なぜ紙オムツとビールを一緒に買うのか?
ある海外スーパーの有名な話ですが、お客様の購入データから「紙オムツを買った女性は、缶ビールも一緒に買っている」という事実が読み取れたそうです。それに対し、「紙オムツを買う女性が缶ビールを買うには何か因果関係があるのでは?」と考えてみたのですが、実際のところはわかりません。
そこでお店のお客様に聞いてみたら、なんてことはない。ただ単に「普段は重くて買えないものを、週末に夫と車で買いに来て、まとめ買いしているだけ」だったそうです。それなのに、「最近の小さなお子さんのいる家庭は、意外とビールを飲むのではないか?」といった予測を立て、「小さなお子さんのいる若い女性向けのビールを発売しよう」なんていうことをすると、大失敗するでしょう。
お客様に質問してわかったことは、 「紙オムツの箱は大きいから、たいていは週末に車で来たときに買っていく。ついでにビールも重いから、そのときにまとめて買っていく」ということなのです。ならば、ペットボトルの水とか、大きな洗剤とか、そういう“車でまとめ買いしたい商品”を近くに置いておけば、売れる可能性があります。また、まとめ買いしやすいように大きなカートを用意するなど、駐車場に商品を運びやすい工夫をすれば、お客様から喜ばれる結果になるでしょう。
いずれにしろ、 「何が売れた」とか「何が売れなかった」というデータからだけでは、お客様の心理を読み取ることはできないのです。「なぜ購入したのか?」を知って初めて、「お客様目線」は明らかになります。
「相手は何もわからないのだ」という視点に立つ
プロ目線というと、仕事をしている側からすれば、「いいこと」のように思えるかもしれません。
でも、それは大学の先生が、素人にはわからない専門用語で話すのと同じ。自分は専門家だからわかっていても、相手はまったくわからないことがよくあるのです。するとお客様からすれば、ついていけなくなってしまいます。
この例でよくあるのが、ITの業界でしょう。マニュアルには「詳細はホームページで説明しています」とよくありますが、ホームページを見ても難解で、意味がわかりません。結局、どこか、わかりやすく解説しているサイトを探すことになってしまいます。
政府が発行したマイナンバーのポイント登録でも、同じことが起こっていました。商品を売りたい、あるいは普及させたいのであれば、 「相手は何もわからないのだ」という視点に立ち、相手がわかる言葉を使って、わかりやすい説明を心がけなければいけません。まさに“子供でもわかる”ように。このプロ目線は、決してITのような難しいレベルの話でなく、ごく普通の日常でも起こっているのです。
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