(※写真はイメージです/PIXTA)

マクドナルドのハンバーガーからガリガリ君まで、昨今の日本は物価高の大波に襲われ、まさに猫も杓子も値上がりの時代が到来です。日本政府は「緊急支援金」と銘打ち、貧困世帯に向けて5万円の給付を2022年に実施しましたが、2023年3月には追加策として、新たに予算5,000億円(事業者向け給付金と合わせると1兆2,000億円)を投入し3万円の給付を実施しています。

国民の悲鳴に応える施策が講じられていますが、実際に日本ではどれくらい貧困に陥っている人がいるのでしょうか。また、政府調査によるデータと現実にギャップはあるのでしょうか。

意外と知らない!? 日本で貧困に苦しむ人の割合

2021年に実施された調査『国民生活基礎調査』(厚生労働省)では、日本の貧困線は127万円です。貧困線に満たない所得水準の人口比率を示す相対的貧困率は15%です。

 

つまり統計上、10人に1人以上は貧困ということになります。学校でたとえると、1クラス40人のうち、6人が生活に困っているということになります。

貧困ラインの算出方法で変わる、貧困の定義

では、ここで言う貧困の定義とはどんなものでしょうか? まず、貧困線とは何かについて解説します。貧困線とは一般的に、「このラインに満たない所得では生活を維持できませんよ」という指標です。成人1人が1年間生活するのに最低限必要な食品・物品などの費用を積み上げて算出されます。

 

ところが、前出の調査が指す貧困線は、この算出方法で導かれたものではありません。OECD(経済協力開発機構)が設けた、もう1つの貧困線の算出方法が採用されたもので、ここでは「国民の所得(正確には等価可処分所得)の中央値の半分の数値」を貧困線と呼んでいます。

 

つまり、調査対象者である国民を、最も所得が高い人から順位をつけたとき、ちょうど真ん中にいる人の半分以下にあたる所得のラインを示しています。

 

ということは、あくまで「周りの人と比べたら所得が低い」ということを示しているにすぎないため、もし仮に好景気で、物価に対して国民が十分な賃金を得ているという状況下では貧困線以下の世帯であっても、衣食住に困ることのない生活を送っているという状況も有り得ます。

 

一方で、ご存じのとおり現在の日本はインフレが本格化し、電気・ガス・ガソリンなどのエネルギー、食品をはじめ、トイレットペーパーや洗剤などの生活必需品まで軒並み高騰しています。その大きなきっかけとなったのは、2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻です。下記をご覧ください。

 

【図表1】生鮮食品を除く総合、生鮮食品及びエネルギーを除く総合の指数及び前年同月比(総務省)

 

【図表1】は総務省が発表している消費者物価指数の統計です。消費者物価指数の総合指数は、2022年8月から2023年8月の1年で2.9%上昇しています。(102.7から105.6にポイントアップ)。また、この1年間、1度も前月比を下回ることなく右肩上がりの一途をたどっていることが分かります。

 

2.9%上昇というと単純計算で、1,000円の消費が1029円、10,000円の商品が10,290円になります。1ヵ月に積み重なる消費支出を考えたとき、この1年でどれだけ家計負担が急増しているかお分かりになるかと思います。

 

すなわち、現在の日本で所得が貧困線以下の世帯は、実際に生活が困窮している可能性が極めて高い状態にあると言えます。

 

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