特例事業承継税制とは
まず、今回、経産省が延長を要望した「特例事業承継税制」とはどんなものか。事業承継において生じる「税金」の問題に触れながら解説します。
◆事業承継では「後継者の贈与税・相続税の負担」が発生する
事業承継とは、事業を後継者等の他の人に承継してもらうことです。主に、親族に承継させる場合と、従業員等の「アカの他人」に承継させる場合の2パターンに分かれます。また、個人事業主であれば事業用資産の承継、会社であれば自社株式等の承継ということになります。
さらに、経営者が生きているうちに「贈与」によって承継させる場合と、経営者が亡くなって「相続」によって承継させる場合とが考えられます。いずれも後継者には課税の問題が発生します。贈与によって承継する場合は「贈与税」、相続によって承継する場合は「相続税」です。
優良企業であればあるほど、後継者に課される贈与税や相続税は高くなります。なぜなら、業績が好調でキャッシュも潤沢にあるとなれば、事業用資産や株式等の評価額は高くなってしまうからです。
◆特例事業承継税制は後継者の税負担を「実質ゼロ」に
特例事業承継税制は、後継者の贈与税・相続税の負担を実質的に免除、つまり「ゼロ」にしてあげようというものです。厳密にいえば、後継者は贈与税または相続税について「納税猶予」を与えられます。そして、その後、後継者が事業を継続し、次の代に事業承継した段階で、納税義務が「免除」されます。
特例事業承継税制を利用するには、税理士等の「認定支援機関」の協力を得て「特例承継計画」を作成し、都道府県に提出する必要があります。また、承継後、一定期間、従業員の雇用の確保等の要件をみたすことが求められています。
事業承継税制はもともと、法人についてのみ2008年に導入されましたが(「一般措置」といいます)、税制優遇措置が不十分で、かつ、要件も厳しいということで、使い勝手が悪いと指摘されていました。そこで、2018年税制改正で導入されたのが「特例措置」(特例事業承継税制)です。この際、法人についてだけでなく、個人についても納税猶予の特例が新設されました。
法人に関する一般措置と特例措置の主な違いは【図表1】の通りです。