【インボイス制度の事前準備】国税庁のチェックシートは項目が多くてわかりにくい…⇒税理士「これぐらいで十分です。」最低限やるべき“4つ”を厳選解説

【インボイス制度の事前準備】国税庁のチェックシートは項目が多くてわかりにくい…⇒税理士「これぐらいで十分です。」最低限やるべき“4つ”を厳選解説
(※写真はイメージです/PIXTA)

本記事では、インボイス登録した事業者が制度開始に向けてやっておくべき「4つの事前準備」について、板山翔税理士がわかりやすく解説します。

 

――インボイス登録はできましたが、インボイス制度開始に向けて、どんな準備をしておけばよいですか?

 

板山翔税理士:「インボイスの受け渡し方法と、インボイスの保存方法を決めておく必要があります。売手として①インボイスの発行と②写しの保存をどうするか、買手として③インボイスの取得と④インボイスの保存をどうするか、4つの事前準備のやり方を解説していきますね。」

国税庁の事前準備チェックシートは項目が多くてわかりにくい…

 

とうとうインボイス制度が始まる10月1日まであと1ヵ月を切りましたね。

 

事前に何を準備しておけばよいのか、国税庁が作成している「インボイス制度への事前準備の基本項目チェックシート」を確認してみたのですが、万人向けに作られているためチェック項目が多く、結局自分は何をすればよいのかがわかりにくかったです。

 

そこで今日は、対象をインボイス登録した事業者に絞って、最低限やらないといけない4つの事前準備ついて解説します。

 

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<インボイス制度の4つの事前準備>

①インボイスを作成する(売手側の準備)

②インボイスの写しの保存方法を決める(売手側の準備)

③インボイスの取得が必要な取引を確認する(買手側の準備)

④インボイスの保存方法を決める(買手側の準備)

 

※2割特例や簡易課税制度を使って消費税を計算する年度については、買手側の準備③、④は不要です。

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売手側の準備

【①インボイスを作成する】

インボイス(適格請求書)とは、売手が買手に対して、預かる消費税の金額などを正確に伝えるための書類です。

 

インボイスには、消費税を納めている課税事業者であることを示す登録番号など、6つの記載事項を記載しなければなりません。

 

インボイスは適格請求書と呼びますが、6つの記載事項が記載されていれば、領収書、レシート、納品書など請求書以外の書類であっても、インボイスとして使えます。

 

買手にインボイスの発行を求められたときには、売手はインボイスを発行しなければならない義務がありますので、当然いずれかの書類はインボイス対応させておかなければなりません。

 

また、よく使う請求書と領収書はインボイス対応させておくなど、すべての買手にインボイスが届くようにしておけば、お互いに手間が省けます。

 

【②インボイスの写しの保存方法を決める】

発行したインボイスの写しも保存義務がありますので、どのように保存するか決めておく必要があります。

 

写しは発行したインボイスの複写に限らず、インボイスの記載事項が確認できる程度の書類あればOKです。例えば、複数のインボイスの記載事項が確認できる一覧表や、レジのジャーナルなどを印刷して保存しておくだけでも大丈夫です。

 

また、市販の請求書発行システムなどを使って、一貫してパソコンでインボイスを作成している場合は、印刷せずにデータで保存しておくこともできます。

 

しかしその場合、操作説明書や事務処理マニュアルなどを備え付けておき、税務署からデータの提示・提出を求められたときにすみやかに対応できるようにしておかなければなりません。

 

操作説明書はオンラインマニュアルやオンラインヘルプなどでも構いませんが、事務処理マニュアルは自社で作成するしかないので、次の国税庁ホームページよりサンプルをダウンロードして作り変えてください。↓

 

https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/0021006-031.htm

※『国税関係帳簿に係る電子計算機処理に関する事務手続を明らかにした書類(概要)』という名前のWordファイルです。

買手側の準備

【③インボイスの取得が必要な取引を確認する】

商品・サービスを購入したとき、原則としてインボイスを取得して保存しておかなければ、消費税10%分の仕入税額控除を受けることができません(※2割特例や簡易課税制度を使って消費税を計算する年度については、売上で預かった消費税のみから納税額を計算するため、買手側の準備③、④は不要です)。

 

インボイスが発行できない免税事業者から商品・サービスを購入した場合、消費税10%分の仕入税額控除を全額受けられなくなるわけではなく、令和5年10月1日から3年間は、消費税8%分の仕入税額控除は受けることができます(軽減税率の場合は消費税8%分の80%である6.4%の仕入税額控除が受けられます)。

 

インボイスの発行の有無によって仕入税額控除の割合が10%か8%か変わるので、日ごろから取引している仕入先や外注先については、インボイスの発行の有無、インボイスの受け渡し方法などを確認しておきましょう。

 

また、インボイスを受け取ることが困難である次の取引については、インボイスを保存しなくても、帳簿に一定の事項を記載すれば10%分の仕入税額控除が認められます(たとえ支払先が免税事業者であっても10%の仕入税額控除が受けられます)。

 

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<インボイスの保存が不要である取引>

●税込3万円未満の公共交通機関の利用(1回の取引金額で判定)

●入場券等が使用の際に回収される取引

●税込3万円未満の自販機からの商品の購入(「〇〇市 自販機」など所在地の帳簿記載が必要)

●郵便切手類(郵便ポストで差し出されたものに限る)

●従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等(出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当)

●古物営業、質屋、宅地建物取引業、再生資源卸売業などを営む者の一定の棚卸資産の購入(一部所在地の帳簿記載が必要)

※帳簿に「3万円未満の鉄道料金」「入場券等」など上記の取引に該当する旨の記載が必要になります。

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さらに、売上が一定規模以下の事業者(基準期間における課税売上高が1億円以下又は特定期間における課税売上高が5千万円以下)については、税込1万円未満の少額取引であればインボイスの保存が不要になる少額特例もあります(たとえ支払先が免税事業者であっても10%の仕入税額控除が受けられます)。

 

この少額特例が適用できる期間は令和5年10月1日から令和11年9月30日までの期間で、税込1万円未満であるかどうかは、公共交通機関の利用と同様、1回の取引金額で判定します。

 

5,000円の商品と7,000円の商品を、1回の取引で購入すれば1万円以上となるためインボイスの保存が必要ですが、別々の取引として購入・精算すればインボイスの保存は不要になるということです。

 

【④インボイスの保存方法を決める】

仕入税額控除を受けるためにインボイスの保存が必要なだけでなく、インボイスの有無によって会計ソフトの入力方法が変わるため、請求書はインボイスとインボイス以外のもので分けて保存するなど、入力や確認作業がスムーズに行える保存方法を検討しましょう。

 

家賃の引落のように、取引の都度請求書や領収書が発行されないものについては、「契約書」「インボイスの登録番号の通知」「通帳」などの複数の書類を組み合わせてインボイスの6つの記載事項を満たすケースもありますので、それらはまとめて保存しておく必要があります。

 

インボイスではない免税事業者が発行した請求書や領収書等についても、保存しておかなければ消費税8%分の仕入税額控除が受けられなくなってしまいますので、破棄しないようにご注意ください。

 

また、令和6年1月1日から、電子帳簿保存法の電子取引データ保存というルールによって、紙ではなくPDFなどのデータで受け取った請求書や領収書等は、インボイスであってもそうではなくても、データのまま保存しておくことが必須となります。

 

請求書をメールで受け取るような場合だけでなく、Amazonなどネットで商品を購入した場合も領収書等はデータでしかダウンロードできないことが多いため、そのデータを保存しておかなければなりません。

 

データで受け取った請求書や領収書等は、印刷して「紙+データ」で保存するか、印刷はせずに「データのみ」で厳格に保存するか、いずれかの選択をせまられます。

まとめ

少し長くなりましたが、4つの事前準備の解説は以上です。色々と面倒なインボイス制度ですが、力を合わせて乗り越えて行きましょう!

 

 

板山 翔

板山翔税理士事務所 代表、税理士

 

おそらく日本初の「オンライン専門の税理士事務所」の創設者。自社の事業を「税理士業」ではなく、「経営に必要な情報をオンラインで提供する事業」と捉え、経営戦略コンサルタントとしても活動している。従業員5名以下の小さな会社の経営者を中心に、「小さな会社だからこそできる差別化戦略」の立て方や、「短期間で売上アップするためのマーケティング戦略」、「長期的に資産を形成していくための財務戦略」などを教えている。

 

 

 

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