(※写真はイメージです/PIXTA)

「データだけ」でお客様の購買心理を推し量ることは、しばしば予期しない結論を導き出すリスクを抱えている、と販促コンサルタントである岡本達彦氏は言います。岡本氏の著書『お客様目線のつくりかた:顧客視点は仕組みで生み出せる』(悟空出版)より、一部抜粋して紹介します。

なぜ紙オムツとビールを一緒に買うのか?

ある海外スーパーの有名な話ですが、お客様の購入データから「紙オムツを買った女性は、缶ビールも一緒に買っている」という事実が読み取れたそうです。それに対し、「紙オムツを買う女性が缶ビールを買うには何か因果関係があるのでは?」と考えてみたのですが、実際のところはわかりません。

 

そこでお店のお客様に聞いてみたら、なんてことはない。ただ単に「普段は重くて買えないものを、週末に夫と車で買いに来て、まとめ買いしているだけ」だったそうです。それなのに、「最近の小さなお子さんのいる家庭は、意外とビールを飲むのではないか?」といった予測を立て、「小さなお子さんのいる若い女性向けのビールを発売しよう」なんていうことをすると、大失敗するでしょう。

 

お客様に質問してわかったことは、 「紙オムツの箱は大きいから、たいていは週末に車で来たときに買っていく。ついでにビールも重いから、そのときにまとめて買っていく」ということなのです。ならば、ペットボトルの水とか、大きな洗剤とか、そういう“車でまとめ買いしたい商品”を近くに置いておけば、売れる可能性があります。また、まとめ買いしやすいように大きなカートを用意するなど、駐車場に商品を運びやすい工夫をすれば、お客様から喜ばれる結果になるでしょう。

 

いずれにしろ、 「何が売れた」とか「何が売れなかった」というデータからだけでは、お客様の心理を読み取ることはできないのです。「なぜ購入したのか?」を知って初めて、「お客様目線」は明らかになります。

「相手は何もわからないのだ」という視点に立つ

プロ目線というと、仕事をしている側からすれば、「いいこと」のように思えるかもしれません。

 

でも、それは大学の先生が、素人にはわからない専門用語で話すのと同じ。自分は専門家だからわかっていても、相手はまったくわからないことがよくあるのです。するとお客様からすれば、ついていけなくなってしまいます。

 

この例でよくあるのが、ITの業界でしょう。マニュアルには「詳細はホームページで説明しています」とよくありますが、ホームページを見ても難解で、意味がわかりません。結局、どこか、わかりやすく解説しているサイトを探すことになってしまいます。

 

政府が発行したマイナンバーのポイント登録でも、同じことが起こっていました。商品を売りたい、あるいは普及させたいのであれば、 「相手は何もわからないのだ」という視点に立ち、相手がわかる言葉を使って、わかりやすい説明を心がけなければいけません。まさに“子供でもわかる”ように。このプロ目線は、決してITのような難しいレベルの話でなく、ごく普通の日常でも起こっているのです。

 

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「お客様目線のつくり方」

「お客様目線のつくり方」

岡本 達彦

悟空出版

この本は、ビジネスの現場で「お客様目線」を持つことの重要性と、その実現方法を体系的に探るもの。「お客様目線」を適切に理解し、それを自社の経営やサービスにどう取り入れるかという具体的な手法を詳細に解説しています。…

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