32の主要都市で7月より「1リットル10円」以上の高騰
9月1日に発表されたのは、「小売物価統計調査(動向編)」のうち「自動車ガソリン価格」に関する調査結果です。これは、全国の政令指定都市をはじめとする81の主要都市での自動車ガソリン価格を調査したものです。2023年8月は7月と比べても多くの都市でガソリン価格が高騰しています。1リットルあたり10円以上値上がりした都市は32に及びます。値上がり幅が最も大きいのは埼玉県所沢市と神奈川県横浜市・横須賀市で1リットル14円となっています(【図表】参照)。
特に、公共交通網の発達していない地方では、クルマは日常の足として欠かせない交通手段なので、ガソリン価格高騰による経済的負担の増大はきわめて深刻です。だからこそ、政府には、ガソリン価格を抑えるために適切な対策を講じることが求められます。
政府は2022年1月から、「石油元売事業者」と「輸入事業者」に対し「燃料油価格激変緩和補助金」を支給し、これによって価格を抑制する政策をとってきました。一方で、ガソリン1リットルあたり53.8円徴収されている「ガソリン税」については、税率を維持してきました。
「トリガー条項」が発動すれば「1リットル25.1円」値下げだが…
ガソリン税については、本来、ガソリン価格が1リットル160円を超えた場合に自動的に税額が「1リットル28.7円」引き下げられる「トリガー条項」というしくみがあります。この「1リットル28.7円」というのは「本則税率」といわれます。つまり、本来ガソリン税はこの税率ですよ、ということです。
では、現在の「1リットル53.8円」が何なのかというと、「特例税率」です。特別の事情によって一時的にこの税率にしていますよ、ということです。しかし、実際には、この「1リットル53.8円」の特例税率(2009年までは「暫定税率」)は1974年から50年近く続いているのです。
トリガー条項は、それではさすがに不都合なケースもあるだろうということで、2010年に設けられたものです。ところが、その直後に東日本大震災が発生し、復興財源を確保するためという理由によって特別法が定められ「凍結」されています。
最近、「トリガー条項を発動すべきだ」という意見をよく耳にするようになっていますが、背景にはこういう事情があります。
JAFが指摘した「ガソリン税の問題点」とは
こんな状況のなかで、8月31日にJAF(日本自動車連盟)が声明を出しました。JAFはこれまでも毎年のように自動車関連税制の改善を促す意見書を提出していますが、それとは別に声明を出しています。それだけ、自動車ユーザーの不利益が看過できないほど大きいということかもしれません。
JAFの声明の骨子は以下の2点です(JAFホームページより)。
1. ガソリン税等に上乗せされ続けている「当分の間税率」を廃止すべき。
2. ガソリン税に消費税が課税されている「Tax on Tax」という不可解な仕組みを解消すべき。
「当分の間税率」「Tax on Tax」いずれも耳慣れない言葉ですが、ガソリン税に関する論点を端的にとらえており、ガソリン価格に関する政策を考えるうえで重要なことですので、解説します。