で過ごしてきたため、そばで専業主婦として支える妻は家計をしっかり管理していました。夫婦で話し合い、家計を支えるAさんの万が一のときにはお金に困らないよう、備えも十分にしていました。設定していた死亡保険金の額は4,000万円です。

 

悲しいことですが、これが夫から妻をはじめとする家族への最後の贈り物となったのでした。

夫からの最後の贈り物に「課税漏れ」が発覚

周囲の人達に助けられながら、相続税の申告も無事に終えることができました。

 

それから2年後、税務署から突然の連絡が……生命保険金の課税漏れがあるとのことです。死亡保険金はしっかり申告して、そのほかの書類も不備なく、すべて添付して申告していたはずです。Aさんの妻は驚きました。

 

相続税の対象となる生命保険金は被相続人の死亡保険金だけではないのです。妻が被保険者の生命保険金も対象になるとの指摘を受けました。

 

その課税漏れとされた財産は2,500万円追徴課税は約500万円を超える額になってしまいました。どういうことなのかと確認すると、

 

被保険者 妻

保険契約者 妻

保険金受取人 夫

 

このような生命保険契約をしていました。毎月保険料を支払っていましたが、妻は専業主婦なので、保険料はAさんの口座から引き落とされていました。これが指摘を受けるポイントとなっていたのです。もちろんこの生命保険金はAさんの相続発生時点では保険金の支払いはありません。

 

しかし、保険料を負担していたのはAさんなので、実際に保険金の支払い事由が発生していなくても、生命保険契約に関する権利を相続したものとみなして相続税の対象となるのです。

 

次ページ「まだ支払われていない」生命保険金の相続税はどう計算するのか?

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