画像:PIXTA

旅するように働き、稼ぐ。リゾート地での仕事を通じて、そんな生活を満喫する人たちがいる。サラリーマンを卒業して精神的に豊かな暮らしを取り戻した人、勤務したリゾート地が気に入って移住してしまった人。リゾート地での仕事を転々としながら日本一周を目指すインフルエンサー。旅するように働く人たちの形は様々だ。この連載では、リゾートバイトを通じて精神的にも金銭面でも豊かな生活を目指す人たちを紹介していく。第一回目は、ゲストハウスを経営する傍ら、閑散期にリゾートで働く関根智典・明美ご夫妻を取り上げる。筆者はリゾートバイト大手、ダイブ(東京・新宿)の原由利香氏。

東京の会社員からフリーのデザイナー、ゲストハウス経営へ

エメラルドグリーンの海とサンゴ礁に囲まれた沖縄県・小浜島。波が穏やかで海水浴のメッカでもあります。NHKで放映された朝の連続テレビ小説「ちゅらさん」の舞台にもなった、この島の高級リゾートホテルのレストランが、関根智典さん(63)の2022年冬の勤務先でした。小浜島の前は西表島や久米島でもリゾートバイトを経験し、南の島を満喫しています。

 

智典さんは、もともとは会社員でした。美術大学を卒業して東京・四谷三丁目にある広告関連のプロダクションに就職。グラフィックデザイナーとして働いていました。26歳で一念発起し、デザイナーとして独立。大手食品メーカーやファストフード店、金融機関などのデザインを手掛けてきました。しかし、「50歳近くになると、クライアントの担当者が世代交代してしまい、東京で働くことがしんどくなってきた」(智典さん)。

 

そこで茨城県に移り住み、笠間市の観光協会でパンプレットのデザインを請け負うことになりましたが、半年経ったところで東日本大震災が発生。仕事を失ってしまいました。宅配会社の倉庫で働いたこともありましたが、最後にたどり着いたのが和歌山県の元町営の温泉旅館。そこで支配人として働きました。

 

この仕事を通じて智典さんは「大衆演劇を開催したり、HPやSNSなどで広告宣伝をしたりした。旅館を利用される方とのコミュニケーションに宿泊業の面白さを感じた」と言います。「自分でゲストハウスを開こう」と思ったのもこの時。さっそく高野山で有名な和歌山県高野町の古民家をリノベーションし、開業することにしました。

「愛娘に誘われ」57歳でリゾートバイトへ。シニアにもニーズ

ところが高野山の冬は厳しく、道路が凍結してしまうこともしばしば。積雪も多く、営業自体が難しいと思っていたところに、沖縄県の大学に通っていた娘さんが「お父さんは寒いのが苦手だから、冬は沖縄でアルバイトでもしたら」と誘ってくれました。智典さんはこれを機に、リゾートバイトの世界に飛び込もうと決めました。

 

「沖縄でリゾートバイトをしよう」と決めた時の年齢は、すでに57歳。ほかのスタッフが20~30代と若いことが多いためか、当初は智典さんが宿泊施設のバイトに直接応募しても断られてばかりでした。その時に知ったのが、リゾートバイトを派遣しているダイブでした。「自分のゲストハウスの閑散期である冬だけ働きたい」と相談してみました。

 

しっかりした立ち振る舞いを重視する高級ホテルなどでは、「人生経験の豊富なシニアの方々を採用したい」という企業も少なくありません。最初に決まったのは、沖縄の久米島にあるホテルのレストランのチーフの仕事。3ヵ月の契約が満了した後、臨時支配人として8ヵ月勤めることになったそうです。この間は高野山のゲストハウスの仕事を2週間ずつ勤務する「二刀流」でした。

次ページ夫婦で沖縄や北海道でリゾートバイト、休みに観光

※本連載は、P&Rコンサルティング編集協力のもと作成しております。

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