8月分「小売物価統計調査」結果発表…ガソリン価格高騰さらに深刻化!決して下がらない「ガソリン税」に、「JAF」が発表した「声明」の中身とは【税理士が解説】

8月分「小売物価統計調査」結果発表…ガソリン価格高騰さらに深刻化!決して下がらない「ガソリン税」に、「JAF」が発表した「声明」の中身とは【税理士が解説】
(※画像はイメージです/PIXTA)

9月1日、総務省の「小売物価統計調査」のガソリン小売価格に関する結果が発表され、ガソリン価格高騰の深刻さが改めて浮き彫りになった。政府は「補助金」により対応してきたが、ガソリン価格に含まれる「ガソリン税」は手つかずのままだ。折しも前日にJAF(日本自動車連盟)がガソリン税の問題点を指摘する声明を発表した。ガソリン税をめぐる議論と今後の見通しについて、税理士・黒瀧泰介氏に話を聞く。

「当分の間税率」の2つの問題

まず、「当分の間税率」というのは、現在のガソリン税の税率「1リットル53.8円」をさします。JAFは「トリガー条項」の発動ではなく、一歩進んで特例税率自体を「廃止すべき」という提言を行っており、注目されます。この問題は2つに分けて考えることができます。

 

【「当分の間税率」の問題】

1. ガソリン税自体の存在意義の問題

2. 特例税率を維持する法的根拠の問題

 

◆ガソリン税自体の存在意義の問題

まず、ガソリン税自体について、2009年の時点で既に存在意義が失われているのではないかという指摘があります。

 

ガソリン税はもともと、税金の使い道が道路整備・維持管理に限定されていました。「道路特定財源」と呼ばれていたものです。なお、税金の使い道が限られていないものを「一般財源」といいます。道路特定財源には他に「自動車重量税」があります。

 

なぜ道路特定財源だったのかというと、ガソリン税が設けられた1950年代は、自動車はごく一部の金持ちが持っている「贅沢品」だったからです。国民の多くは自動車を運転しない。だから道路の整備や維持・管理は、自動車を持っている人に負担させよう、ということです。

 

その後、自動車が広く普及し、「贅沢品」ではなくなりました。それと同時に、道路も整備され、「道路特定財源」は大幅に余るようになりました。道路特定財源はこの時点で廃止や見直しをするという選択肢も考えられました。しかし結局、ガソリン税・自動車重量税は、2009年にほぼ同じ内容のままで「一般財源」へと移行されました。この時点で、理論的にはガソリン税の存在意義が変わっていることになります。

 

では、「一般財源」としてのガソリン税の存在意義は何かというと、実は、必ずしも明確ではありません。

 

政府は、ガソリン税等の制度を維持した理由として「厳しい財政事情」「環境面への影響の配慮」等を挙げています。しかし、「厳しい財政事情」というのは税収を増やす必要性をいっているだけであり、ガソリン税自体の存在根拠にはなりません。あとは「環境面への影響の配慮」ですが、これはクルマが排気ガスを排出することをさしているのかもしれません。ただし、これも明確とはいえない気がします。

 

このように、ガソリン税の税率以前に、そもそもガソリン税の存在根拠に疑問を呈する見解があります。

 

◆特例税率を維持する根拠の問題

ガソリン税自体の正当性はさておいても、特例税率を維持する根拠が乏しいという指摘もされています。現在のガソリン税の「1リットル53.8円」という税率はもともと、1974年に「道路整備の財源が不足している」という理由で、暫定的に引き上げられたものです。その当時、ガソリン税は「道路特定財源」でした。その税率が50年近く維持されています。

 

しかし、前述したように、その後、道路特定財源は税収が歳出を大きく上回るようになりました。当初の「道路整備の財源が不足している」という理由は失われたことになります。そうであるにもかかわらず、税率が引き上げられたまま続いている状態です。

 

この点をさして、特例税率に根拠がないと指摘する見解があります。

 

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