(※写真はイメージです/PIXTA)

「小規模宅地特例」とは、亡くなった人が自宅として使っていた土地を、配偶者か、亡くなった方と同居していた親族が相続した場合、土地の評価額を8割引きにできるという制度のことです。これにより相続税の大幅な圧縮が期待できます。今回は相続した宅地において「小規模宅地等特例」の適用が認められなかった事例について、税理士の伊藤俊一氏による著書『税務署を納得させるエビデンス 決定的証拠の集め方』シリーズ(ぎょうせい)より、同氏が解説します。

「小規模宅地特例」を受けるには?

Q

小規模宅地等特例における「居住の用に供されていた宅地」についてのエビデンスについて教えてください。

 

小規模宅地等に係る度重なる税制改正により現行制度においては、原則として特定居住用宅地等の特例が適用されるのは被相続人の居住用住宅1か所のみとなり、例外として生計一親族が居住用に使っていた住宅が別途ある場合、それも含まれる、となっています。

 

旧税制での裁判例ですが、居住の判定に関して代表的な裁判例を検証します。

〇最高裁判所第二小法廷平成21年(行ヒ)第157号相続税更正処分等取消請求上告受理申立事件(不受理)(確定)平成22年2月5日決定
【上告不受理/小規模宅地/「居住の用に供されていた宅地」の意義】
(TAINSコードZ260-11374)

 

事実認定については下級審平成21年2月4日判決を検証します。

 

相続した2つの宅地、どちらも住んでいたから減税を!と主張したが…

【要点】小規模宅地等の特例における、居住の用に供されていた宅地等は、2か所でも認められるとされた事例

 

本件における納税者(原告・被控訴人・上告人)は、相続により取得した2つの土地について、どちらも被相続人の居住の用に供していたとして、居住用宅地等に係る小規模宅地等の特例を適用して相続税の申告をしたのですが、所轄税務署長が、特例の対象となる宅地等は1か所しか認めないとして更正処分をした事例です。

 

争点は、特例の対象となる「居住の用に供されていた宅地等」とは「主として居住の用に供されていた宅地等」に限られるかどうかです。


地裁は、所得税においては「居住の用に供している家屋を二以上有する場合には、その者が主としてその居住の用に供していると認められる一の家屋に限る」(措令20の3②)と規定しているが、本件特例にはそのような制限はないと判示し、特例の対象となる宅地等は複数存在することも認められるとして、納税者の主張を認めました。

 

これに対して国側が控訴し、控訴審では国側の主張が認められました
なお、上告は不受理決定がなされています。

宅地での生活状況や設備の状況で総合的に判断される

【判決】(平成21年2月4日判決)(抄)

本件特例の「居住の用に供されていた」宅地に当たるかどうかについては、被相続人が生活の拠点を置いていたかどうかにより判断すべきであり、具体的にはその者の日常生活の状況、その建物への入居の目的、その建物の構造及び設備の状況、生活の拠点となるべき他の建物の有無その他の事実を総合勘案して判断されるべきである。

 

前記認定事実によれば、


・自動車を運転できない丁にとって、小城市家屋からでは、福岡へ仕入れに行ったり、佐賀市内に営業や買い物に行ったりするのに不便であったため、これを改善する目的で本件マンションを購入し、本件マンションには、電気、ガス、水道が供給されており、日常生活に必要な家具や電化製品も備えられており、生活の拠点として使用するに足りる設備が整えられていたことが認められる。

 

※編集部注:「丁」は亡くなった被相続人を示します。以下同

 

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次ページ特例適用のために納税者が税務署に提出しておくべきだった証拠

※本連載は、税理士の伊藤俊一氏による著書『税務署を納得させるエビデンス 決定的証拠の集め方』シリーズ(ぎょうせい)より一部を抜粋し、再編集したものです。

税務署を納得させるエビデンス 決定的証拠の集め方 3相続編

税務署を納得させるエビデンス 決定的証拠の集め方 3相続編

伊藤 俊一

ぎょうせい

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