「正社員至上主義」だった
「人生は『安定』が大事。正社員以外の仕事につくのは、ありえないと思っていた」「派遣社員は、安定していない仕事だと決めつけていた」。こう話すのは、山形県米沢市出身の山本しおりさん(仮名、24歳)。その言葉の通り、山本さんは地元の高校を卒業した後、すぐに栃木県鬼怒川の大手ホテルに正社員として就職。4年にわたり、仲居や予約センターでの顧客対応に携わりました。
ホテルに就職したのは、高校生の時のアルバイトを通じて「人と接する仕事に関わりたい」と思っていたからだと言います。両親から「一度は一人暮らしを経験した方が良い」と言われたことから、地元を離れることにした山本さん。しかし、「山形のような田舎が好き」という理由から、自宅から車で3時間程のところにある、鬼怒川の宿泊施設を就職先に選んだそうです。
リゾートバイトでの「先輩たち」との出会い
「正社員以外の働き方に偏見があった」という山本さんが大きく変わったのは、就職先のホテルの休憩室での、他の従業員とのおしゃべりがきっかけでした。そこで山本さんが興味を持ったのが、リゾートバイトで派遣されてきた佐藤つぐみさん(仮名)でした。
同年代の気安さもあり、思い切って声をかけてみると、佐藤さんは「留学のためにリゾートバイトをしている」と、自分のことを詳しく教えてくれました。「多くのリゾート地で楽しみながら働き、経験を重ねながら留学資金を貯めているのよ」。いきいきと自分の現在の生き方について話す佐藤さん。山本さんは、その考え方や行動力に感心すると同時に、「正社員かどうかではなく、自分が何をしたいかが大事だ」と思うようになったそうです。
休憩室では別の出会いもありました。正社員を辞めてリゾートバイトに転身した30代の高山恵梨香(仮名)さんです。
高山さんは、働きながら海外生活を体験できる「ワーキングホリデー」を目指していました。会社を退職してオーストラリアに渡航するまでに時間が空いたので、リゾートバイトをしていたそうです。彼女たちとの出会いを通じて、山本さんは「私も若いうちにいろいろなことに挑戦し、多くの経験をしてみたい」という気持ちがふつふつとわいてきました。相談したところ、お父さんも「若いし、いろいろな経験をしてみたら」と背を押してくれました。