2)国内金先物価格の展望
最後に先行きへ目を転じた場合、内外金相場を考えるうえでベースになるのは米金利の動向であり、そのカギを握るのがFRBの金融政策だ。
米国の物価上昇率は未だ高いものの、昨年半ば以降は概ね順調に低下基調を辿っている。コロナ禍による供給制約が解消したうえ、これまでの利上げの効果が浸透してきたためと考えられる。従って、FRBは今年11月初旬で利上げを打ち止めにする可能性が高いとみている。
FRBの利上げが打ち止めになったとの見方が市場に浸透すれば、市場参加者の目線は次の段階である利下げの開始へと移り、米長期金利は低下しやすくなる。米長期金利の低下がNY金先物価格の追い風になるだろう。
また、世界経済の下振れ懸念を背景とする「安全資産としての金需要」や国家間の構造的な対立を背景とする「準備資産としての金需要」はその後も続くとみられることもあり、NY金先物は秋以降、来年にかけて上昇基調になり、過去最高値を更新すると予想している。
一方、国内の金先物価格にとっては、米金利低下に伴うドル安(円高)圧力が逆風になりそうだ。日銀の金融政策正常化観測が燻ることも円高圧力になり得る。そして、その際には、「NY金先物価格の上昇(国内金の上昇要因)」と「ドル円レートの下落(国内金の下落要因)」の力比べの様相となり、その帰趨が国内金先物の方向性を決めることになる。
ただし、米国のインフレ鈍化は緩やかなペースとなり、FRBの利下げ開始には時間がかかりそうなこと(弊社では来年7月と予想)、日銀は7月にYCCの柔軟化を実施したばかりであり、今後、物価上昇率が低下していくと見込まれることを踏まえると、金融政策の正常化までにはまだ距離があると考えられることから、円高のペースは緩やかなものになりそうだ(具体的な予測値は8ページに記載)。
従って、(緩やかな)円高が上値を抑えるものの、NY金先物価格の上昇に下支えされる形で国内金先物価格は現状並みで高止まりすると予想している。中心的な見通しとしては、来年半ば時点で1グラム9000円台と予想している。
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