サービスを提供する上で、「お客様を絞る」ことをしないと、誰からも魅力を感じてもらえなくなることは多々ある、と販促コンサルタントである岡本達彦氏は言います。岡本氏の著書『お客様目線のつくりかた:顧客視点は仕組みで生み出せる』(悟空出版)より、一部抜粋して紹介します。
「お客様を切り捨てる」という選択
すべてのお客様を満足させようとすることで、結局、誰も満足しないサービスになってしまうことはよくあります。とくに現代は、お客様の好みも複雑化、細分化しています。だからどこかで自分たちがサービスを提供したいお客様を絞らない限り、誰からも魅力を感じてもらえなくなることはよくあるのです。
むろん、「お客様を絞る」ということは、一定のお客様を切り捨てることになりますから、経営者や店主からすれば、勇気ある選択となることも多いでしょう。でも、お客様の意見を聞けば、それが何度も来てくれるお客様たちの、大きな希望であることにもすぐに気づくのです。むしろその意見こそ、自分たちが気づいていなかった、自分たちの本当の魅力であることも少なくありません。
あるケーキ教室で起きたこと
たとえば関東にあるケーキ店で開催していた、ケーキ教室の話です。そこでは、初心者コース、中級コース、上級コースという形で、さまざまなコースをつくって教室を展開していました。その中でも「趣味でケーキがつくれるようになりたい人が多いだろうな」ということで、初心者コースを主力にしていたのです。
でも、改めてお客様に「教室に参加するまでどんなことをお考えでしたか?」と聞いてみると、じつは「このお店のように、ケーキ店をつくっていつか独立したい」と願っている人が非常に多かったのです。中途半端に「趣味でケーキをつくりたい」という人は、生徒としては思った以上に定着していませんでした。
そこで思い切って、初心者コースを少なくする一方で、「プロとして始めたい」という人のために、技術を教えるだけではなく、開店に向けた準備や運営方法、あるいはマインドを学べる、本格的な講座を開催することにしたのです。カリキュラムも増やし、参加費も5倍くらいの高額にしました。
しかし5倍の値段にもかかわらず、申し込みが殺到し、すぐに満席に。教室の開催日は減っているのに、トータルの売上はなんと1.5倍になったのです。すべてのお客様を相手にするのでなく、むしろ「絞る」というのは、お客様側の要望であることも多いのです。
「お客様を絞るべき」なのは商品やサービスだけではない
「お客様を絞るべき」というのは、商品やサービスのみの話ではありません。お客様を呼び込むための、広告媒体についても言えることです。その昔は、テレビ広告や新聞広告で、ある程度の人を押さえることができました。でも、今はテレビを見ない若い人は多いし、SNSばかりやっている人もいれば、ユーチューブばかり見ている人もいるわけです。
ですからこれからの時代は、ますます、すべてのお客様を満足させることは難しくなります。そこで「自分たちが対象にするお客様はどんな人たちなのか、自分たちが対象にするお客様はどんな媒体を見ているか」などを、今まで以上に正確に把握する必要が出てきているのです。
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株式会社アカウント・プラニング代表取締役
販促コンサルタント
広告制作会社時代に100億円を超える販促展開を見てきて培った成功体験をベースに、難しいマーケティングや心理学を勉強しなくてもアンケートから売れる広告をつくる広告作成手法を日本で初めて体系化する。お金をかけず簡単にできて即効性があることから、全国の公的機関や上場企業からセミナー依頼が急増。お客様目線の組織にするため、社内に仕組みとして取り入れたいという企業からのコンサルティングが後を絶たない。「アマゾン上陸15年、売れたビジネス書50冊」にランクイン。販促書籍のヒット作となった『「A4」1枚アンケートで利益を5倍にする方法―チラシ・DM・ホームページがスゴ腕営業マンに変わる!』(ダイヤモンド社)などを著書に持つ。
著者プロフィール詳細
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連載間違えない!的確な「お客様目線」の考え方・引き出し方の極意